都心部から遠く離れた郊外の村。草の匂いと鳥の声が混ざるその場所は、時間の流れがゆるやかに感じるほどのどかで切り取られた背景は絵本の一部のようだった。ここエリュシオンでは、自給自足の生活のため、老若男女が朝から汗水を垂らし畑や川に赴いて食料を確保し命を頂く。煌びやかな装飾品を纏う貴族などからすれば裕福とはいえない生活だろうが、何不自由なく人々は確かに暮らしているのだ。
子供たちの娯楽といえば虫捕りや川遊びが中心で、自然との触れ合いに夢中である。だが、週に一度、村中の子供達はある一箇所に集まることを至極楽しみにしていた。
「ねぇ、今日は何味のパンケーキなの?」
「先に知ってしまっては面白くないだろう。すぐ用意するから順番に待っていろ」
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