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    えだまめ

    書きかけのとか置いてみようかなと思ってます。
    使い方あまりよくわかっていない。

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    えだまめ

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    一年ズ+五で特に腐ってないお話。
    中途半端に終わります。
    ✄-------------------‐✄

    後ろの座席が煩い。

    「グリーングリーンあおぞらにーはーことりがうたーいー」
    「ゴーゴー釘崎!」
    狭い車内でマイクの形を模したラムネ菓子の入れ物を片手に何故か熱唱する釘崎。
    そしてそれに絶妙な合いの手を入れる虎杖。
    酒でも入っているんじゃないかと疑う程にテンションは最高潮だ。宴会場かここは。
    とはいえそんなドンチャン騒ぎも数時間続けば嫌でも慣れてしまうもので。
    伏黒は怒るでも騒ぐでもなく無感情のまま助手席の窓からぼんやりと遠くを見つめていた。
    (っていうかこれ親父さん死んじゃう歌……)
    選曲に違和感を感じながらも敢えてツッコむ事はしないまま、ポケットから取り出したスマホで時間を確認する。
    「目的地、そろそろですか?」
    伏黒が問えば運転席の男、毎度お馴染み苦労人補助監督こと伊地知が穏やかな笑顔を浮かべて、そうですねと返した。
    心なしか機嫌が良さそうに見える事から騒がしい車内は別に嫌いではないらしい。
    学生時代でも思い出しているのだろうか。
    「うっわ周りなんもねーじゃん」
    いつの間にカラオケ大会を終えたのか、虎杖が窓の外に広がる景色に率直な感想を漏らす。
    広大な田圃、点在する民家、農家のビニールハウス、そして木、木、木……。
    どれだけ車を走らせても代わり映えのしない景色がそこには広がっていた。
    ビルもなければコンビニも見えない。
    「慰安旅行なんて言うからどんな高級ホテルに連れてってくれるかと思ったら、超ド田舎じゃないのよ。こちとら山の空気なんざ嗅ぎ飽きてるっつーの」
    「でもみんなで旅行ってなんかワクワクするよなー! 修学旅行みてぇ!」
    3人の元にでかでかと慰安旅行と書かれた二つ折りの紙が届けられたのは3日前の事だ。
    恐らくしおりのつもりなのだろうそれを開けば中には持ち物と集合日時のみが書かれていて。
    それだけでは紙を持て余すだろうと思われるだろうがそんな心配は無用だ。
    見開きの2面にはほとんど五条の手書き文字で持ち物リストが事細かく書かれていた。
    特におやつの項には予算はいくらまでだとか遠足に向いているおやつリストだとか果てはおすすめの駄菓子屋の地図まで載せてある。
    その代わり3人が最も知りたいであろう行先や日数、タイムスケジュールなどは一切書かれていない。
    ただ集合日時に書かれた時間に伊地知の車に乗せてもらってね♡ とだけ書かれていたもので釘崎などは苛立ちのあまりしおりを握り潰してしまうほど荒れていた。
    そんなこんなで3人はこのお粗末なミステリーツアーに繰り出しているわけなのだが。
    「まぁ五条先生の事だからどうせ旅行と言っても」
    「おい伏黒テメー不吉な事言ってんじゃねぇぞ、言霊っての知ってるか?」
    話の最中に被せられたドスの効いた声に伏黒は言葉を呑む。
    次いで首元にヒヤリとした感覚がしてピシリと体を固めた。
    恐る恐るバックミラーを見遣れば物凄い形相で伏黒の首元に五寸釘を押し当てている釘崎が目に入って思わず頬が引き攣った。完全に何人か殺ってる目だ。
    助けを求めるようにバックミラー越しに虎杖を見遣れば奴はなんとおやつに持ってきたポテチの封を開けているところだった。
    そろそろ着くって言ってんだろ。
    小学生か? 小学生なのか?
    頼りにならない同級生に内心で舌打ちを落としあと残るはと一縷の望みを託して運転席に目を向ける。
    視線を感じた伊地知がビクリと一瞬肩を震わすが此方を見る事は無い。
    安全運転安全運転ーなどと小さく聞こえる事からこのままスルーを決め込むつもりらしい。
    もう大人なんて信じない。
    「でもまぁ五条先生だしなぁ。なんか俺慣れちゃったよ」
    バリバリとポテチを貪りながら虎杖は苦笑する。
    高専に入学してからというもののこういったシチュエーションでまともに楽しめた記憶など殆どないのだ。
    まあこの特殊な学校に入学した時点で普通の青春を望む方が間違っているのかもしれないが。
    何が来てもいいようにドーンと構えてようぜと笑う虎杖に、すっかり毒気を抜かれた釘崎は漸く般若の仮面を捨て去ると調教されてんじゃねーよと大きく溜息を吐いた。

    ――

    山奥の旅館はパッと見ただけでもかなり広そうで、大して世間の旅館事情に詳しくない釘崎にもそれなりに値段が張るのであろう事は容易に想像できた。
    想像以上のクオリティの高さに両脇の2人を見れば虎杖はともかく伏黒までもがその無表情の上に輝く瞳をのせていて、なかなかレアなもんを見たなと思いながら再度旅館を見遣る。
    今のところ呪霊の気配もない。
    もしかしたら本当に杞憂だったのかもしれないと釘崎はにんまりと笑顔を浮かべた。
    「や! 長旅お疲れ様!」
    旅館の入り口で出迎えてくれたのは担任である五条だ。
    いつものように上下黒の服装と正しく景色が捉えられているのか怪しいほど真っ黒なサングラス。
    ただ一ついつもと違ったのは彼の髪の色。
    「先生、その髪どしたの?」
    見慣れない色を指差して虎杖が問う。
    日本人とは思えないほど透き通っていた彼の銀糸は今や見る影もないほどに真っ黒に染められていた。
    「いーでしょこれ、イメチェン」
    にっこりと歳不相応な笑みを浮かべて黒髪を指先で弄ぶ五条。
    正直んなわけないだろとツッコミを入れたい気持ちは山々だ。
    だが五条がこういった対応をする時は大抵説明がめんどくさい時なのだと伏黒から聞いたことがある。
    詰めたところでどうせ答えちゃくれないだろう。
    無駄なことはしない主義だ。
    「っていうか頭のてっぺんから爪先まで真っ黒……」
    「怪しさ全開だな」
    とりあえず思ったままの感想を述べれば伏黒もそれに同意するように言葉を重ねる。
    それを聞いた五条はうわーひどーいなどと心にもないような台詞を吐きながら体をくねらせた。
    顔はいいくせにこういうところだぞと釘崎は彼と出会ってから何度それを思ったかわからない。
    そして今回も決して声には出さず思うだけに留めておく。
    ぶっちゃけこの変人の髪が白かろうが黒かろうがどうでもいいのだ。
    「さっさと旅館入りましょ! もちろん温泉付きでしょうね!?」
    「モチのロンよ!」
    親指を立てて肯定を返す五条にすかさずガッツポーズを決める。
    横を見れば虎杖も同じポーズをしていて。
    特に示し合わせたわけでもないが同時にヒャッホーウと飛び上がり空中でハイタッチを交わした。
    ノリの近い人間がいると楽しい。
    「そんじゃ部屋の鍵配るから荷物置いたらまた入り口に集合ね」
    「はーい!」
    五条から1人ずつ順番に鍵を貰い何も考えず虎杖と2人元気な返事を返す。
    ふと虎杖とは反対隣にいる伏黒を見遣れば彼はなんとも微妙な顔をしていて。
    釘崎は再度五条の言葉を心の中で繰り返す。
    荷物置いたら、また入り口に集合。
    入り口。ロビーではなく。
    (……あれ?)
    やはり杞憂なんかじゃなかったかもしれない。

    ――

    旅館から歩く事数十分。
    ほら見えてきたよと楽しそうに五条が指差したのは小さくも大きくもないような古びた家屋だった。
    予想していなかったわけではないがそれでも最後まで希望を捨てずに持っていた釘崎はこれでもかというぐらいに顔を歪めてみせた。
    「なによ、あれ」
    「んー? 今回の任務先」
    「だろうと思ったよ!!」
    わかってたけど、わかってたんだけどと行き場のない怒りをどうにかしようととりあえず地面を踏みつけてやれば。
    柔らかい土とそれに覆い被さった大量の葉が衝撃を吸収してパフッパフッという迫力のない音が情けなく響いた。
    見た目に反した可愛らしい擬音に口元を押さえて小さく吹き出す伏黒に俺伏黒のツボわかんねーと虎杖がカラカラと笑う。
    五条は満足気な顔で3人の反応を確認すると手を一度叩いてそれじゃあ任務の話を始めるね、と続けた。
    「あの家には霊能力者を名乗る男が住んでてね」
    話を始める五条に3人は渋々なれど真剣な表情を拵える。
    腐っても教師と生徒だ。
    相手が変人であろうと立場は変わらない。
    「霊能力者?呪術師じゃなくて?」
    虎杖が首を傾げる。
    「そ。なんでも『霊能力で悪人共に天罰を』ってのをキャッチフレーズにしてて裏の社会じゃなかなか有名人みたいよ」
    そこまで言って五条は一呼吸置き、ニヤリと口角を上げた。
    「その名もバタフライ蝶野」
    「は?」
    キラリと怪しげにサングラスを輝かせる五条に3人同時に声が漏れた。
    ドヤ顔が妙に腹立つ。
    「なにそれふざけてんの?」
    呆れた様に釘崎が言えばいやいやと五条は右手を振って否定を返す。
    「これが大マジ! 超ウケるよね。霊能力者って名乗ってるからか高専の情報網には引っ掛かんなかったみたいでさ。まぁそいつがそれを狙ってるのかはわかんないんだけど」
    調査によると、天罰と言ってもちょっとした不幸が訪れる程度だそうだ。
    正直呪詛師かどうかも怪しい。
    たとえ高専の情報網に引っ掛かっていたとしても対応していたかは微妙なところだろう。
    万年人手不足の呪術師はそこまで暇じゃないのだ。
    「今回動いたって事は何か問題でもあったんですか?」
    今度は伏黒が問う。
    「どうやら最近になってその天罰による死人が出始めたらしくてね。流石に捨て置けないけどこれが呪詛師によるものなら呪いによる犯罪は法で裁けないし表の警察じゃ手が余るってんで裏ルートから高専に依頼が入ったってわけ。対呪詛師の案件ってなかなかないし実習にはもってこいでしょ? だから僕頑張って依頼もぎ取ってきちゃった」
    まるで褒めて褒めてと言わんばかりの満面の笑みを向けてくる五条だが正直伏黒は気が気ではない。
    ああほらまた隣で呪いよりも怖いドス黒いオーラを感じる。
    お願いだからこれ以上逆撫でしないでくれ。
    「君達の今回の任務はバタフライ蝶野が呪詛師である事を調査し、呪詛師なら連行、そうでないなら然るべき機関に引き渡す事。というわけで今日の君達はとある高校のミステリー研究会のメンバーで、僕はその引率の先生、城島 聡ってことでヨロシク!」
    既にアポは取れてるからと両手でピースを作りながら楽しげな五条。
    緊張感もへったくりもない。
    「城島先生か……なんか間違えそう」
    「ややこしいからリーダーにしましょ、リーダー」
    「それ城島違いだろ……」
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    「グリーングリーンあおぞらにーはーことりがうたーいー」
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    狭い車内でマイクの形を模したラムネ菓子の入れ物を片手に何故か熱唱する釘崎。
    そしてそれに絶妙な合いの手を入れる虎杖。
    酒でも入っているんじゃないかと疑う程にテンションは最高潮だ。宴会場かここは。
    とはいえそんなドンチャン騒ぎも数時間続けば嫌でも慣れてしまうもので。
    伏黒は怒るでも騒ぐでもなく無感情のまま助手席の窓からぼんやりと遠くを見つめていた。
    (っていうかこれ親父さん死んじゃう歌……)
    選曲に違和感を感じながらも敢えてツッコむ事はしないまま、ポケットから取り出したスマホで時間を確認する。
    「目的地、そろそろですか?」
    伏黒が問えば運転席の男、毎度お馴染み苦労人補助監督こと伊地知が穏やかな笑顔を浮かべて、そうですねと返した。
    心なしか機嫌が良さそうに見える事から騒がしい車内は別に嫌いではないらしい。
    学生時代でも思い出しているのだろうか。
    「うっわ周りなんもねーじゃん」
    いつの間にカラオケ大会を終えたのか、虎杖が窓の外に広がる景色に率直な感想を漏らす。
    広大な田圃、点在する民家、農家のビ 4169

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