結婚しよっか。『続きまして、本日の特集です。先日音楽特区で行われたライブフェスでの…』
ニュースキャスターが明るい声色で台本を読み上げる。コメンテーターの毒にも薬にもならない相槌が、右から左に耳をすり抜けていった。ガチャガチャと切り替わる画面が、見慣れた街並みに切り替わる。あまりのカラフルさに窓の外へ目をやれば、街路樹が夏の日差しを受けて青さを増していた。段々色濃くなっていく夏の気配を感じながら、燐音はおおきな欠伸を一つ零す。時刻は午後3時。久々のオフは、平凡な一日で終わりそうだ。
汗をかいたグラスを握りながら、ちびちびと麦茶を口に運ぶ。暑さにやられて鈍った胃がグルグルと不満げに鳴いた。パチンコも新台は出ていない。競馬もボートレースも、今日は気分じゃない。競輪や麻雀をするにも億劫だ。一足早い夏バテの予感に深くため息をついたところで、暑さがマシになる訳ではない。だが、そうでもしないとやっていられないのも事実だった。
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