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    あおい🧙‍♂️

    落書きとか

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    あおい🧙‍♂️

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    猫が騒ぐ日用(その①)ピクシブに載せているものです。
    少し前に書いたものなので設定が違うかもですが…お時間があれば是非~~☺️✨

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #猫騒ぎ1122
    catNoisy1122
    #シノヒス
    thinusThynnus

    『はじまりのうた。』


    雨の音が恋しい。

     ヒースクリフは自室のベッドに横になると頭の中で雨の音を思い浮かべた。
     さあさあと、一定のリズムが心地よく響く。
     今日はいろいろなことがあった。今年の大いなる厄災が終わったばかりだというのに、落ち着く間もなく中央の国の魔法管理省により魔法舎に火が放たれ、応戦していると新しい賢者の魔法使いが現れた。
     先の厄災で失った仲間の変わりに新たに加わった十人の賢者の魔法使い。
     その中に、ヒースクリフのよく知る人物がいた。
    (シノ……)
     青みのかかった黒髪と、気の強さを湛えた赤い瞳の少年。彼はヒースクリフと同じ東の魔法使いだった。ブランシェット家の使用人であり、ヒースクリフの幼馴染。
     大いなる厄災のために召集されたとき以来の再会に、驚きと、喜びと、安堵を感じた。素直に嬉しいと言えればどんなによかったか。それなのに、気持ちと裏腹に、その後の各国の顔合わせでつい口げんかをしてしまったのだから恥ずかしい。
    (賢者様やみんなの前で……原因は間違いなくシノにあるんだけど)
     それからシノとはほとんど言葉を交わさなかった。部屋に戻る前に仲直りすればよかったのだが、カインを交えた会話で再びこじれてしまい、タイミングを逃してしまったのだ。
    (だめだ眠い……)
     明日になればお互い何事もなかったように顔を合わせられるだろうか。全てを明日の自分へと委ね、眠りの世界へと向かおうとしていたヒースクリフだったが、次の瞬間自分の名を呼ぶ声で現実世界へと引き戻された。
    「ヒース」
    「え、シノ……?」
     重たい瞼を開けばすぐそこに幼馴染の顔がある。ヒースクリフは上半身を起こすと軽く目をこすった。
    「どうしたんだ、っていうか、ノックし――」
    「大丈夫か?」
    「え?」
     ヒースクリフの言葉にかぶせるようにシノが問いかけてくる。彼はいつもこうだった。自分のペースでものを話す。もう慣れたけれど。
     険悪な雰囲気で別れたため顔を合わせづらいと思っていたが、シノは少しも気にしていないのか、いつもと同じ様子で話しかけてきた。
    「カインから聞いたんだ。お前に、何があったのか」
    「……」
    「大いなる厄災の襲来のとき、ファウストに庇ってもらったんだってな」
    「ああ、そのことか。うん。先生に助けてもらえなかったら、俺、多分駄目だったと思う」
     ベッドの上で居住まいを正したヒースクリフが、ひざの上で両指を絡めて、ポツリと呟く。脳裏に数日前の悪夢が蘇った。
     年に一度、月が襲来する日。今年の大いなる厄災はとても力が強かった。次々と死んで石になっていく仲間たち。これが初陣だったヒースクリフにとって、目の前の惨劇は地獄絵図以外の何者でもなかった。
     四人いた東の仲間のうち、二人が死んで石になった。魔力を消耗したヒースクリフにも厄災が襲い掛かり、もう駄目だと思ったとき、もう一人の東の魔法使い、ファウストに助けられたのだ。
     ヒースクリフたち魔法使いを庇い大怪我を負ったファウストを助けるため、異世界からやってきた賢者を探した。彼の力でファウストの一命を取り留めることが出来たとき、本当に心の底から安堵した。もし、自分が攻撃を受けていたら、恐らく命はなかっただろう。ファウストがあそこまで持ちこたえたのは、自分と違い、彼が偉大な魔法使いだったからだ。
    (ああそうだ、それはつまり――)
    「ごめんな、シノ」
    「何が」
    「俺に何かあったら、シノに迷惑がかかるのに……こんなんじゃ、俺、賢者の魔法使いだなんて言えないよ」
     遠い昔、シノと交わした約束がある。

     それは『お互いを守ること』

     魔法使いは滅多なことでは約束を交わさない。約束を破れば魔力を失うというリスクがあるからだ。
     かつての師に騙されるようにして交わした約束により、二人の未来には枷がはめられた。万が一どちらかが死ねば、約束が果たされなかったとみなされてしまう。もしもヒースクリフが厄災で命を落としていたら、シノから魔力は消えていた。
    「……そうやってまた下を向く。せっかくの奥様譲りの美貌がもったいない」
    「……」
    「死んだやつらには、運がなかったんだ」
    「そんな言い方ないだろ!」
     はっきりとした、冷たい物言いにきっと睨むも、シノは全く気にする素振りを見せずにふんと鼻を鳴らした。そのままベッドの端に腰を下ろすと、ヒースクリフを抱きしめる。
     彼の身体から、ふわり、なつかしい故郷の匂いがした。
    「オレはここにこられてよかった」
    「シノ?」
    「これでおまえを守れる。カインからおまえのことを聞いたとき、その場にいなかったことが悔しかった。オレなら、おまえを守れたのに、何も知らずのんきにシャーウッドの森でしみったれたおっさん相手に道案内していたなんて、自分が許せない」
    「シノ……。仕方ないよ。森の案内はシノの仕事だろ? シノはシャーウッドの森番なんだから」
    シノにはブランシェット家の従者という立場のほかに、シャーウッドの森の番人も兼ねている。魔力が漂い、旅人を迷い惑わせるその森は、番人の案内がなければ抜けるのが困難だと言われている。シノは腕がいいと評判の案内人だった。
    「おまえを守れなかったら、奥様や旦那様に顔向けが出来ない。今回のことでよくわかった。事後報告は嫌だ。おまえのいない国で、おまえをただ待つだけだなんて、もうごめんだ」
    「シ、っ」
     唐突に身体を離され、シノの唇が触れる。苛立ちが伝わるような、少し強引なキスだった。
    「まっ、ん……っ」
     温かい舌が入り込み、咥内を蹂躙する。互いの唾液を交換し、呼吸をも奪われるような激しさに目じりに涙が浮かんだ。シノの性格らしい、自分勝手な動きにいつも翻弄される。
     ヒースクリフとのキスを堪能したシノの唇が、名残惜しそうに離れていった。
    「は、っ……はぁ……」
    「ふっ。綺麗だ」
    「恥ずかしいこというな……」
     濡れた唇を拭われ、シノの手のひらが頬を包み込んだ。するりと撫でられ、至近で見つめられる。
     シノは自身の濡れた唇を舐めると、ヒースクリフの息が整うのを待たず、その身体をベッドに押し倒した。
    「えっ、ちょっ、シノ!」
    「大丈夫だ。優しくする。ファウストにもそう言われたしな」
    「はぁ?」
     ヒースクリフに覆いかぶさったシノが得意げな笑みを浮かべた。先ほどの顔合わせでファウストに「今夜だけは優しくしてやりなさい」と言われたことを別の意味で捉えてしまったようだった。服に手がかかるのを、力ずくで引き剥がすもピクリとも動かない。
    「意味が違うだろ!」
    「違わない。いいからその手をどけろ」
     動揺するヒースクリフと反対に、シノは真面目な顔を崩さない。しばらくの押し合いの末、先に折れたのはヒースクリフだった。
    「ふふっ。まったく、シノってば相変わらずだな」
    「なにがおかしい」
     小首をかしげるシノの手を取り、ヒースクリフが己の指と絡めた。体温の低いヒースクリフと違って、シノの体温は高く、温かい。
     絡んだ指。握る指に力をこめて、シノが言った。
    「ヒース、会いたかった」
    「俺も会いたかったよ、シノ。――やっと言えた」
     
     ぶっきらぼうだけど、優しい声音が胸に響く。二人は微笑み合うと、ゆっくりと唇を重ねた。
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    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用再掲です(その③)

    お読みいただきありがとうございました!
    またお話書けたらいいな~~
    『夜のワルツ』

     賢者の魔法使いたち二十一人が魔法舎に住むことが決まり、騒がしい引越しラッシュがようやく落ち着いた日の夜のこと。シノは明かりも人気もない廊下を歩くと、主君であり友人であり、そして恋人でもあるヒースクリフの部屋を訪ねた。
    「ヒース、いるか」
    「わっ、シノ?」
     ノックをせず部屋に入れば、ベッドの上で本を読んでいたヒースクリフが顔をあげる。
     シノはベッドまで歩くと彼の傍に腰を下ろした。
    「どうしたんだ、こんな夜中に」
    「最近どうも寝つきが悪いんだ。だから、今夜はここで寝かせてくれ」
    「えっ、シノが寝付けないなんて珍しいね。具合でも悪いんじゃないのか?」
     シノの言葉に、ヒースクリフが驚きの声を上げた。
     基本的にシノは屋根があり、雨風が凌げればどこででも眠ることができた。そのことをヒースクリフも知っている。
    だから具合が悪いのかと、彼が心配するのも無理はなかった。
    「体調は普通だ。ただ、眠れないのは困るから、さっき南の魔法使いのフィガロに聞いてみた。あいつは医者らしいからな。そうしたら、故郷を感じるものを傍に置くといいと言われた。アミュ……なんとか。忘れたけど」
    「忘れ 2557

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用(その①)ピクシブに載せているものです。
    少し前に書いたものなので設定が違うかもですが…お時間があれば是非~~☺️✨
    『はじまりのうた。』


    雨の音が恋しい。

     ヒースクリフは自室のベッドに横になると頭の中で雨の音を思い浮かべた。
     さあさあと、一定のリズムが心地よく響く。
     今日はいろいろなことがあった。今年の大いなる厄災が終わったばかりだというのに、落ち着く間もなく中央の国の魔法管理省により魔法舎に火が放たれ、応戦していると新しい賢者の魔法使いが現れた。
     先の厄災で失った仲間の変わりに新たに加わった十人の賢者の魔法使い。
     その中に、ヒースクリフのよく知る人物がいた。
    (シノ……)
     青みのかかった黒髪と、気の強さを湛えた赤い瞳の少年。彼はヒースクリフと同じ東の魔法使いだった。ブランシェット家の使用人であり、ヒースクリフの幼馴染。
     大いなる厄災のために召集されたとき以来の再会に、驚きと、喜びと、安堵を感じた。素直に嬉しいと言えればどんなによかったか。それなのに、気持ちと裏腹に、その後の各国の顔合わせでつい口げんかをしてしまったのだから恥ずかしい。
    (賢者様やみんなの前で……原因は間違いなくシノにあるんだけど)
     それからシノとはほとんど言葉を交わさなかった。部屋に戻る前に仲直りすればよかっ 2988

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用にピクシブより再掲分です。(その②)
    設定が…(以下同…)
    よろしくお願いします〜☺️🙏
    『フリージアの憂鬱』

    「えっ、ヒースってば本当にあれをやったの?」
    「あはは……」
     とある晴れた日の午後。談話室にて晶やクロエと談笑していたヒースクリフは、驚くクロエのリアクションに乾いた笑みを浮かべた。
    「だってカインが絶対これだって言うから……うう、思い出すだけで恥ずかしい」
     ことの発端は今朝のこと。晶を起こすために部屋へと向かったヒースクリフは、そこでいつもと違った声かけをした。

    『け、賢者様! 朝食の時間だよー、……です! 起きてください、賢者様……』

     手にクマのぬいぐるみを持ち、腹話術の真似をして晶を起こそうと試みる。
     最近、晶が朝のベッドから出られないと聞いていたヒースクリフとカインは、どうすれば彼が起きられるだろうと話し合い、それならばいつもと違った起こし方をすればいいのではないか、という結論に至った。
     施錠のされていない部屋に入り、窓辺に置いてあるクマのぬいぐるみを手にする。ヒースクリフが部屋を歩き回っているというのに起きる気配を見せない晶に、ふと不安がよぎった。
    (そう言えば、俺、普通に部屋に入ってるけど、賢者様っていつも部屋の鍵閉めてないよな……)
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