王様の日常 マレウスは写真を撮るのが下手だった。写真が身近なものになったのは、ナイトレイブンカレッジに進学して、ケイトと同級生になったときだった。もともとリリアに進学したばかりのときに通信機としてスマホを渡されていた。スマホが電話以外にもマジカメというアプリケーションを使って世界中の人びとと通信することができるとそのとき初めて知った。
茨の谷では今でこそ市井の間では写真が普及しているが、王族にとって姿を残すといえば肖像画だし、家族の記録は従者や家族内の記憶が頼りになる。権威と秘匿性は切っても切れないもので、特別な存在としての役割を果たすためにも、ドラコニア一族の生活というのは長くヴェールに包まれるものだった。
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