「俺には剣の才能しかなかったから、そうするしかなかっただけだ」
そう呟くアレンに、僕らはそろって首を横に振った。
「そんな言い方しないでよ! 剣の才能だってすごいじゃないか、僕を見てごらんよ! こんなヘロヘロの剣筋でさあ!」
「そうよ! 10歳の時に兵士長に勝ったって聞いてるわ、十分すごいじゃない!」
どうしたことか、アレンはそれを聞いた途端に俯いて、拳を強く握り締めた。あまり触れられたくない話題だったのだろうか。
「その噂は曲解して伝わったものだ。兵士長を打ち負かしたのは12の時だ」
「そ、それ十分凄くない……!? 僕なんか全然」
「10の時に初めて動物を殺した」
凄みのあるアレンの言葉に、僕は口を閉ざすしかなくて、マリアもただ黙って、アレンを見ていた。
988