白い吐息 猛吹雪の真っ白な世界を、クロムとシエルは歩いていた。
吹き荒ぶ風に身を縮め、両腕で体を抱えながら前進する。クロムが風をもろに受けて先を進み、少し後方をシエルが目をきつく瞑ったままついていった。耳に突き刺さる風音は冷気そのものであり、零下の空気が聴覚からも迫ってくるような錯覚に陥る。彼等は終わりの見えぬ道を不安と恐怖を胸に歩く。可能ならば今すぐ休みたい、しかし立ち止まった瞬間命が尽きる気がして、二人とも己の足を叱咤するようにして進み続けた。
「寒い……」
ガチガチと歯を鳴らしながら、シエルが風にかき消されそうな小さな声で呟く。彼の体は雪にまみれていたが、吹き荒れる嵐では払う余裕すらなかった。クロムもまた、シエルほどではないが寒さに体力を削られている。この日は30度を超える真夏日であったが、彼等が居る場所は現実とは正反対の有様だった。
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