Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    あおい🧙‍♂️

    落書きとか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    あおい🧙‍♂️

    ☆quiet follow

    猫が騒ぐ日用再掲です(その③)

    お読みいただきありがとうございました!
    またお話書けたらいいな~~

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #シノヒス
    thinusThynnus
    #猫騒ぎ1122
    catNoisy1122

    『夜のワルツ』

     賢者の魔法使いたち二十一人が魔法舎に住むことが決まり、騒がしい引越しラッシュがようやく落ち着いた日の夜のこと。シノは明かりも人気もない廊下を歩くと、主君であり友人であり、そして恋人でもあるヒースクリフの部屋を訪ねた。
    「ヒース、いるか」
    「わっ、シノ?」
     ノックをせず部屋に入れば、ベッドの上で本を読んでいたヒースクリフが顔をあげる。
     シノはベッドまで歩くと彼の傍に腰を下ろした。
    「どうしたんだ、こんな夜中に」
    「最近どうも寝つきが悪いんだ。だから、今夜はここで寝かせてくれ」
    「えっ、シノが寝付けないなんて珍しいね。具合でも悪いんじゃないのか?」
     シノの言葉に、ヒースクリフが驚きの声を上げた。
     基本的にシノは屋根があり、雨風が凌げればどこででも眠ることができた。そのことをヒースクリフも知っている。
    だから具合が悪いのかと、彼が心配するのも無理はなかった。
    「体調は普通だ。ただ、眠れないのは困るから、さっき南の魔法使いのフィガロに聞いてみた。あいつは医者らしいからな。そうしたら、故郷を感じるものを傍に置くといいと言われた。アミュ……なんとか。忘れたけど」
    「忘れるなよ……えっと、故郷だから、俺ってこと?」
    「ああ。おまえの匂いがあれば、いつもみたいに眠れる気がする。安心しろ、何もする気はないさ。そこのソファを借りるぞ」
    「あっ、ちょっとシノ!」
     ベッドの横に置かれたソファーで眠ろうと立ち上がるシノの腕をヒースクリフが慌てて掴んだ。自身の身体をずらすと、ベッドを半分ほど空ける。どうやらシノをベッドに入れてくれるらしい。ソファーで大丈夫だと断ったが、半ば強引に引きずり込まれてしまった。
    「ソファーでいいのに。強引な主人だ」
    「シノが風邪でも引いたら嫌だから。それに、俺もシノが隣にいてくれたほうが落ち着く気がするんだ。新しい環境にまだまだ慣れなさそう……。ねぇシノ、こうやって一緒に眠るの、久しぶりだね」
    「そうだな」
     ベッドの温もりと、ヒースクリフの匂いに包まれてほうと息を零す。
     こんなに穏やかな夜はいつぶりだろう。
    大いなる厄災の襲来に伴い、シノより先に賢者の魔法使いとして選ばれていたヒースクリフは、魔法舎にいることが多くなった。
    朝早く出かけては、夜遅くに城に戻っていたようで、仕事中に城の周辺をうろついてみるも、会うことはおろか、姿を見ることもままならなかったほどだ。
    それを寂しいと感じていたが、それ以上に、自慢の主君が賢者の魔法使いに選ばれたことが、従者として誇らしかった。(もう一人選ばれたのがシノではなくジャックという胡散臭い師匠だったのは気に食わないが)
    けれど、顔を見ればやはり嬉しくて、つかの間の逢瀬で、
    いささか乱暴にヒースクリフを求めたこともあった。
    「ヒース」
    「ん?」
    綺麗な蒼色の瞳がシノを映す。見慣れているはずなのに、
    その美しさにごくりと喉がなった。手を出さないと誓ったつもりだけれど、思わず手を伸ばしてしまいたくなる、そんな危うげな色気がにじみ出ている。その瞳から目をそらせずにいると、ヒースクリフの手が、シノの頬に触れた。
    「シノ」
    「……っ」
     唇に触れる感触に、ヒースクリフにキスをされていることに気づく。彼からのキスは初めてだった。触れるだけの、
    控えめのキスはどこか彼らしい。唇を離したヒースクリフが、おずおずとシノを見た。
    「い、嫌だった?」
    「嫌なわけあるか。――けど」
    「んっ!」
     シノはヒースクリフの後ろ髪に手を差し込むと、今度は自分から口付けた。ヒースクリフとは正反対の、貪るような深いキスに、彼の口からくぐもった声が漏れる。甘い咥内を思う存分堪能すると、ようやく唇を解放し、得意げに口角をあげて笑った。
    「こっちのほうがいい。ほら、やってみろよ」
    「……っ、無茶言うなよ!」
     ただでさえ涙目で火照った顔が、さらに赤みを増していく。拗ねて背を向けるヒースクリフを背後からぎゅっと抱きしめると、服のすそから手を差し込んだ。
    「えっ、ちょ、っシノ! 何もしないって言っただろ!」
    「気が変わった。先に仕掛けたのはおまえだ」
    「!」
     肌をまさぐる手はそのままに、絹糸のような髪に口付る。
    羞恥に染まった耳を食み、首筋に舌を這わせれば、ヒースクリフの口から甘い声が漏れた。
    「う、ん……っ」
    「ヒース……」
     触れるたび、彼の身体が小刻みに震える。その顔は快楽に染まっているはずなのに、見えないことが嫌で、シノは耳元に唇を寄せると請うように名前を呼んだ。
    「ヒース。ヒースクリフ、こっちを向いてくれ。――貴方の顔が見たい」
    「……っ」
     しばらくの沈黙の後、シノの声が届いたのか、はたまた観念したのか、縮こまっていたヒースクリフがゆるゆると振り返った。予想どおり、頬を染めて目じりには涙を浮かべている。彼の泣き顔はいつ見ても綺麗だった。もともと飛びぬけて綺麗な顔立ちをしているが、泣き顔は格別で、幼い頃、彼のこの顔が見たくて執拗に泣かせたのを思い出す。
    「シノってばなんて顔してるんだよ」
    「は? どんな顔だよ」
     はっとして視線を合わせると、ヒースクリフは困ったように笑った。「内緒」そう言って、シノを抱き寄せると口付ける。遠慮がちに舌を伸ばしてシノのそれに絡めると、柔らかく吸い上げた。激しくはないけれど深いキスに胸が熱くなる。唇が離れると、ヒースクリフが伺うようにシノを見た。
    「どう、かな?」
    「及第点だ。――それで?」
    「い、一回だけなら……」
     目を伏せて視線を泳がせながら、ヒースクリフが今にも消え入りそうな声で呟いた。身体を触れ合うことは初めてではないのに、いつまでも初心な反応を見せるのだから困ってしまう。
     聡明で、格好良くて、綺麗でかわいいシノだけの――恋人。
     シノはヒースクリフの許しに顔をほころばせると、彼の手を取り口付けた。
    「ああ。とびきり気持ちよくしてやる」
    「ほどほどにして……」
     明日も早いんだし、そう呟く唇を塞ぐとヒースクリフに覆いかぶさる。
    「――レプセヴァイヴルプ・スノス」

     シノの腕の中、ヒースクリフのか細い声とともに、まもなく部屋の照明が落とされた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍😊🙏💕💕💕💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用再掲です(その③)

    お読みいただきありがとうございました!
    またお話書けたらいいな~~
    『夜のワルツ』

     賢者の魔法使いたち二十一人が魔法舎に住むことが決まり、騒がしい引越しラッシュがようやく落ち着いた日の夜のこと。シノは明かりも人気もない廊下を歩くと、主君であり友人であり、そして恋人でもあるヒースクリフの部屋を訪ねた。
    「ヒース、いるか」
    「わっ、シノ?」
     ノックをせず部屋に入れば、ベッドの上で本を読んでいたヒースクリフが顔をあげる。
     シノはベッドまで歩くと彼の傍に腰を下ろした。
    「どうしたんだ、こんな夜中に」
    「最近どうも寝つきが悪いんだ。だから、今夜はここで寝かせてくれ」
    「えっ、シノが寝付けないなんて珍しいね。具合でも悪いんじゃないのか?」
     シノの言葉に、ヒースクリフが驚きの声を上げた。
     基本的にシノは屋根があり、雨風が凌げればどこででも眠ることができた。そのことをヒースクリフも知っている。
    だから具合が悪いのかと、彼が心配するのも無理はなかった。
    「体調は普通だ。ただ、眠れないのは困るから、さっき南の魔法使いのフィガロに聞いてみた。あいつは医者らしいからな。そうしたら、故郷を感じるものを傍に置くといいと言われた。アミュ……なんとか。忘れたけど」
    「忘れ 2557

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用(その①)ピクシブに載せているものです。
    少し前に書いたものなので設定が違うかもですが…お時間があれば是非~~☺️✨
    『はじまりのうた。』


    雨の音が恋しい。

     ヒースクリフは自室のベッドに横になると頭の中で雨の音を思い浮かべた。
     さあさあと、一定のリズムが心地よく響く。
     今日はいろいろなことがあった。今年の大いなる厄災が終わったばかりだというのに、落ち着く間もなく中央の国の魔法管理省により魔法舎に火が放たれ、応戦していると新しい賢者の魔法使いが現れた。
     先の厄災で失った仲間の変わりに新たに加わった十人の賢者の魔法使い。
     その中に、ヒースクリフのよく知る人物がいた。
    (シノ……)
     青みのかかった黒髪と、気の強さを湛えた赤い瞳の少年。彼はヒースクリフと同じ東の魔法使いだった。ブランシェット家の使用人であり、ヒースクリフの幼馴染。
     大いなる厄災のために召集されたとき以来の再会に、驚きと、喜びと、安堵を感じた。素直に嬉しいと言えればどんなによかったか。それなのに、気持ちと裏腹に、その後の各国の顔合わせでつい口げんかをしてしまったのだから恥ずかしい。
    (賢者様やみんなの前で……原因は間違いなくシノにあるんだけど)
     それからシノとはほとんど言葉を交わさなかった。部屋に戻る前に仲直りすればよかっ 2988

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用にピクシブより再掲分です。(その②)
    設定が…(以下同…)
    よろしくお願いします〜☺️🙏
    『フリージアの憂鬱』

    「えっ、ヒースってば本当にあれをやったの?」
    「あはは……」
     とある晴れた日の午後。談話室にて晶やクロエと談笑していたヒースクリフは、驚くクロエのリアクションに乾いた笑みを浮かべた。
    「だってカインが絶対これだって言うから……うう、思い出すだけで恥ずかしい」
     ことの発端は今朝のこと。晶を起こすために部屋へと向かったヒースクリフは、そこでいつもと違った声かけをした。

    『け、賢者様! 朝食の時間だよー、……です! 起きてください、賢者様……』

     手にクマのぬいぐるみを持ち、腹話術の真似をして晶を起こそうと試みる。
     最近、晶が朝のベッドから出られないと聞いていたヒースクリフとカインは、どうすれば彼が起きられるだろうと話し合い、それならばいつもと違った起こし方をすればいいのではないか、という結論に至った。
     施錠のされていない部屋に入り、窓辺に置いてあるクマのぬいぐるみを手にする。ヒースクリフが部屋を歩き回っているというのに起きる気配を見せない晶に、ふと不安がよぎった。
    (そう言えば、俺、普通に部屋に入ってるけど、賢者様っていつも部屋の鍵閉めてないよな……)
    3036

    related works

    recommended works