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    高間晴

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    高間晴

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    敦太800字。未遂。

    #敦太
    dunta
    ##文スト

    もう少しだったのに 太宰さんを捜していた。何時ものように匂いを辿っていたが、雨が降り出したので、此れは不味い、と焦った。此れでは雨が匂いの痕跡を流して辿れなくなってしまう。発見が遅れたら、自殺して居るかも知れない。
     僕は形振り構わず横浜の街を走って、あの人の居そうな場所を探す。
     喫茶店にも居ない。路地裏にも居ない。例の海が見える墓地にも居ない。
     何処だ……!?
     其処で最悪の結果に思考が至る。真逆、川か海……?
    「太宰さんっ! 何処ですか!?」
     大声で名前を呼ぶが、こういう時にあの人が返事をしてくれた事は無い。春先とはいえ雨は冷たく、僕の体温をどんどん奪っていく。鶴見川の雨滴が溶けていく水面を見つめながら、其の川沿いに海へと向かって走る。太宰さんの名前を呼びながら。
     そうしてどれだけ走っただろうか。海が見えてきた。ぞくっと腹の底が冷えて、嫌な汗が背中を伝うのを感じた。僕は繰り返し彼の人の名を呼びながら、躊躇わず海へ入る。余りの冷たさに鳥肌が立つ。だがそんな事に構って居られない。ざぶざぶと荒れる波を掻き分けながら目を凝らし耳を澄ませた。
    「……!?」
     今、あぶくのような音が聞こえた。本当に微かで、僕以外には聞き取れないだろう音が。
    「太宰さん!」
     大きく息を吸い込んで水面に頭から飛び込んだ。海の底に、砂色の外套が見える。あの人だ。蓬髪が揺らめいていた。水に潜って手を伸ばして、投げ出されている包帯の腕を掴む。瞬間、僕の方を向いた太宰さんの白い顔が、まるで眠っているように穏やかで。真逆、本当に死んでいるんじゃないか。そんな気がした。だから僕はその手首を掴む手に力を込める。良かった。まだ脈がある。急いで海面まで彼の人を引きずり上げた。水から顔を上げると反射的に息を吸い込み、意識を失っている彼の人の頬を平手で叩いた。
    「太宰さん!? 太宰さん!」
     瞬間、彼は咳き込み、水を吐き出した。其れが治まったかと思えば、濡れ張り付いた蓬髪の向こうから、震える目蓋が開かれた。鳶色の瞳が虚ろに僕へ焦点を結ぶ。其れは陽だまりで眠っている処を起こされた猫に似ていた。
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    高間晴

    DOODLE字書きだって洒脱モを書きたかった……というだけのアレ。チェズモク。■オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ


     それは突然の雨だった。
     昨日、チェズレイとモクマの二人はとある国に拠点を移した。モクマがそのセーフハウスの近辺を、どんな店があるのか見て回っていた。
     ――あそこのラーメン屋、うまそうだな。チェズレイはきっとついてきてくれないだろうけど。
     なんて思いながら歩いていく。するとみるみる空が曇って雨が降り始めた。
     まずい、傘なんて持ってないぞ。
     モクマはとっさに青藍の羽織についていたフードをかぶると、慌てて下駄を鳴らしながらセーフハウスに向かってアスファルトを駆け抜けた。雨はどんどん激しさを増していく。確かにスコールが多い国だとは聞いていたけれど。顔に大粒の雨のしずくが次々と当たるのがわかる。
     約二十分の後。セーフハウスの玄関を開けて駆け込むと、チェズレイが慌てて出迎える。
    「モクマさん……! いま迎えに行こうとしていたところで――」
    「ただいま、チェズレイ。いや~いきなり降り出すからびっくりしちゃった」
     言いながらフードを脱ぐと、羽織がだいぶ雨を吸って重くなっているのに気づく。全身濡れ鼠だ。「待っていてください」と言い置いてチェズレイが 1511