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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    昔に書いた菊アルです。国名で書いていたのを人名に直しました。
    夏をダラダラ過ごす二人。

    ##APH
    #APH腐向け
    forAphRot

    如何物食い クーラーの効いた部屋で、菊は畳に寝転がったまま漫画を読んでいた。締め切った窓ガラスを通して蝉の声が聞こえている。この季節になると日中に出歩くのは自殺行為だとさえ思える。それは隣にいる彼も同じらしく、このところはゲームばかりやっている。今テレビ画面に映っているのは剣と魔法の中世ファンタジー世界。お決まりのジングルが響いて戦闘画面のBGMに切り替わると、アルフレッドが引きつった悲鳴を上げた。
    「うわっ、Devil Fishだぞ!」
    「――ああ、クラーケンですか。それには炎系がよく効きますよ」
     人間くらいは丸飲みにしてしまいそうな巨大なイカが、画面狭しとその脚をのたくらせている。それを見て、菊は以前から気になっていたことを思い出した。
    「そういえば、それはイカみたいな形ですが、うちで出てる他のゲームではタコみたいなものも『クラーケン』って呼ぶみたいなんです。アルフレッドさんのところではどうなんです? クラーケンって扱い的にはタコなんですか? イカなんですか?」
    「そんなの知らないよ! こんな気味悪いの、どっちも同じでいいじゃないか」
     うえっ、と吐き気を催したようなジェスチャーをするアルフレッドに、菊は聞き捨てならないとばかりに起き上がった。
    「よくありませんよ。タコとイカじゃ味も食感も全然違うじゃないですか」
    「はぁ? 君はあれを食べるって言うのかい!?」
     画面を指さすアルフレッドの顔が青ざめて見える。テレビ画面の光の照り返しだけではないようだ。そこに映る『クラーケン』は、獲物である主人公たちを目の前にしながら、ただのたくたと脚を振り回している。こちらがコマンドを入れない限り敵も動けないゲームシステムの制約とはいえ、やや間抜けでさえある。
    「アルフレッドさんは食べないんですか?」
    「冗談じゃないよ! あんなの食べようと思うなんてクレイジーすぎるよ!」
     確かにこの『クラーケン』の見た目はゲームのモンスターらしく、若干不気味な感じにデフォルメされているものの、菊にとってそれは十分に『イカ』であり『食べられそうなもの』に思える。さらに、青とか蛍光ピンク色をしていたら絶対に食べようなんて思わないところだが、これは刺身を思わせるような白色だ。
     おいしいんですけどねえ。菊がぽつりと呟くと、アルフレッドは怖気立って背を震わせた。
    「ああもう、嫌なこと思い出しちゃったじゃないか……!」
    「何かあったんですか?」
    「――昔、アーサーに釣りに連れて行ってもらったことあるんだけど、その時アーサーがこういうの釣り上げちゃってさ。その時は俺まだ小さかったし、初めて見たもんだから、珍しくて触っちゃったんだよ。
     そしたらそいつ、俺の腕に絡みついて這い上って来たんだよ! 信じらんないだろ!? アーサーが引っ張っても全然剥がれないし、ぬるぬるして冷たくて生臭いし、服の中に入り込もうとしてくるし……! ていうか、なんであれはぐにゃぐにゃしてるくせに硬いんだい!? わけわかんないよ! もう嫌だよ!」
     涙目になりながら一気にまくし立てるアルフレッドを見ながら、菊は、よくあるエロゲのシチュエーションみたいだなとぼんやり考えていた。そういえばこないだやったのがそれ系だった。
    「それにしたって、なんで前世代機で2Dのくせにこんなリアルな動きするんだいこのDevil Fishは! 菊は変なところに技術の無駄遣いしすぎなんだぞ! 俺には理解できないよ!」
    「我々の業界では褒め言葉ですよ」
    「――もうダメだ、気持ち悪くて見てられない! 菊、こいつ倒しといてくれよ!」
     ついにアルフレッドは菊にコントローラを投げ渡すと、逃げるように台所へ飲み物を取りに行ってしまった。いつものヒーローの意地を忘れるほどだから、相当なトラウマらしい。冷蔵庫を開けてごそごそやっている音を聞きながら、菊はコントローラを握りなおして巨大イカに魔術師の炎魔法を撃ち込む作業を繰り返す。呪文の詠唱、燃え上がる炎のエフェクト、うねる白い十本のゲソ……焼きイカ、イカ刺し、イカリング。あと触手系エロゲのイベントスチルと、さっき涙目になっていた彼の顔。
    「……アルフレッドさーん、お腹空きませんかー? 私は空きましたー。
     ついでになんかむらむらしてきたんですけど、どうしますかー」
     台所の方から「君はおかしいよ!」という悲鳴が返ってきた。
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