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    moguratataki30

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    moguratataki30

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    AshさんのバースデーSS!
    大遅刻の作品ですが!!

    ##耀玲

    ちゃんとしたのはまた今度「耀さん耀さん、今日初めて競馬場に入りました!意外に色々あるんですね」
    夕飯を食べ終え2人でのんびりし始めた頃。玲が食い気味に始めた話に今日東京競馬場の辺りであった捕物を思い出す。
    「そーだねぇ、最近はゲームの影響もあってまた盛り上がってるから犯罪者も多くなりそう…」
    「それもですけど、博物館、公園、乗馬体験、フードコート、カフェテリア…こんなに色々あるなんて知りませんでした」
    「行かなきゃ確かに知らないよね」
    「いいなぁ、馬に乗って颯爽と風を切ってみたい」
    「ほーん、乗った事ないの?」
    「子供の頃に少しだけ。でも自分で馬を歩かせたりできたら楽しいだろうなって」
    「なるほどね」
    「逆に耀さんはやった事あるんですか?」
    「んー、昔嗜みとしてやったかな。ほら、桧山ん家とか五月蝿いから」
    「…な、なるほど…」
    そうして大人しくなった玲を牧場に連れて行くのも楽しそうだと少し思ってしまう。

    数日後桧山と打ち合わせに行った時になんとなくそんな話になった。
    「ほう、お嬢さんが乗馬体験か」
    「そ、だから次のデートは鎌倉辺りでやってる乗馬のに行こっかなって」
    「ふむ、ならば【ラ・リュミエール】の側に観光施設内で働いてもらう馬達の馬房と合わせて近辺の山を散策できるように乗馬体験なんかを入れてもいいか…」
    「なんかまたとんでもないこと考えてるねぇ」
    「最近は養老牧場なんかもよく耳にする。現役を退いた馬を使わせてもらうのもありだろうか…」
    やれやれ、と逃げるように警視庁に戻ると今度はやれ会議だ呼び出しと愚痴だと騒がしいことこの上ない。
    仕方なく逃げるように散歩に行き公園の日当たりのいい空きベンチに横になる。長閑な生活音と自然音を聴きながら今の事件に関して頭を回す。
    カツカツカツカツとヒールの音が近づいてきた、さて今日はどう無駄な時間を過ごそうかと頭が切り替わる。そう思ってた矢先「泉さん」と言う知らない呼び掛けにマトリちゃんが反応して有耶無耶になる。なんの話かと黙って聴いていれば厚生労働省東京労働局の職員らしく玲達の残業時間に対する注意らしい。まぁわざとらしく声をかけてついでに時間帯的にも昼に誘おうとしているようだ。
    「やれやれ、こんなとこで厚労省職員が残業時間だのなんだのうるさくて寝てられないねぇ」
    「服部さん!すみません、お休みのところ」
    「本当にね」
    「えっと…」
    「お詫びがてらマトリちゃんお昼に付き合ってよ」
    「あ、はい!その前に資料を」
    「やだ。ほれ、早くしんさい」
    「ちょっ、服部さん!すみません、失礼します!」
    挨拶だけ済ませるとパタパタ走って追ってくる玲に速度を少しだけ落とした。
    「もう、耀さん。帰らなくていいんですか?」
    「今はお昼でしょーよ。今日はマトリちゃんのおすすめのお店連れてってよ」
    「任せて下さい!」
    そう言って意気揚々と連れて行かれたのは女子力のかけらも感じられない昔ながらの定食屋さん。
    「ほーん、玲のおすすめ…ねぇ」
    「安い、早い、多いのイチオシです」
    周りは時間に追われるサラリーマンが圧倒的に多く、さらに盛られた量はお洒落なランチより確かに多いし回転が早く並ぶこともそんなにない。
    そんな定食屋で玲はヒレカツ丼とお味噌汁、俺は生姜焼き定食をいただいた。
    ランチをした時間は短いランチデートらしからぬ20分ほどで、さっさと仕事を終わらせようとする玲ともう少しいたくてお散歩に連れ出す事にしてスマホで彼女の上司に連絡を入れた。
    そんな日常から数日後突然、桧山に呼ばれた。珍しいと思いながら空き時間に足を運べば2ヶ月後に始めるカップルプランのモニターをして欲しいと…。
    ホテルも車も手配済みで玲の誕生日前後二泊三日分のプランだと言う。
    そんなに休みが取れるものかと思いきや課長くんもあっさりOK、司に至っては追い出す勢いで前日庁舎を出された。
    「こんなにお休みが取れると思いませんでした」
    「取れると言うより"取らされた“だろうね。多分桧山の手が回ったんじゃぁないの?」

    2泊3日の動きやすい服装にスニーカーの玲を助手席に乗せ言われたホテルへ車を走らせる。途中SAでご当地グルメを食べながら昼前には到着できた。
    「何度来てもすごいですよね」
    「そ?」
    ホテルにチェックインして荷物を預け目的の牧場へと足を運ぶ。桧山に言われた体験コースは初心者向けの牧場内の乗馬コースと施設の周りをぐるっと散策できるコースがあるらしい。
    とりあえず今日の午後から乗馬を始めるので少し早い腹ごなしに牧場内のレストランへと足を進めた。
    「耀さん耀さん!あのおっきいの何ですか!?ヘラジカ?」
    「あぁ、玲は生のトナカイさん見るの初めて?」
    「えっ!トナカイってあんなおっきいんですか!?」
    「そーだよ。馬ぐらいだと思ってた?」
    「…恥ずかしながら」
    「アッチには牛や山羊までいるねぇ。桧山のやつどっからこんなに持ってきたんだか…」
    看板には『バター・チーズ作り体験』あちらと書かれた矢印の先にはログハウスの様な建物が一件、その隣に大きなレストランを含む各所受付案内の建物、さらにその隣には畜舎となる建物の大きな扉が開かれていた。
    「…本当広いですね…」
    「こう言うのをやりたい放題って言うんだろね」
    「それたまに耀さんも変わりませんからね」
    真ん中の建物に入ると中はRPGに出てくる集会場の様になっていた。プレオープンもまだな為人はまばらだが飼育スタッフが昼休憩に来ている様だった。
    「こっちにも宿泊施設あるんですね」
    「こっちのはキャンプ宿泊なんだって、バーベキューとかできるみたいよ」
    「…なるほど…」
    受付で桧山から渡された手紙を渡すとすぐにレッスンの開始時間と集合場所等を言われた。
    開始までの1時間、昼を食べて牧場を散策して馬房前に集合していると可愛らしい女性が声をかけて来た。
    「えっと、体験の方ですか?」
    「はい」
    「よかった、すごいイケメンと可愛らしいお嬢さんと聴いていたから緊張してまして。今回インストラクターを努めます、道草菫と申します」
    「泉玲です」
    「服部です」
    「えっと、オーナーから服部様は以前経験ありとお聞きしました」
    「はい、まぁ大昔ですが」
    「泉様は今回初めてですよね」
    「はい、緊張してます」
    「大丈夫ですよ、いきなり乗らせたりしないんで」
    そして案内されたのは今日と明日お世話になるお馬さん達の元。玲なんてすっかり馬に懐かれちゃってキャッキャと楽しそうにしている。
    「では乗馬に必要な道具のレンタルに行きましょうか」
    今回は道具もモニターと言う事で無料だし俺も玲も持ってはいないのでありがたくお借りする。
    「こちらからサイズのあったキュロット、ショートブーツ、チャップス、ヘルメットを自由にお選び下さい」
    玲は道草さんに助言をいただきながら道具を選んでいる。
    (ま、この辺でいいでしょ)
    季節感を考慮しつつ、動きやすさを考えジーンズで来たからキュロットも借りなかった。ヘルメットの都合上髪はお団子にはしないかわりに玲とお揃いの一つ結び。
    準備が整ったら先程の馬たちが外へと出されていた。そこから「はみ受け」や鞍の説明馬の習性などの説明を受けて実際に乗馬。
    「ぅぇ?あれ、意外に高…」
    「あー!すみません!今踏み台をお持ちします!!」
    慣れてる道草さんや昔やってた俺はひょいと乗ってしまったが玲は何やら宙に浮いてもがいていた。
    「クックッ、本当に君は飽きないねぇ」
    「こんなに高いとは…」
    その後台を使ってなんとか乗った玲は手綱を握り締めて緊張が馬にも伝わっているのがこちらにもわかった。
    「玲、大丈夫だから。その子は大人しいし賢いよ。玲の緊張も理解してる」
    「え、あ、ごめんね!」
    玲が馬の首を撫でると満足気に首を振った。
    「ではまず『常歩(なみあし)』と言う歩行をしてみましょう。簡単に言えばwalk、歩くです。足首を柔らかく上下に動かし馬のお腹を圧迫して合図を送ります。馬の神経は深いところにあるので下手に遠慮してると動いてくれません」
    不慣れな玲を心配しつつ馬を歩かせ始める。狭過ぎない円形の柵の中でのんびり揺られているとちょうど対角辺りで玲の馬が歩き始めた。
    思わずスマホで1枚撮ってやると余裕のない顔が引き攣っていて思わず笑う。
    「君はいい子だねぇ」
    耳だけでピクピクと反応を返してくれたので立髪を撫でてやる。
    その後『軽速歩(軽速歩)』になったら後方から慣れない玲の悲鳴がひっきりなしに聞こえ、思わず笑ってしまう。
    「お、お股が…」
    「クックックッ、随分と品のない事」
    「耀さんは昔やってたんじゃ無いですか!私初めてなんですからね!」
    ちょっと休憩にしましょうかと言って馬たちのオヤツタイムにしてくれた道草さんすら苦笑いをしていた。
    「ま、初心者第一難関の『速歩』まではできたわけだし、いいんでない」
    ねぇ?と馬に同意を求めるとオヤツの人参をペロリと持っていった。
    「ちょちょちょっ!」
    今度は何かと思いきや玲の髪をハミハミして…。
    「玲は本当、なんでも惹きつけるねぇ」
    「え、ちょっ。やめて」
    「構って欲しいんですよ。玲さんと仲良くなりたくて」
    「そうなの?」
    そんなのを見てしまえばい彼氏としては面白く無い。
    「ほーん」
    「耀さん?」
    「後でちゃーんと償ってもらおうねぇ」
    「ひぇっ」
    その後俺たちもお茶で一息入れレッスン再開。今度は簡単な曲がり方を教わり1日目が終わった。
    「お、お尻が…」
    「うん、馬の中心を意識して立ったり座ったりって難しいからねぇ」
    ホテルのエレベーター内で玲はモゴモゴとお疲れの様子。そりゃ慣れない事をいきなりやれば体がついてくるはずもなく。
    「…耀さんなんでもできてずるいです…」
    「そう拗ねなさんな」
    頭をポンポンと撫でたら擦り寄ってくる。本当ワンコなんだから、とついでにお尻を撫でたら怒られた。
    予想以上に疲れたのか部屋に入りベッドに転がるなり寝息を立て始めた玲の脇に座り頭を撫でる。
    「っは、満足そうな顔しちゃって。まだ前夜祭でしょうに」
    こんな可愛い玲を置いてご飯に1人で行くのもめんどくさく、ルームサービスに切り替えてもらう。案外ご飯の匂いで起きるかと思いきや全く起きない…。
    一人で軽く食べシャワーを浴びていつものように玲を抱いて眠りに着いた。

    朝方、腕の中の温もりが消えていて寒さで目が覚める。
    ついでにベランダに続く窓が開いていて余計に寒い。
    「まったく…」
    くわぁー、と欠伸をしながら脱走中のワンコを連れ戻しに行く。ベランダの手すりに寄り掛かり景色を眺める玲を発見した。
    抱き締めながら重心をかけて肩に顔を埋めるとクスクスと笑い声が聞こえる。
    「耀さん耀さん、ここのオープンに呼ばれた時に桧山さんに見せてもらった朝焼け、凄く綺麗なんですよ」
    「んー、寒い、眠い」
    「薄着で出てくるからですよ!」
    「…玲お風呂入った?」
    「はい、ちょっと前に流石に入りました」
    「一緒に入りたかった」
    「あはは、今晩は入りましょう。昨日は寝ちゃってすみませんでした」
    「本当にね」
    「あ、耀さん!日が出てきましたよ」
    「んぅ…確かにキレーだねぇ」
    「ですよね!キラキラして新たな1日って感じで!」
    「うんにゃ?コッチの誕生日のワンコ」
    顎を引き寄せキスをするとポカンと鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしちゃって。鼻をカプリと噛んでやると「ぎゃっ」と女子らしからぬ叫び声をあげた。思わずクツクツと笑うと膨れっ面で起こり始める。このコロコロ変わる顔がほんとに好きだ。
    逃げる様に部屋に入ると後から着いてきた。ぷりぷりと怒る玲をベッドに抱き込む。
    「わちょっ!耀さん!」
    「まだ時間あるからもう一眠りするよ」
    「だって朝ご飯とか!」
    「ルームサービスに切り替えた。だから大人しく抱き枕になってなさい」
    その後大人しくなった玲はしばらく俺の髪をいじったりしていた様だが眠気が移ったのかスヤスヤと寝息を立て始めた。
    髪を梳きながら頭を撫でて気持ちよさそうに寝る玲を眺める、最高に贅沢な無駄な時間を過ごす。
    ポカポカとひだまりの様な玲のそばは居心地がいい。
    ピピッと言う電子音で現実に戻り今日の支度をする。玲を起こし朝食を食べたらのんびりとお散歩をしながら集合場所へ。
    今日は昨日とは違うお馬さんで、結構いい歳の子たちらしくまったりとしていた。
    「玲の子はちょっと小さいねぇ」
    「その子は長距離適性があってG1なんかも走ってたんですよ」
    「ほーん、ライスシャワーみたいな?」
    「そうですね、馬体重は同じくらいですが…この子は成績は振るわなくて」
    「でも昨日の子より私向きな気がします!」
    ねー、と馬と楽しそうにコミュニケーションを取る玲も正直争い向きではないから気が合うのかもしれない。
    馬達といい感じに打ち解けたところで出発となった。不慣れな玲を真ん中に道草さん、玲、俺の順で馬を歩かせる。
    昨日より余裕があるのかアレやコレやと観光する玲に見せる様に玲の乗る馬は道草を食い始める。
    「あはは、泉さん行きますよー」
    道草さんに呼ばれて玲が歩かせようとしてもモグモグと食べてる辺りこのペアは似ているかも知れない、と思い思わずクツクツと笑ってしまう。
    痺れを切らした俺の馬が前足を掻くとようやく歩き始めた。
    テーマパークからそれた林道をトコトコと進んで行くと泊まっているホテルの反対の中腹くらいまで歩いてきたらしい。
    「今日はここでお昼です!」
    「ピクニックみたいですね!」
    「みたい、じゃなくて実際にピクニックだね。馬に乗ってお散歩してる」
    「実は牧場のシェフが猪肉のケバブを作ってくれたんですよ!昨日血抜きと下処理したお肉らしいので是非」
    「この辺で猟もするんですか?」
    「はい、罠だとは聞きましたが。鹿とか猪とかたまに野兎なんてのもありますね」
    「…実は私、ジビエ初めてなんです」
    「美味しいですよ!味わって下さい」
    意を決して齧り付く玲は一瞬で目が輝いた。
    「美味しい!」
    「でしょ、シェフはフランスで修行した凄腕らしいんです。引退してオーナーに引き抜かれたらしいですけど」
    「引き抜いたねぇ」
    相変わらずやる事が桁違いだと、桧山の行動に舌を巻きつつ俺も昼にありつく。
    その間馬達もご飯タイムと言わんばかりに冬木の葉や皮、雑草などを食べていた。
    帰りはまた別のルートを通り戻って来た。帰るなり玲の馬は馬房に帰ろうとするし、俺の馬はまた動きたいらしくソワソワとしていた。
    「道草さん、この子ちょっと走らせて来ても大丈夫?」
    「え?はい、昨日使ってたサークルでしたら」
    「はーい、ちょっとだけねー」
    ポンポンと首を撫でると理解したらしく嬉しそうに首を振っている。
    一度馬から降りてサークルを開け施錠を確認して跨がるとちょうど玲が馬房から出て来た様だ。馬に合図して走らせると久しぶりな所為か上手く体が使えていないのがよくわかる。
    「よーさんかっこいい」なんて向こうから聞こえるけど、これじゃあ馬の負担になってしまう。
    「服部さん、肩の力抜いて遠くを見て下さい」
    道草さんに言われてようやく力の入り過ぎを自覚し、修正する。なんとか形になった頃馬は満足したらしい。
    「やれやれ、体がバキバキになりそうだ」
    「でもカッコよかったです!写真撮っちゃいました!」
    パッと見せて来た写真は俺が苦戦している時の顔でなんとなく恥ずかしい。
    「まったく、そんなののどこがいいんだか」
    「耀さんは全部カッコいいのでいいんです!」
    「本当カッコいいです、泉さん羨ましい」
    「へへ、ありがとうございます」
    二人がそんな事をやっている間に向こうから見知った顔がやってくるのが見えた。
    「お嬢さん、楽しんでいるか?」
    「桧山さん!はい、ありがとうございます!」
    「桧山、俺は無視な訳?寂しいねぇ」
    「シェフにケーキを用意させた。部屋に持っていってもらうから是非後で食べてくれ」
    「貴臣、邪魔しに来たならやめてくれる?」
    「馬鹿を言うな耀、これから展開するサービスの打ち合わせだ北欧エリアの冬季イベントの目玉はやはりクリスマスだからな」
    「それでトナカイってねぇ…やり過ぎなんでない?」
    「サンタのソリを引くのはトナカイだと認識していたが違ったか?」
    「そう言う事を言ってるんじゃないんだけど」
    「あ、あの!桧山さん、今いる動物の他に何かまだ来るんですか?」
    「ん?あぁ、廃園動物園から象やサーバルキャットが来るかもしれないと言う話はある。ただどう魅せるかだな」
    「サーバルはこの施設には合わないんでない?」
    「貴臣様」
    「おっと、すまない。次の会議がある。お嬢さん誕生日おめでとう、いい年にしてくれ」
    「はい、ありがとうございます」
    颯爽と去る貴臣を横目に玲を見ると目が合った。
    「なぁに」
    「いえ、耀さんは今日もかっこいいなと思っただけです!」
    照れ隠しにスタスタと先を歩く玲を今日も可愛いと思うように玲も思ってくれていたのが嬉しい。
    この後の予定は特にないのでアイスやバター作り体験などをして牧場内を見て歩きホテルに戻る頃には夕方になっていた。
    玲と手を繋ぎホテルまで2日間の思い出に浸る。中でも盛り上がったのは乳搾り体験、牛かと思いきやまさかの山羊の乳搾りでついでにと焚き火で山羊のチーズを焼いたリアルハ◯ジ状態に2人して感激した。
    整備された芝生に寝っ転がり日向ぼっこしたり、のんびりしてホテルまで戻っては来たがとりあえず汚れを落とそうと風呂に入る玲を追いかけて一緒に入った。
    「広いから2人でも全然狭くない…」
    「スイートだからねぇ」
    「って言うか、なんか近くないですか?」
    「ん?離れたくないの、わかるでしょーよ」
    「?!」
    「っは、何その顔」
    「いや、まったくわかりませんが!?と言う顔です!」
    「五月蝿い、お風呂だから反響するんで静かにどーぞ」
    「理不尽…」
    「好きでしょ?」
    「…誕生日くらい甘やかして欲しいです」
    「おや、今日は素直なんだ」
    「人目があったのもありますが今日は耀さんとあんまりイチャイチャできていないと言いますか…」
    「そんじゃ、甘やかしますかね」
    その後、ご希望の『イチャイチャ』をしていじめ過ぎたのかのぼせた玲をバスローブに包みソファに寝かせた。
    「ごめん、お水飲めそ?」
    「耀さんが謝る幻覚が見えます…」
    「ほーん」
    水を口に含み玲に口移しで飲ませる。
    (これで幻覚とは思うまい)
    「っく、本物…!理不尽魔王様!」
    「なるほど、溺れるほど欲しいと?」
    「いや、溺れるほどは…ちょっと」
    また水を口移しで飲ませる。顔を離すと緩み切った玲が見えた。
    「緩み過ぎ」
    「いいんです!誕生日だから!」
    「そ」
    机の上には豪華な料理が並んでいる。匂いに釣られたのか玲のお腹と俺のお腹がギューと鳴いた。
    「さて、食べられそ?」
    「はい、お腹空きました」
    2人で「いただきます」の声を揃えて食べ始めるとあっという間に無くなっていった。
    「さて、メインと言うかデザートと言うか…」
    「あはは、2人で食べるにはなかなかなサイズじゃないですか?」
    およそ6号サイズのデコレーションケーキを眺めて2人でどう食べるか話し合った結果、贅沢にもそして無作法にもそのままフォークで突っつくと言う結論に至った。
    「やってみたかったんですよね、ホールケーキそのまんま食い」
    「じゃあ早速どーぞ」
    「…どこからどう行きましょう…」
    「ど真ん中から抉り取ってもよし、端から切り崩すもよし。お好きにお食べ」
    アワアワと泳いでいた玲のフォークは結果的には端から食べる選択をしたらしい。一口パクリと食べると目がキラキラと輝いて『美味しいです!』がダダ漏れ、思わずカシャリと写真を撮りクツクツと笑ってしまう。
    「玲は本当顔面電光掲示板だねぇ」
    「もう!耀さんまで言いますか!?」
    「じゃあ今の写真見る?」
    “見ます!”と意気込む玲に画面を向けると今度は真っ赤になって消沈した。
    「あの、恥ずかしいので消していただけると…」
    「却下。俺の癒しを君の羞恥心の為に消す事はないねぇ」
    「うぐっ!癒しって…」
    「仕事で疲れた時、追ってる事件の進展がない時、ポンポコ狸さんとのお食事会の時、眺めて癒されるんで」
    「そ、それはそれで恥ずかしいのですが…」
    「じゃあ昼間の俺の写真を消すなら考えてあげよう」
    「う"っ!そ、それはダメです!アレは私も耀さんを見て癒されたいので!」
    「はっ、物好きだねぇ。こんなオジサンの何がいいんだか、顔?」
    「…全部、です」
    「…ほーん」
    「っく…」
    「ほんじゃ、これ、首輪の代わりね」
    玲の手首に通したのはお土産物として置かれていた馬の尾毛を編み込んで作られたブレスレット。桜と馬のチャームがついていていい記念になると思ったのだ。
    「あ、これ!実は私も買っちゃったんですよ!ほら!」
    見せられたのは色違いの赤毛のブレスレット。
    「じゃあ…これは耀さんが付けてて下さい。休みの日だけでもいいので」
    「ほんじゃ、キーケースにでも付けとくかね」
    ありがたく受け取りケーキの踏破を再開する。
    「おっと、忘れる所だった。これ、誕生日プレゼントね、おめでとさん」
    「え、あるんですか!?」
    「要らないの?」
    「要ります!」
    ははぁ!と頭を深々下げて手を出すからそこにポンと乗せる。パッと輝く顔が中身を気にしてソワソワし始める。
    「開けてどーぞ」
    「失礼します」
    綺麗にそっと開けるあたり玲らしい。箱の中身は櫛。それもお六櫛を贈った。
    「櫛の意味、知ってる?」
    「え、いえ…ネックレスとかだと『君に首ったけ』とかあったと思いますけど…」
    「ま、気が向いたら調べてみんさい。ほれ、ケーキあーん」
    「え、ちょっ!耀さん、やめっ!んぐっ!」
    黙らせる意味でもケーキを口に詰め込みなんとか2人で食べ切る事に成功した。
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