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    マレレオ供養。昔に書いたのを発掘したので

    #マレレオ
    maleLeo

    なんか幼い頃会ってた?みたいなやつ。マレレオ




    煌びやかなシャンデリアが高い天井から吊るされており、眩い光で会場内を照らしている。
    豪華な食事に、それに相応しい格好をした紳士淑女達。
    今宵は、とある王国の貴族による舞踏会が開催されていた。
    女子(おなご)たちは、我先にと王族や貴族の跡取りへと媚びへつらってお気に召されようとされている。指には、細い指が強調される大きな宝石の着いた指輪。首には、細いチェーンで編まれた、小ぶりのネックレス。
    まるで、シンデレラのようにこの一夜だけのために己を着飾り、生涯の勝負に挑む。
    舞踏会へ招待されたマレウスも、求婚される1人であった。
    妖精族の末裔、茨の国の次期国王。魔法士としても世界でトップクラスである。狙われて当たり前だった。
    挨拶などを済ませたマレウスを待ち構えていたのは女達による猛烈なアタックであった。やれ、一緒にダンスを踊ってくれませんか、具合が悪くて部屋へ連れて行ってくれませんか、ワイン飲みませんか、、などなどエトセトラ。
    後でわかったが、この時渡されそうになったワインは媚薬入りだったらしい。そもそも妖精族であるマレウスには並大抵の魔法や薬は効かないけれど。
    何十人も断り、やっと一息つける。今日は、茨の国からは護衛などを除けば一人で来ている。茨の国の代表としてこの場に立っているのだ。国に恥はかかせられない。だから、誘いひとつ断るのにも大変だった。
    マレウスに取り付く島もないと分かれば女達は次のターゲットへと近づく。
    あれは、どこかの国の貴族の息子だったか。心のうちでご愁傷さま、と哀れんだ。
    一息ついて、近くにいた給仕からワインを一杯貰う。自分から手に取ったものなので毒などは入っていないだろう。
    くいっ、と一口飲んで気だるげにグラスを下ろす。まだ舞踏会は何時間もあるのに、最初だけでとても疲労してしまった。
    曲が流れ始め、会場の中央部分が開けていく。そこで何組かの若い男女が楽しげにくるくると舞い踊る。周りの人々はそれを微笑ましげに眺めながら食事に舌鼓を打つ。それをマレウスは遠巻きに見ていた。
    ふと、周りを見るとマレウスと同じように壁側に寄って、一人静かにグラスを傾けている幼子が居た。頭部には、動物の耳がありすぐに獣人だということが分かった。
    マレウスは興味が惹かれるがままにその幼子に近づいた。
    ぴくり、と耳を震わせ自分へ近づく足音に気がついたのか顔をマレウスの方へと向ける。

    「…なにか用ですか。」
    「いや別に。幼子が一人でいるもんだから心配になっただけだ。」
    「…俺にとってこれが普通だから大丈夫ですよ。ご心配どうも。」

    ふん、とそっぽを向いてグラスを傾ける。それがワインとは違ったただのジュースであることにマレウスは気づかない。その幼子が飲んでいるものを、ワインだと思い、幼子の手からグラスを奪う。

    「はっ…!?なに、するんですか。」
    「お前はまだ幼い。その歳でお酒は体に悪いだろう。やめといた方がいい。」
    「…ワインじゃねぇよ……。それただの子供用ジュースなんで返してもらいませんか。」
    「む?そうだったのか。いやお前が本当の事を言っているとは限らないな。少し貰うぞ。」

    マレウスは幼子から奪い取ったグラスを傾けて、その中身を一口飲む。
    幼子が言っているようにそれはただの子供用ジュースだった。その他、体に悪そうなものを入っていないことを確認出来たマレウスはグラスを幼子へ返す。

    「疑ってすまなかった。確かにこれはジュースだな。体に悪いものもはいっていない。」
    「返されても、困るんですけど……」
    「?ああ、人が口つけたものだからか。配慮が足らなかった。すまない、これと同じものを持ってきれくれないか。」

    近くに居た給仕へ新しいジュースを持ってくるように言いつける。ついでに幼子へ返したグラスを回収して給仕へ捨てておくように言っておく。これでいいだろう、と幼子の方へむくと眉間に皺を寄せて不機嫌な顔をした。マレウスにとってはいいことをしたつもりで居たようだが、幼子にとってはこの得体の知れない男から離れられなくなっただけであり、ありがた迷惑であった。

    「?なにか嫌なことでもあったのか?」
    「お前が…いや、なんでもありません。気にせずにいてください。」
    「僕はお前ではない、マレウスだ。マレウス・ドラコニア。」
    「ドラコニア…ああ茨の国の。これは失礼しました、ドラコニア様。」
    「いやいい、気にしてない。お前の名前は?」
    「俺の名前なんて、ドラコニア様が気にするようなものじゃありません。」
    「気にするかしないかは僕が決める。あとその下手くそな敬語は逆に醜いからかやめておけ。」
    「は、、はぁ…レオナ、レオナ・キングスカラーだ。これでいいか?」
    「レオナ、だな。いい名前だ。」

    幼子から名前を聞き出せたことに満足したマレウスはうんうんと頷きながら、幼子の名前を口の中で転がした。
    レオナ、レオナ、レオナ……。
    口に出すのに心地よい名前にマレウスはご機嫌になった。
    距離の遠かった敬語から崩した話し方になって、距離が近くなったように思えてマレウスは、嬉しくなった。

    「レオナは、どうしてここに居るんだ?」
    「お前、キングスカラーと聞いて何もわかんねぇのか…。世間知らずの坊ちゃんなんだなドラコニア様。」
    「マレウス様とはなかなかに聞きなれないな。別に敬わなくてもいい。僕はただの妖精だ。」
    「敬ってるから言ってる訳じゃねぇんだが。はぁ、こんなどこに聞き耳たててる奴がいるか分からねぇところで茨の国の次期国王であるマレウス・ドラコニアを呼び捨てなんざ出来るわけねぇだろ。」

    今の話し方だって周りに聞かれたらヤバいってのに。
    ぴくぴくとレオナの耳は色んな方向へ向き、自分たちの会話が聞かれていないかを探る。こういうときの獣人の聴覚は便利なものだ。
    ふむ、と考え込んだマレウスはレオナの腕を手に取り、どこかへ行こうと足を進める。
    それに吃驚したものの、レオナのなかの危険信号が音を立ててその場に引き止まるために足に力を入れた。

    「おい!どこ行こうとしてんだ!」
    「何を聞いているんだ?誰もいないところに決まっているだろう。」
    「はあ!?」

    少し叫んでしまい、はっとしたレオナは慌てて掴まれていない方の手で口を覆う。そして耳を四方八方へ向けて、目も周りを見渡して先程の自分の声を聞かれていないことがわかると、肩の力を抜いた。
    そして、何も言わずにどこかへ連れていこうとしていたマレウスを左瞼に傷を負った獅子は睨みつける。普通の草食動物や肉食動物でも身が縮こまるほどの威圧だ。

    「俺は夕焼けの草原の第二王子だぞ、次期国王つったって勝手に連れ出していいもんじゃねぇ。」
    「そうだったのか、レオナは第二王子だったのか。」
    「本当に分かってなかったのか…。とにかくだ、連れていこうとするのは辞めておけ。双方の国の関係が悪くなるのも嫌だろう、マレウス様?」
    「1人なのが、普通なのにか?レオナが居なくなったとて、気にするやつは居ないだろう。」

    マレウスとしては、今のパーティの中で視線を集めているのは中央で踊る男女達だ。壁の花となっていたレオナやマレウスが居なくなったとて、それに気づくものは居ないだろう、という意味合いで言ったつもりだったが、レオナには嫌われ者の第二王子が居なくなっても喜ぶヤツがいるだけで、心配してくれる奴なんていない、と聞こえてしまった。
    レオナは歯切りをして、俯いてしまった。レオナはまだ10歳前後のただの少年だ。周りの環境が悪かったため大人になるしか道がなかった、まだ小さな子供だ。親も愛情を注いでくれない、使用人達は邪魔者としてレオナを見てくる。唯一愛情を注いでくれた兄の事さえも信じられなくなり、軽く人間不信になっていた。
    見て見ぬふりをして、心を休ませていたレオナに対してマレウスは、意図せず現実を見せてしまったのだ。誰も、レオナの事を見てくれない現実を。あまつさえ、ユニーク魔法で恐れられて居なくなってしまえばいい、と言葉の刃で傷付けてくる現実を。
    強くあるべきだ、弱みを見せたらそこにつけ込まれる。
    そう生きようとしていても、小さな身体は押さえつけようとしていた感情に正直だった。

    「…………。」

    静かに、ただただ静かに子供特有の大きな瞳から涙が溢れ出てくる。息も乱さず、ポロポロとまろい頬に滑り落ちるだけだった。

    「レオナ?レオナ、どうしたんだ?なぜ泣いている?」
    「…………てめぇに分かるか。」
    「………。」

    ふい、とまたマレウスから顔を背ける。誰にも見られないように、壁へ顔を向けた。
    いきなりレオナが泣き始めてしまってどうしたらいのか分からないマレウスは、オロオロとレオナを見つめることしかできなかった。
    そんなマレウスにすみません、と声をかけられる。振り向いたら先程ジュースを頼んだ給仕がそこに居て、ジュースを届けてくれた事が分かった。
    給仕にありがとう、といいグラスを受け取る。いまだに涙を零しているレオナをこの憎悪やら悪意ならがこもる会場に置いていていいものか、と思ったマレウスは、給仕へとマレウスの護衛への言伝を頼む。

    「すまないが、気分が少し悪い。部屋へ戻っていると僕の護衛へ伝えてくれないだろうか。」
    「はっ、ドラコニア様の護衛へですね。分かりました。」

    言い伝えたのを確認し、マレウスはレオナの手を引いて会場を出ようとする。抵抗しようとしても、既に大人の姿をしているマレウスと子供であるレオナの力の差なんて一目瞭然だ。力任せに引っ張っていき、マレウスのために用意されていた部屋へと向かう。
    今回の舞踏会の会場はホテルで、上の客室は舞踏会参加者の休憩室として利用されている。マレウスにはVIPルームが休憩室として、用意されていた。
    VIPルームは最上階にあるため、エレベーターに乗って最上階へ向かう。もはやレオナは抵抗すらしていなかった。
    最上階へつき、部屋へと入る。VIPルームというだけあってとても広い。備え付けられている座り心地のいいソファへレオナを座らせる。向かいにはマレウスが座った。
    部屋へ行く間と止まらない涙に、レオナが枯れてしまうのではないかと不安になる。向かいと言ってもそこまで距離は遠くない。手を伸ばせば届くくらいの距離だ。涙を拭ってあげようと伸ばしたマレウスの手を、レオナは拒まなかった。拒む気力すら無いのかもしれないが。

    「レオナ、泣いている理由を聞かせてくれ。そんなに泣いてしまうと、干からびてしまう。」
    「はっ、泣いている理由だ…?てめぇが言ったんじゃねぇか。」
    「僕が…?僕の発言にレオナを傷つけるような言葉があったのだろうか。」
    「てめぇ…しらばっくれんのも大概にしろ!!世間知らずの坊ちゃんかと思えば俺の国の事情はしっかり分かってるらしいな…!」

    どうせ、俺に近づいたのも侮辱する為だろう。
    そう、吐き捨てたレオナはマレウスから目を背けた。涙は止まっていた。
    マレウスがレオナに近づいたのは、会場内で一人でいる幼子を不思議に思ってのものだし、レオナの国、夕焼けの草原の事情に関しては何も知らない。

    「僕は、何も知らないが…。」
    「嘘つけ!俺が嫌われ者の第二王子だから、居なくなっても気にかけるやつは居ねぇ、そう言っただろうが!」
    「レオナは嫌われているのか?そうか。」
    「だから、しらばっくれんのも…」
    「それならば、僕が気にかけよう。レオナはまだ守るべき幼子だ。幼子は大人が守らなければいけない。」
    「は…?」

    ぽかん、と、マレウスを見るレオナ。
    マレウスは至極当然なことを言ったものの、レオナの周りにはそういうことを言ってくれる人は誰一人いなかった。兄も愛してくれては居たものの、守ってはくれなかった。誰も、レオナに向けられる悪意からレオナを守ってはくれなかったのだ。
    それを、今日会ったばかりの茨の国の次期国王は軽々と言ってのけた。
    それに力が抜けたのかソファへ深く座り、息を吐いた。

    「お前、本当に…はぁいや、知らないんだな。」
    「何をだ?」
    「いや知らなくてもいい。どうせ後から知ることになる。」
    「そうか。」

    ふぅ、と息を吐くと持ってきていたジュースをグラスを傾けて飲み干す。そして、空になったグラスをあっという間に砂に変えていく。それを見てほうと感心した声を出したマレウスに怪訝そうな顔をする。

    「お前、これを見てもなんとも思わねぇのか?」
    「何を思う必要がある?ああ、けれどレオナは魔力量がなかなかに多いんだな、妖精族でもないのにそれは凄いことだ。」
    「変なやつ………。」

    レオナの耳がぺたりとへたりこみそっぽを向く。レオナが魔法を使ったとて、恐れられることはあるけれど褒められることはなかった。座学でも優秀さを少しでも見せれば、王の座を狙っているのではないか、ファレナ王子を害そうとしているのではないか、と疑われる。褒められても、その裏で何を考えてるのか分からない。レオナを搾取しようとしていることがほとんどだったけれど。
    ただの褒め言葉を聞くのは久しぶりだった。

    「お前、本当不思議な奴だな。」
    「僕はお前と呼ばれるのはあまり好きじゃ無いんだが…」
    「はいはい、マレウス、な。」
    「レオナにそう呼ばれると、少しこそばゆい感じがするな。」
    「はあ?意味わかんねぇ。」
    「レオナ、今いる場所は窮屈か?」
    「なにをいきなり…まあ窮屈かって言われたら窮屈だが……」
    「僕ならその鳥籠から出せてみせる。その力がある。」

    どうだ、僕と着いてくる気はないか。
    そうレオナに問いかける。ただの可哀想な幼子ならばここまでマレウスが気にかけることは無いだろう。マレウスはレオナのことを気に入ってしまったのだ。連れ去ってしまい、傍に置いておきたいと思うほど。情緒が育っていないマレウスにはこの感情がなんなのか、分かっていなかった。
    手を差し伸べたマレウスの手をレオナは遠慮もなしに跳ね除けた。

    「いらねぇ。てめぇの力なんざいらねぇ。俺は俺の力でのし上がって行くんだ。それに、俺は王宮の奴らは嫌いだがあの国を嫌ってるわけじゃねぇんだよ。」
    「そうか…それならば無理強いは出来ないな…。せめて呪いをかけても良いだろうか?」
    「呪い…?それくらいなら、まあいいが……」
    「ありがとう、レオナ。」

    断ったレオナはすんなりと引き下がったマレウスに多少は驚いたものの、そういうものかと割り切る。
    提案を断ったのだから、少しの呪いくらいかけられても大丈夫かと、マレウスの要求に応じる。

    マレウスは、レオナに確かに道行く先に幸がある事を願ったが、平たくいえばこれはマーキングみたいなものだ。
    自身の魔力を相手に。幾年経っても、魔法がかけられたことは残る。いつか、すれ違っても見つけられるように、と。
    妖精の中でも竜は、一度番を見つけたならば、いつまでも一途に思い続ける。
    それをレオナは知らない。





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