Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    kaetyann1400

    @kaetyann1400

    世に出していない未完成のものや、センシティブなネタ達をポイポイしていく場所です。

    大体c.sが酷い目に遭っているので、それが許容できる寧ろ好物…な人向け

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 22

    kaetyann1400

    ☆quiet follow

    こちらは2023.12.05のメモです。
    シャドウとシドが双子だったら?ってネタ。
    誤字脱字は見逃して

    シャドシドを考えたいだけ双子の兄ミノル(シャドウ)と弟のシド


    ミノル
    幼い頃、盗賊にやられたあと教団によって誘拐された。その後ディアボロスチルドレンにされかけたものの、驚異の精神力と行動力で脱走して姿をくらます。世間的には死んだとされる
    カゲノー家にも一切戻らず、シャドウとなることでディアボロス教団を滅することを決める
    シドのことが死ぬほど大事。弟命。
    クレアに対しては大抵なんでも自力で出来るから危なくならない限り放置しがち。あと誘拐されるキッカケを作ったので嫌いでないにしろ地味に恨みがある。人並みの家族愛は持ち合わせているけど、死んでも悲しまないくらいにはドライ。
    前世の記憶を所持しているが、どこか他人事。知識としてあるだけで『陰の実力者』を目指しているわけではない


    シド
    モブは演じておらず純粋。本家のシドから外道さやズレた価値観を無くした感じ
    姉はちょっと怖いけど嫌いではない
    ミノルが目の前で傷ついた過去が少しトラウマ。いつか自分が見つけ出すことを密かに決意。
    シャドウからはクレアとはまた違った愛の重さを感じている。でも無自覚に自分も執着気味。本能でミノルだと見抜いている
    実はミノルと同じ系統の魔力持ちで、覚醒すればめちゃくちゃ強い。しかし本人は知らず、コントロール出来るようになるのは後々。


    シャドウガーデン内

    ミノルが本当に全てを理解している状態。
    基本のリーダーがアルファなのは原作と変わらないが、必要ならミノルも積極的に命令を下す。
    原作と違ってミノルの拠点はアレクサンドリア。学園にも通わないのでシャドウとして教団と戦う毎日。遠出していることが多め。
    最初の数年はミノルがこっそりとシドの身辺警護をしていたが、シドが学園に行き始めてからは七陰や有能メンバーがローテーション









    シドとだけ偶然再会し、偶に密会してはギュッとする関係?
    夜にだけ会って話して一緒に寝て、朝になったらいないパターン

    シャドウとしてシドを助けたら、肝心のシドがシャドウに惹かれてしまったので超複雑。自分に嫉妬するはめに
    「シャドウにはあまり関わるな。悪い噂ばかりだしな…何をされるかわからんぞ」(僕だけど)
    「シャドウは悪い人じゃないよ!僕は彼を信じてる!」
    「…そうか」嬉しいけど嬉しくない!!







    アレクシア誘拐の容疑で逮捕されたシド
    兵士に5日もボコられているので、ミノルは激おこ
    「容疑者の段階で僕の大事な弟を拷問なぞ……万死に値する」
    後日、シドが呼び出しを受けたのを代わりにミノルがシドとして赴き、シャドウになってブチ殺す
    「報いを受けに来てくれたんでしょう?」












     雨が降る。冷たく、強く、打ち付けるような威力だ。
     まだまだ幼い黒髪の少年は体を引き摺るようにして歩き、深い森へと進んでいく。薄汚れてしまったボロボロの服から肌が覗いていた。彼の体は所々が黒くくすんでいて、ジワリと何かに侵食されたかのような見た目になっている。

    「こんなところで…終わるものか…」

     自身を追い掛けてくる複数の気配に気付き、少年は足を止めた。このまま逃げても埒があかない。早く、戦わなければ。

    「I…need…more……power……」

     『かつて』の自分だった者の言葉を口にしながら、少年が顔を上げる。その瞳は真っ赤に揺らめき、固い信念を宿していた。








     僕ことシド・カゲノーには『きょうだい』がいる。ふたつ上の姉と、自分と双子の兄だ。
     姉は小さな頃から弟を欲しがっていたらしく、僕らが産まれるとそれはもう大層可愛がってくれた。少し構い方が特殊というか、乱暴だったことがしばしばあるのは否めないが…それでも確かな愛は一応感じることができる。

    「お兄ちゃん!お話し聞かせて!」
    「昨日も話しただろ」
    「紅ずきんは、でしょ?今度はシンデレーラが聞きたい!」
    「…仕方ないな」

     そして僕より数分早く産まれた双子の兄、ミノル。
     僕は何をしても平凡の域を出られないが、兄は違う。彼は全てひとりでこなせてしまうタイプだった。
     ぶっちゃけ姉よりも才能があるし、頭もすこぶるいい。「人に任せるより自分でやった方が早い」とか言ってたっけ。両親には『大人にあまり頼ってくれない』と心配されていたけど…僕としては、兄は単に他人を信用出来ないのかもと思っている。

    「ふぇえ!お兄ちゃぁぁん!」
    「シド、また姉さんに追われているのか」
    「鬼ごっこして僕の足を鍛えるって言うんだ!助けて!」
    「はぁ…入れ替わってやる。お前は僕の部屋にでも避難してろ」
    「やったぁ!ありがとう!」

     感情の起伏が少なく、家族にすら笑い掛けない兄は意外にも僕にのみ甘かった。双子ならではの『特別』があるっぽい。僕は、僕にだけの愛を向けてくれる兄が大切だ。



     そんな兄であるが、いくら完璧に近くても限度がある。それは…姉の強引さだ。
     ある日の夜中。姉が「ウチの近辺に出た盗賊を倒すわよ!」と僕らを無理矢理連れ出した。もちろん僕も兄も嫌がったけど、ふたり揃って姉には勝てなかったのだ。諦めたとも言っていい。

    「ふぇえ、お姉ちゃん帰ろうよぉ!」
    「シドの言う通りだよ姉さん。こんな時間に森で子供3人だなんて、万が一があったら助からない」
    「シドもミノルも情けないわね!大丈夫よ、盗賊なんか私がチャチャッと片付けてあげるんだから!」

     姉は僕の手を引いてズンズンと前に進む。振り解きたいけど非力な僕では敵わない強い力で握られている。その後ろを兄は仕方ないとばかりについて来ていた。

     そして、残酷な運命の時は訪れる。
     姉からの前情報の通り、盗賊はいたのだが…相手が悪すぎた。奴らの腕前はそれなりで、姉を容赦無く斬りつけて倒した。女だから奴隷として売ってしまおうだのと好き勝手に喋りだす。
     僕はただ恐ろしくて、カタカタと震えていることしか出来ない。

    「シド!姉さんをおぶって逃げろ!ここは僕が防ぐ!」
    「お、お兄ちゃん…?」

     すぐさま兄が僕を背に庇って剣を構え、鋭い一閃で目の前の男を撃退する。

    「フンッ、面白い。その小娘よりはやるようだ」
    「褒められても嬉しくないな」
    「いつまでその余裕が見られるかな?ガキ」

     兄は強い。一対一なら問題ないとは思う。
     しかし、いくら強くてもまだ小さな子供だ。こんなルール無用の大人複数を相手に、たったひとりで勝てるわけない!

    「早く行けシド!そして助けを呼んでこい!」

     僕がモタモタしている間にも、兄の体に傷がつけられていく。既に何人か倒せているけど、まだ数が多い。

    「そ、そんな!お兄ちゃんを残していくなんて嫌だ…!僕も戦うっ!」
    「足手纏いだ!」
    「うっ、でも……!」

     ハッキリと言われてしまうが、兄の言うことは事実だ。
     確かに僕が残っても邪魔になる。僕を庇いながら戦えるほど器用でもないだろう。だがそれをきちんと理解したのは、僕が背後に潜んでいた敵に捕まった瞬間だった。

    「うわぁ!」
    「シド…!」
    「チッ、手こずらせやがってガキが!弟を殺されたくなけりゃ、剣を捨てることだな!」
    「くっ……!」

     僕という人質をとられてしまった兄は一気に追い詰められる。
     なぶるようにわざと致命傷にならない部分を斬られ続け、少しでも抵抗すれば僕の首にナイフを当てられて行動が鈍った。みるみるうちに血に染まっていく大好きな兄を目にし、僕はポロポロと涙が溢れる。

    「や、やだ…お兄ちゃん…やめてっ…やめてよぉ!」
    「…し、ど……にげ、ろ…」

     腹を蹴られて地面を転がった兄はそのまま目を閉じ、気絶した。でも幼い僕にはそれが死んでしまったかのように見え、絶望する。

    「ひゃっははは!感動するねぇ!弟思いのいいオニイチャンじゃねぇか!!安心しろよシドくん?お前もすぐ殺して同じ天国に行かせてやるよぉッ!!!」
    「あっ……」

     ひとりの男が、地に蹲っている兄の頭や体を踏みつける。何度も、何度も。

    「…めろ……」

     やめろ。

     その汚い足を、どけろ。

     僕の、大事な家族を、こんな…。

    「やめろぉぉぉぉおおおッ!!!!!」

     有りっ丈の声で叫ぶ。
     奴らの笑いが、下品で不快な笑いが、僕の耳にこびりついて離れない。
     ピシッ…と、身体の内側から何かが割れるような気がした。

    「あ?な、なんだ?」

     突如、青紫色の光が闇夜を照らす。綺麗だ。
     これはどこから発せられているんだろう。
     なんだか…意識が、朦朧と……。

    「う、うわああああ!」
    「お、おい!どうしたんだよ急に!」
    「ばっ化け物め!!」
    「なんだこの力は!!このガキは一体…!?」

     僕が最後に見た光景は…怯えたような奴らの顔と、真っ赤に染まった己の剣だった。





     保護されて目が覚めた僕を待っていたのは、姉の無事と、兄が行方不明になったというふたつの事実。
     何故か僕の記憶は曖昧で、どうやって盗賊から逃れたのかも、どうして兄がいないのかも思い出せない。
     両親とその周りは必死に兄を捜索しているが、見つかる気配は今のところ皆無だ。心無い一部の者は「死んだのでは」と口々に囁くが、怒る気にもなれなかった。
     姉はあれ以降、剣の道をより一層極めることにしたらしい。どうやら僕を危険に巻き込み、兄が消えるキッカケを作ったことがとても応えたようだ。
     僕は僕で、兄がいなくなってしまったのがショックで塞ぎ込んだ。必要以上に外には出ず、ぼんやりと自室で本を読み進める日々。お陰で知識だけは豊富になったけど、兄のいないつらさを紛らわせるには足りない。
     もっと何か、夢中になれるものが僕にもあれば良かったのだけど…僕がいつも見ていたのって、ミノル兄さんなんだよなぁ。
     なんでも出来てしまう兄。僕は密かに兄さんを目標にしていた。僕が目指していた理想の人は、間違いなく兄さんだ。

    「そうだよ…あの兄さんが、簡単に死ぬなんて考えられない」

     死体が無いなら死んだことにはならない。あくまで行方不明。僕はあの人の死を認めはしない。ならば探さなければ。
     その為にはもっとずっと強くなって、あの時のような足手纏いにならないよう鍛えないと。僕が強ければ、兄が傷付くこともなかったのだから…。
     僕は、ここしばらく部屋に放置されていた剣を、ようやく自分の意思で手に掴んだ。






















     学園に通い初めても僕の成績は相変わらずで、様々なテストを受けてもやっぱり中の下をいく。座学にはどうしても身が入らない。剣だけはちょっぴりいいかな、ってくらいだけど、それでも中の中だ。

    「ねぇ、本当にやるの?罰ゲーム」
    「当たり前だろ?今更怖気ついたとか言うなよ」
    「約束は約束ですからね」

     今回のテストで一番評価の低かった人は罰ゲーム。僕の友人、ヒョロとジャガと交わしたしょうもないそれは、僕が実行することになった。
     内容は『学園のマドンナであるアレクシア第二王女に告白すること』である。僕としては嫌で嫌で仕方ないけれど、ここで逃げたら余計男が廃るし、ふたりにとことん馬鹿にされる。なので僕は潔く受け入れるしかない。
     告白と言っても、成功する確率はかなり低い。99.9%無理だ。奇跡でも起こらない限り僕はフラれるだろう。なんせアレクシア王女は1日1回のペースで告られており、そしてその全てを「興味ないわ」の一言で断っていた。当然、僕みたいなパッとしない男は即撃沈に決まっているね。
     だから早く済ませてマグロナルドでも食べに行こうと、思ってたのに……。

    「あなたのような方を待っていたの。よろしくね」
    「ふぇ?」

     セリフは事前に考えておいたけど妙に緊張して、いざ告白となったら自分でもすごく噛み噛みだったと思う。
     なのになんでOKされちゃったのかな。
     呆然とする僕の後ろで、ヒョロとジャガの悲痛な叫びが聞こえた気がした。




    「おかしいよね」
    「ああ、おかしいな」
    「おかしいですね」

     翌日の食堂にて、僕らは3人揃って同じことを言う。だって、おかしいものはおかしいのだ。
     どうして彼女の初めての恋人が僕なのだろう。僕以上に条件の良さそうな人は今までたくさんいた筈だ。そのどれもキッパリとお断りしていたのに。これは嬉しさや驚きよりも、断然怖さと不気味さが勝る。

    「はっきり言って、お前にアレクシア王女と付き合えるだけのスペックはない。俺ですら怪しいくらいだぜ?」

     僕は自分に魅力があるだなんて思ってないけれど、ヒョロのその謎の自信はどこからくるんだろう。そういう無駄なポジティブというか、ナルシストさだけは感心だ。

    「シド君でイケるなら、自分も告白すれば良かったです」

     さすが、ジャガもジャガで同類だ。どうしてそんな理屈になるのやら。
     謙遜ってものをふたりは知らない。最初の友達選びから僕は間違ってしまっていると、最近は思う。でも友達をやめたらボッチになっちゃうから、離れるのも悩みどころだ。

    「そんなのわかってるよ、釣り合わないことなんて。はぁ…一体何を考えているのかな」

     アレクシア王女はお淑やかで誰にも優しく、それでいて可憐な女性…って周りは見ている。でも僕はどこか冷たそうな、みんなと一定の距離を保ち続ける彼女が実は苦手だった。親しそうな友人もいないようだし。なんというか、時折り見かけるたびに浮かべている笑顔が嘘っぽくて。
     罰ゲームさえなければ一生関わらない予定だったのに、いきなり恋仲になるとは、これも王女様の気まぐれ?あまりに酷い告白の仕方だったから同情したとか?まさか。

    「うーん、なんとかして別れを切り出してもらわなきゃ…」

     告白しておいて僕から真っ先にフるのは論外だ。そして罰ゲームだったってことも知られてはならない。どちらも王女の名誉を傷付けるようなものだ。カゲノー家の信用が落ちたり、僕が勘当されることになったら目も当てられない。処刑とかの流れになったら全力で逃げよう。

    「くそ…最悪だよ」
    「何が最悪なのかしら…?」








    「それはお互い様よねぇ?罰ゲームで告白してきたシド・カゲノー君?」
    「えっ…」

     うわぁ…やっぱり性格に難ありのタイプだったか。僕の勘は正しかったようだ。時すでに遅しだけど。





     誰が『弱みを握って無理矢理付き合った』だ。寧ろ握られたのは僕の方だってのに。













    「僕にはね…ひとつだけ、諦められないことがあるんだ。誰に何を言われても、何をされても、譲れないものがある」
    「…何よ、その『譲れないもの』って」
    「……カゲノー家の男児が双子だったって話は知っている?」
    「え?」
    「僕には、幼い頃に行方不明になった双子の兄がいる。僕よりもずっと優秀で、強くて、かっこいい人だった。こう言ってはなんだけど、きっと姉さんの何倍もすごくて…僕はそんな兄が誰よりも好きだったよ」
    「それは…誘拐でもされたってわけ?」
    「多分ね。初めは必死に探してくれた人が結構いたのに、今じゃ騎士も周りも捜索は打ち切っているよ。親と姉以外はまるで…兄なんか最初から居なかったかのような振る舞いをする。とっくに死んだだろうからって言う人もいたな」
    「それは…まあ、気の毒ね」
    「…で、僕はその兄の生存を一番に信じている。兄さんが簡単に死ぬ筈がない。僕は絶対に兄さんを見つけ出して、また一緒に過ごしたい」









     僕は察した。これ、あかんやつや…と。
     もちろんアレクシアを誘拐したのは断じて僕じゃない。確かに彼女のことは好きではないけど、かといって嫌いでもない。元々罰ゲームで付き合うことになったし、当て馬だし…。
     でも…。

    「オラオラ!さっさと吐いちまえよ!」
    「お前が王女を誘拐した、そうだろう?!」

     こいつらにだけは、絶対そんなこと言いたくない。そもそも本当のことを言っても、彼らの上に正しくその情報が伝わるかも怪しい。なんか小物っぽいし、こちらの話に全く耳を貸さなかった。まるで僕を犯人に仕立て上げたいだけみたいだ。







    「大丈夫。夜が明ける頃には全て、終わっているのだから…」



    「人の大事なものに手を出しておいて、無事でいられると思ったのか?」



    「アレは僕の、一番大切な……」












    「謎の多い事件だったけど、表向きには解決したことになったわ」
    「へー、良かったね。これで僕もお役目御免かな」
    「あ、待って!」
    「ん?まだ何か?ここ暑いんだけど」

    「その…もしあなたが良ければ、もう少しだけ、この関係を続けてみないかなって」

     アレクシアはモジモジとした態度でそう言った。なんのつもり?利益なんてないと思うんだけど。
     なので僕の出す答えはひとつだ。

    「え、ヤだ」

     僕はこれでも忙しいんだよね。君に構っている暇なんて正直無い。寧ろ面倒なことこの上ないので一生関わらなくていい。
     あの扱いを我慢したのは単に普通の学園生活を崩されたくなかったのと、報酬がそこらのバイトより格段に高かったからである。無償でアレクシアに付き合ってあげるほど僕は安くないし、彼女に対する想いもないのだ。

    「何よ、少しは考える素振りくらい見せなさい」
    「えー?嫌なもんは嫌だし」
    「私の何が不満だってのよ!」
    「自分の胸に手を当てて考えてみたら?」
    「ポチのくせに…」

     食い下がるなぁ。そんなに都合がいいのかね、僕って存在は。はぁ、仕方ない。

    「恋人同士っては嫌だけど、友人ならいいよ」
    「え……」
    「別に君のこと、嫌いってわけじゃないし。それじゃ」

     あ、ちょっ…!と声を上げるアレクシアを無視して、僕はスタコラと彼女から逃げ出した。
     いや〜暑かった。ヒョロとジャガを誘ってミツゴシのかき氷でも食べに行こう。











     シャドウガーデンを騙る人斬りについての詳細を求め、ミツゴシを訪れたシャドウは陰の間にてガンマの報告を聞いていた。
     そこに構成員であるニューが現れ、シャドウに一礼する。

    「シドがここに?」

     偶然にもシャドウの弟が来店しているようだ。だがミツゴシの繁盛具合から見て、寮の門限に間に合うような列ではない筈。
     件の人斬りのこともある故、早めに帰したほうが良さそうだとシャドウは瞬時に考える。

    「はい。なんでも、ご学友の誘いでチョコを購入目的として、現在店舗の入り口で並んでいる状態らしく…」
    「そうか…。ヒョロ・ガリとジャガ・イモ、だったか?正直あいつの友人には相応しくない性格だとは思うが」

     シャドウが直接様子を見たり、ニューを含めた構成員の警護報告書からも理解しているが、シドの友人ふたりは性格に難ありだ。
     死者や負傷者が出るような犯罪に手を染めるような類いでないのだけは救いだが、それでも傍に置くには些か…そう、小物過ぎる。ヒョロは大層な自惚れナルシストなだけだが、ジャガの方は女性に対してストーカー行為を悪気もなくするらしい。
     兄としては、可愛い弟であるシドと彼らは一緒にいて欲しくない。というか名前の時点でモブ感がすごいな、と前世の記憶がシャドウに囁きかける。

    「でしたら、今すぐにでも排除致しましょうか?」
    「いや、いい。それに彼らはシドの本来の姿を隠す良いカムフラージュにもなるしな」
    「シド様の、本来の御姿、ですか…?」

     シャドウの発言に、ニューとガンマは首を傾げる。

    「ああ…気にするな。…そうだな、アンケートの協力だとか適当な理由でシドとそいつらを引き剥がせ。丁重にもてなしてから無料でチョコをくれてやってもいいだろう。もちろん、最高級のものをだ」

     こっそりと弟贔屓をしよう、とシャドウは静かに微笑む。その様子にガンマはパァッと顔を明るくさせた。

    「まぁ!そうですね!それはいいアイデアです!ではニュー、頼みましたよ」
    「はっ!お任せください」



    「普段は兄らしいことをしてやれん代わりに、これくらいはしてやらないとな」
    「そんな、主様以上に弟様想いの方はいません。そう御謙遜なさらないでください」
    「…うむ。だが、まだ遠いな」

     そうだ。シャドウが望む最終局面までは、まだ…。








     突然ミツゴシのお姉さんに頼まれた簡単なアンケートに協力した僕は、お礼として無料で高級チョコを手に入れた。ヒョロの突拍子もない女子モテ作戦でお小遣いを無駄に消費せずに済み、僕はホクホクで帰路についている。

    「急げ急げ!門限まであまり時間がねぇぞ!」
    「シド君が悪いんですよ!ミツゴシのお姉さんとイチャコラと!」
    「してないってば!チョコもあげたし許してよ!」

     まあ、単なるアンケートの筈なのに、妙に待遇が良くてつい長居してしまったけど…。出されたジュースやお菓子は初めてのもの且つ絶品だったし、座らせられたソファもフカフカで最高だったのは一生内緒にしておこう。
     アレクシアと付き合うハメになったあの時みたいに、ふたりからの嫉妬でまた不名誉な噂をされたら堪ったんもんじゃないからね。




    「アレクシア!」
    「ぽ、ポチ…?!なんでここに!」
    「話はあと!僕も戦う!」
    「…ええ、そうね!」



    「シャドウガーデンの名を騙る愚者よ。その罪、命で償ってもらう」


    「関わるな」

    「あの人は、一体…」










     あたたかい。何か、心地いいものが身体の中を巡っていく、
     …あれ?僕って何をしていたんだっけ。なんか、すごく痛い思いをした気がする。
     そっか…僕、斬られたんだった。ってことは死んだのかな。
     嫌だな。まだ僕にはやらなきゃいけないことがあるのに。あの人を…兄さんを、見つけなきゃ…。

    「にい、さ……」
    「目が覚めたか」
    「………え…?」

     あ、学園だ。僕は死んでないっぽい。というか、この人だれ。やたら真っ黒な人だ。もしやテロリストの仲間?

    「我が名はシャドウ。陰に潜み、陰を狩る者。…命拾いしたな、我がいなければお前は死んでいた」
    「え、シャドウって…」

     アレクシア誘拐事件の時に、首謀者だったゼノン先生を殺したっていう?街に一瞬で例の大穴を開けたヤバイ能力の持ち主らしいけど、こんな静かな人が?

    「えっと…ありがとう、ございます…?」

     取り敢えず助けられたらそうなので、お礼を言っておく。礼儀は大事だ。もし突然不機嫌になられて『やっぱ殺す』なんて言われたら困るし。
     すると彼は「礼なぞいらん。お前は運が良かっただけだ」と話してくれる。意外に律儀というか、理知的な人だ。とてもアレクシアが愚痴ったような存在と同一だとは思えない。

    「え、あっ、でも…学園を占拠してきた奴らも、シャドウガーデンって…」
    「あれは我らの名を騙る愚か者どもだ。一緒にされては困るな。それに、シャドウガーデンの構成員は女ばかり。ここを攻めたのは全員男だっただろう?…ああ、今のは内緒にしてくれ」
    「は、はぁ…そう、なんですか…。わかり、ました」


































    「お前はいつも死に掛けているな。助けるこちらの身にもなってほしいものだ」
    「僕だって好きで巻き込まれているわけじゃないよ…」
    「フン、どうだかな」











    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works