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    moguratataki30

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    渡部の誕生日にすれ違いって…

    渡部2024BD誕生日前日の朝、明日からフランス出張確定で今日は忙しくなるぞと自分に気合いを入れながらベッドから起き上がる。
    他の人はどうか知らないが寝起きは悪くない方だと自覚はあった。
    顔を洗いコーヒーを入れながらスマホで国内外のニュースを見る。大きな変化はなく今日はどこのお菓子を関達に差し入れようか考えながら車を走らせ登庁する。
    「(忙しかったらツッカベッカライ カヤヌマのA缶で、余裕ありそうならRINGOのアップルパイなんか喜びそうだな…)」
    気を抜くと付き合ってる彼女、玲ちゃんを考えつつある自分の自制をちょっとだけ緩めニヤニヤしながら運転してしまう。
    省舎に着くとミサキちゃんがバタバタと片付けをしていた。
    「おはよー、お疲れ〜」
    「あ、渡部さんおはようございます」
    「どうしたの?慌てて」
    「いえ、書類の山を倒しまして…」
    「あはは、それは朝から大変だったね。サクッと片付けるから大体でいいよ」
    コートを脱ぎハンガーにかけ萎縮しているミサキちゃんにポケットの飴をお裾分けする。
    「…ミサキちゃんさ、ちょっと寝て来たら?」
    泊まり込みだったはずのミサキちゃんはちょっとやつれたように見えた。
    「…はい、後で少し寝て来ます」
    明日から出張と言う事もあり今日は特に忙しい仕事も来ず、ミサキちゃんも復活したお昼過ぎにフラリと庁舎を出てアップルパイを買いに行く。
    冬の肌寒さ感じる中、日向の暖かさを実感しつつ大きく伸びをすると凝り固まった背中がバキバキ聞こえる気がした。
    「ほーん、お散歩?」
    びくりと体が跳ね、振り返ると隣の建物から現れた桜田門の魔王がニコリと立っていた。
    「服部さん、急に後ろに立たないでもらえます?」
    「別に急ではないしフツーに出て来たつもりだけど」
    「貴方の普通は普通じゃないですから!」
    「そんなことはないでしょーよ、ワタナベくんとおんなじ人間」
    そう言いながら日比谷公園へと吸い込まれていった。
    「ほんっと、心臓に悪いんだから…」
    晴れやかだった気持ちが少し陰った所で改めてアップルパイを買い捜査企画課を目指す。最悪彼女にだけ会えればそれで良かった。
    しかし、そんな儚い夢は崩れ友人の関大輔だけが部屋にいた。
    「おつかれー、って関だけ?」
    「渡部?さっき泉を外務省に行かせたがすれ違ったか…」
    「えー、そりゃないよー。せっかく女神に会いに来たのに〜」
    「すまん、待てるだけの時間は…」
    「ないね…明日の支度があるからさ…」
    「そうか、泉も会いたがっていたからもしかしたら向こうにまだいるかもしれないな」
    その言葉に急ぎ足で庁舎に戻る。
    しかし、彼女の姿はもう無かった。
    ミサキちゃん曰くこちらと警視庁にも届ける書類があるとかで…残念な事にもう出てしまっていた。
    「会いたかったな…」
    「休憩でふらふら行かなきゃ会えましたよ」
    「えー、会いに行きたいじゃん」
    「はいはい、わかりましたから早く終えて帰れば今夜には会えるんでしょう?」
    「そうだね、よし、残りもパパッと片付けますか」
    残りを片付け終えたのがその後5時間かかり、気付けば19時を回っていた。
    急いで帰り支度をし車にエンジンをかけ浮かれ具合に帰る。しかしまたもや光は失われた。
    「ただいま〜…玲ちゃん?」
    帰り着いた部屋は暗く寒く、彼女の声も姿もなかった。
    少ししたら関からLIMEで玲ちゃんを返せない旨が送られて来た。
    「あちゃー、進展あったかぁ…」
    着替えをしながら頭をぽりぽり掻いた。彼らの仕事には付き物だしそれを彼女も誇りに思っている。それは外交官としても彼氏としても好ましい姿でかっこいいとも思う。ただ、恋人としては少し寂しさも感じずにはいられないわけで…。
    床下からパックごはんとレトルトカレーを出しレンジで温めたり湯煎したり。その間にお風呂を炊き軽くテーブルを付近で拭く。
    バタバタする間にチンと軽やかに温め終了を告げ取り出すとほっかほかの出来立てご飯が香りで誘惑する。
    「あちっ」
    蓋を開け皿に盛ると炊いた米ほどではないが食欲をそそられる。そこに湯煎していたカレーをかけると手抜きながらもお腹の空く晩ご飯が出来上がった。
    「いただきます」
    手を合わせてつくづく1人を感じ思わずテレビをつけた。
    ニュースでは先日の震災のあれこれや積雪、旅客機事故と慌ただしい年始のニュースが続いていた。
    「(向こうでもこの話題だろな…)」
    後もう一つ、最近の話題がある。メジャーリーガーの彼だ。ゴルフやラグビー、テニス、サッカーの方がヨーロッパでは話題に上がりやすい中、ベースボールと言う異業種で話題の彼は世間的には知る人ぞ知る人物だ。しかし、外交の場ではそうでもないのが世間話。
    モグモグと安定の美味しさを堪能し、玲ちゃんは怪我してないかなど考えながらスマホをチラチラ確認してしまう。
    「うーん、我ながら重症」
    カレーを食べ終え、流しで湯煎したお湯を皿に入れておく先にお風呂入ろと浴室へ向かった。しばらく入れなくなる湯船にゆっくり浸かり手足を伸ばす。入浴剤入れれば良かったかなとか思いつつ水に体を預け温まる。
    風呂を出たら玲ちゃんからLIMEが入っていた。
    『すみません、渡部さん。急な動きがあったので本日は帰れそうにありません。出発前日なのに本当すみません。』
    律儀な文面にクスリと笑ってしまう。
    『気にしなくていいよ、関からも聞いたし頑張りすぎないように頑張っといで。』
    ハァとため息を吐く。待つ側の寂しさをヒシヒシと感じる。
    寝支度をして早く寝ることにした。支度はいつも通りで既にできている、あとはキャリーケースを持って空港に行くだけ…。

    朝、肌寒さに起きる。玲ちゃんは帰って来ていなかった。
    目覚ましより少し早く起きたのでこのまま起きることにする。
    コーヒーメーカーのスイッチを入れ、顔を洗う。いつもの朝のように。
    朝食は冷蔵庫に入れてた最後の食パンを焼きジャムを塗って口に入れた。
    彼女がいればどんな朝食だったか考えてしまう。
    「(案外寝坊させて同じような朝食もありそうか…)」
    サクサクと軽やかな音を立てて食パンが無くなる。コーヒーも無くなり片付けをして車に乗り込む。いつもの出張への道を走り無事空港に着く。車内で流すのは彼女の好きな曲。
    別れ難くも空港内を歩く足取りは重い。
    「渡部さん!」
    とうとう幻聴まで聞こえ始めたかと自分に呆れため息を一つ。
    「渡部さん!待ってください!」
    カツカツと走るパンプスの音に振り返ると玲ちゃんが走って来ていた。
    「あれ?幻覚まで見るようになっ…玲ちゃん⁉︎」
    「はぁはぁ、間に合った…。すみません、急いで来たんですけど…はぁはぁ」
    「いや、え、なん?え?」
    「つい2時間前に事が済みまして、関さんに送り出してもらって、やっと会えました!」
    ニコニコ笑う彼女を思わず抱きしめる。
    「早く帰ってくるから」
    「はい、待ってます。ちゃんとお仕事して来てください」
    「帰って来たらデートしよ」
    「準備しときますね」
    最後に玲ちゃんに送り出され出張への空路に着いた。
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