🌟🎈 タンッと足がアスファルトを蹴り、肉体は軽やかにコンクリートの壁を駆け上がった。時折配管を掴み四肢のバランスを整え、出っ張りを爪先で捉え蹴り上げながらビルの上階へと登る。ワイヤーで吊り上げられているのかと思うほど簡単にやってのけるが、昇降器具どころかクライム道具の一つも持ち合わせていない。
ビル風に煽られて被っていたフードが外れた以外は何事もなくあっさりと屋上へと辿り着く。一息つく暇もなく、男はブルゾンの裾を翻し屋上の縁を蹴り空中へと躍り出た。自由落下する前に向かいのビルへ手が届きまた登り、建物の屋上から更に高いビルへと乗り継ぎ、高度を稼いでいく。
屋上に巨大な電光看板を掲げたビルにまで行けば、その下は人のひしめく繁華街だ。至近距離から照らされる蛍光ピンクに視界を少々焼かれつつ、最後にもう一度力強く跳ぶ。
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