Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    あおい🧙‍♂️

    落書きとか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 5

    あおい🧙‍♂️

    ☆quiet follow

    猫が騒ぐ日用にピクシブより再掲分です。(その②)
    設定が…(以下同…)
    よろしくお願いします〜☺️🙏

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra
    #猫騒ぎ1122
    catNoisy1122
    #シノヒス
    thinusThynnus

    『フリージアの憂鬱』

    「えっ、ヒースってば本当にあれをやったの?」
    「あはは……」
     とある晴れた日の午後。談話室にて晶やクロエと談笑していたヒースクリフは、驚くクロエのリアクションに乾いた笑みを浮かべた。
    「だってカインが絶対これだって言うから……うう、思い出すだけで恥ずかしい」
     ことの発端は今朝のこと。晶を起こすために部屋へと向かったヒースクリフは、そこでいつもと違った声かけをした。

    『け、賢者様! 朝食の時間だよー、……です! 起きてください、賢者様……』

     手にクマのぬいぐるみを持ち、腹話術の真似をして晶を起こそうと試みる。
     最近、晶が朝のベッドから出られないと聞いていたヒースクリフとカインは、どうすれば彼が起きられるだろうと話し合い、それならばいつもと違った起こし方をすればいいのではないか、という結論に至った。
     施錠のされていない部屋に入り、窓辺に置いてあるクマのぬいぐるみを手にする。ヒースクリフが部屋を歩き回っているというのに起きる気配を見せない晶に、ふと不安がよぎった。
    (そう言えば、俺、普通に部屋に入ってるけど、賢者様っていつも部屋の鍵閉めてないよな……)
     いくらここが魔法舎とはいえ、施錠をしないのはいささか無用心な気がする。けれど、そういうヒースクリフも施錠をしないまま眠ることがよくあった。それでよく幼馴染のシノに怒られているのだから、人のことをとやかく言えない。
    (えっと、ぬいぐるみをもって――こう、かな?)
    『――そうだ、腹話術なんていいんじゃないか? びっくりして飛び上がりそうだ』
     からからと、人好きのする笑みを浮かべてそう提案したカインを思い出す。ヒースクリフはひとつ深呼吸をすると、思い切って声をかけたのだった。
    (今更だけど、すごく子どもっぽい……!)
     驚く晶の視線に、カッと頬が熱くなる。
     結果として晶を起こすことには成功したが、後に残ったのは達成感でもなんでもなく、耐え難いほどの羞恥だけだった。
    「とてもかわいかったですよ」
    「……賢者様は優しいですね」
    「優しいっていうか、俺的には役得って感じでしたけどね。イケメンに起こしてもらえて、かつかわいい腹話術も見れたのでラッキーでした」
    「俺も見たかった~! ねぇ、今度俺にも腹話術見せてよ」
    「あはは……」
     きらきらと愛らしい笑顔を向けるクロエに曖昧に笑みを返す。
     明日も腹話術で起こしてくださいね、と期待のまなざしを向ける晶に、明日はカインを向かわせようと心ひそかに誓ったヒースクリフだった。
     


     クロエたちと別れて部屋へ戻っていたヒースクリフは、窓の下で動く人影にふと足を止めた。
    「シノ、とムル?」
     開いた窓から下を見下ろすと、穏やかな風が肌を撫でる。
    人影は間違いなくシノとムルの二人だった。
     アメジスト色の髪を揺らしながら、ムルが何かを追いかけている。小鳥だろうか。それを一緒にいるシノが眺めていた。
    「……」
     意外な組み合わせだな、と思うと同時に、なんとも言えない感情がちくりと胸を刺す。この痛みは近ごろ度々ヒースクリフを悩ませていた。それはみっともなくて大人気ない感情――。ヒースクリフは自身の胸に手を当てると「まただ」と小さく呟いた――その時だった。
    「ヒース!」
    「シノ……」
     ヒースクリフの存在に気づいたシノが、名前を呼んだ。 
     大きな赤色の瞳がヒースクリフを映す。気づいてくれた嬉しさと、どこか後ろめたい気持ちがない交ぜになり、そしてそんな心を見透かされてしまいそうで、ヒースクリフは慌てて笑みを浮かべると、ひらひらと手を振った。
    「あれぇ? シノ、小鳥さんそっちに行ったよー!」
    「おい、驚かせたらかわいそうだろう」
    「あ、」
     ムルの声に、シノが視線を戻す。ムルから逃れた小鳥が、シノの肩にぴたりと止まった。
    「シノそのまま止まってて! 小鳥さん捕まえる!」
    「そうっと触れよ」
     ムルのほうがシノよりも大人なはずなのに、シノの態度が大きくて笑ってしまう。ヒースクリフの知らないところで、二人はいつの間に仲良くなったのだろう。賢者の魔法使いとしてこの魔法舎で生活するようになってから、ヒースクリフの知らないシノの交友関係を見せつけられては、もやもやとした感情を抱くようになってしまった。
     内向的で人見知りのヒースクリフと違って、シノは退屈を嫌うため誰かといることが多い。物怖じしない性格ともあってか、あっという間に、魔法舎の面々と交流を広げていく彼に、どこかさびしさと苦しさを覚えてしまう。
    ――そう、これは嫉妬だ。
     東の国の人間は一人でいることを好むのに、去年よりもシノが傍にいるはずなのに、こんなにも苦しくなるなんて。
    我ながら心の狭さに呆れてしまう。
    『ヒースクリフって、ほんと綺麗ですよね。初めて会ったとき、世の中にはこんな綺麗な人がいるんだって、俺見惚れちゃいましたもん。そして性格も優しいし! きっと内面の綺麗さが滲み出てるんでしょうね』
     いつだったか、そう言って晶がヒースクリフを褒めてくれたことがある。けれど、自分にはそう言ってもらう資格がない。こんなにも心が狭いのに、少しも、全然綺麗なんかじゃない。
     今だって「ムルを置いて、自分のもとに来て欲しい」なんて思っているのに――
    「……ス、ヒースクリフ!」
    「えっ、シノっ?」
     先ほどよりも近い声にはっと顔を上げれば正面にシノの顔があった。どうやら箒で飛んできたらしい。驚くヒースクリフの横を抜けて魔法舎に入ると、トン、と跨っていた箒から降りた。
    「シノ、どうして。ムルは……?」
    「あいつは一人で好き勝手やっているからオレがいなくても関係ない。それよりもヒース、どうしたんだ? 様子が変だぞ」
    「……」
     あの距離でヒースクリフの様子がいつもと違うことに気づいてくれたのか。ムルには申し訳ないと思いつつも、胸を覆っていたもやもやが霧散していく。それだけで嬉しくなるなんてと、我ながら単純だとあきれつつ、どこかむずがゆくて目線を下げると、シノの手が頬を撫でた。
    「そんな顔をするな。キスしたくなるだろ」
    「ばっ、――かじゃないのか、もう……」
    「は? バカって言うほうがバカなんだぞ」
     ムッとした顔のシノがヒースクリフの頭を引き寄せると強引に唇を奪った。勢いがあったのは最初だけで、言葉と裏腹に、優しく啄ばんでは離れていく。
     シノの優しさが伝わるようなキスだった。
    「っ、シノ……」
    「ふっ、機嫌は直ったか? ヒース坊ちゃん?」
    「……っ!」
     どこまで見透かされているのだろう。悪戯に目を細めるシノに力なく笑うと、心を仕切りなおすように息を吐いた。
    「ねぇシノ、今からお茶でも飲まない? さっきクロエからお菓子を貰ったんだ」
    ラスティカと街で布地を買ったときに見つけたんだと、お土産としてもらった焼き菓子を見せる。途端にシノの目が、ぱあっと輝いた。
    「! ああ、いいな。早く行こう、ヒース」
     さっきまでの悪戯な顔はどこへやら。顔を綻ばせたシノが、ヒースクリフの手を引いて歩き出す。繋いだ手から、彼の温もりが伝わり、全身がぽかぽかと温かくなるのを感じた。

     部屋に着いたら、焼き菓子と一緒にうんとおいしい紅茶を用意しよう。とびきりのシュガーを添えて。

     そんなことを思いながら、ヒースクリフは彼の手を握り返した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😊😊😍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用再掲です(その③)

    お読みいただきありがとうございました!
    またお話書けたらいいな~~
    『夜のワルツ』

     賢者の魔法使いたち二十一人が魔法舎に住むことが決まり、騒がしい引越しラッシュがようやく落ち着いた日の夜のこと。シノは明かりも人気もない廊下を歩くと、主君であり友人であり、そして恋人でもあるヒースクリフの部屋を訪ねた。
    「ヒース、いるか」
    「わっ、シノ?」
     ノックをせず部屋に入れば、ベッドの上で本を読んでいたヒースクリフが顔をあげる。
     シノはベッドまで歩くと彼の傍に腰を下ろした。
    「どうしたんだ、こんな夜中に」
    「最近どうも寝つきが悪いんだ。だから、今夜はここで寝かせてくれ」
    「えっ、シノが寝付けないなんて珍しいね。具合でも悪いんじゃないのか?」
     シノの言葉に、ヒースクリフが驚きの声を上げた。
     基本的にシノは屋根があり、雨風が凌げればどこででも眠ることができた。そのことをヒースクリフも知っている。
    だから具合が悪いのかと、彼が心配するのも無理はなかった。
    「体調は普通だ。ただ、眠れないのは困るから、さっき南の魔法使いのフィガロに聞いてみた。あいつは医者らしいからな。そうしたら、故郷を感じるものを傍に置くといいと言われた。アミュ……なんとか。忘れたけど」
    「忘れ 2557

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用(その①)ピクシブに載せているものです。
    少し前に書いたものなので設定が違うかもですが…お時間があれば是非~~☺️✨
    『はじまりのうた。』


    雨の音が恋しい。

     ヒースクリフは自室のベッドに横になると頭の中で雨の音を思い浮かべた。
     さあさあと、一定のリズムが心地よく響く。
     今日はいろいろなことがあった。今年の大いなる厄災が終わったばかりだというのに、落ち着く間もなく中央の国の魔法管理省により魔法舎に火が放たれ、応戦していると新しい賢者の魔法使いが現れた。
     先の厄災で失った仲間の変わりに新たに加わった十人の賢者の魔法使い。
     その中に、ヒースクリフのよく知る人物がいた。
    (シノ……)
     青みのかかった黒髪と、気の強さを湛えた赤い瞳の少年。彼はヒースクリフと同じ東の魔法使いだった。ブランシェット家の使用人であり、ヒースクリフの幼馴染。
     大いなる厄災のために召集されたとき以来の再会に、驚きと、喜びと、安堵を感じた。素直に嬉しいと言えればどんなによかったか。それなのに、気持ちと裏腹に、その後の各国の顔合わせでつい口げんかをしてしまったのだから恥ずかしい。
    (賢者様やみんなの前で……原因は間違いなくシノにあるんだけど)
     それからシノとはほとんど言葉を交わさなかった。部屋に戻る前に仲直りすればよかっ 2988

    あおい🧙‍♂️

    DONE猫が騒ぐ日用にピクシブより再掲分です。(その②)
    設定が…(以下同…)
    よろしくお願いします〜☺️🙏
    『フリージアの憂鬱』

    「えっ、ヒースってば本当にあれをやったの?」
    「あはは……」
     とある晴れた日の午後。談話室にて晶やクロエと談笑していたヒースクリフは、驚くクロエのリアクションに乾いた笑みを浮かべた。
    「だってカインが絶対これだって言うから……うう、思い出すだけで恥ずかしい」
     ことの発端は今朝のこと。晶を起こすために部屋へと向かったヒースクリフは、そこでいつもと違った声かけをした。

    『け、賢者様! 朝食の時間だよー、……です! 起きてください、賢者様……』

     手にクマのぬいぐるみを持ち、腹話術の真似をして晶を起こそうと試みる。
     最近、晶が朝のベッドから出られないと聞いていたヒースクリフとカインは、どうすれば彼が起きられるだろうと話し合い、それならばいつもと違った起こし方をすればいいのではないか、という結論に至った。
     施錠のされていない部屋に入り、窓辺に置いてあるクマのぬいぐるみを手にする。ヒースクリフが部屋を歩き回っているというのに起きる気配を見せない晶に、ふと不安がよぎった。
    (そう言えば、俺、普通に部屋に入ってるけど、賢者様っていつも部屋の鍵閉めてないよな……)
    3036

    related works

    recommended works