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    dreamingMush

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    メイロくん エロなしほのぼの

    「ポール、買い物に行くからついてきてくれ」
    「荷物持ちですか?任せてください」
    ロナルドは力こぶを作って見せると、エプロンのポケットに財布とスマホを突っ込んで、準備万端ですみたいな顔をした。
    「ポール、あの、その恰好で外にでるのはちょっと……」
    お前が着せとんじゃ、と口に出しそうになるのを踏みとどまる。たしかに、ロナルドはもう麻痺していたが、ロナルドが纏うメイド服はかなり扇情的だ。胸筋の谷間はモロ見えだし、少し動くだけでパンチラする。

    「外出用にクラシカルなものをあつらえておいたからこれを着なさい」
    手渡されたのは、シックで丈の長いメイド服。もちろん胸元はきっちりと閉まっている。普段あんな服装だから、少し窮屈だと思ったが、まぁ仕方がない。女装であることには変わりないことに、ロナルドは気が付かなかった。
    「どうですか、ご主人様……?か、かわいい?」
    かわいい?と聞けばかわいいと返してくれるだろう。自分に自信のないロナルドの、精一杯の甘えだった。

    「可愛いよ、そっちもよく似合っている」
    静かに、穏やかに。本心からの誉め言葉だということが、ロナルドにもわかった。照れる、にやけてしまう。にやにやしながらまたもポケットに財布とスマホを突っ込もうとするロナルドに小さなかごバッグを与えて、ドラウスは夜の街へ繰り出した。

    「ドラウスさん、こんばんは」
    「あー!ドラウスだ!」
    「まぁドラウス様、ごきげんよう」
    街の人々、老若男女問わずがドラウスの姿を見かけると声をかけてゆく。人々からの評判は悪くないみたいだ。よっぽど悪さもしていないし、それに紳士的でかっこいい。人間の心を掴むのは簡単だろう。これだけの人心掌握術、やはり危険な存在なのでは?とまんまと心を握られているロナルドは注意深くドラウスを観察した。

    ドラウスは食料品を、ひとつひとつロナルドにこれは好きか、あれは好きかと聞きながら籠に放り込んでいく。
    「こうやって少しずつお前の好みを知れるのが楽しいよ。しかし子供舌だな」
    からあげとか、カレーとか、オムライスとか。ロナルドがねだるのはそんな料理ばかりで、ドラウスは呆れたように、でも愛おしそうに溜息をついた。ふと、親と買い物に来たらこんな感じなのだろうか、とロナルドは思った。なんとなく甘えたくなって、ドラウスに擦り寄る。どうした、とドラウスは優しく微笑んで頭を撫でた。

    そのあと、主にロナルドのための雑貨を買って、帰路につく。途中で美味しそうなケーキ屋さんの前を通る。ロナルドの視線がそちらにいったことに気づくとドラウスは足を止めた。
    「どれがほしいんだい、ポール」
    「えっ、べ、べつに……」
    「遠慮するな、ほら、3つまで買ってやる」
    ロナルドは迷いながらチョコレートと、ショートケーキと、モンブランを選ぶ。ドラウスは手際よくそれを注文すると、ロナルドに持たせた。
    「崩れないように持つんだぞ」
    子ども扱いだ、でも悪い気がしない。ロナルドは両手に荷物を持ったまま、大事そうにケーキの箱を抱えた。

    城に帰って、いそいそと冷蔵庫にしまうと、ショートケーキを一つ取り出してお茶の準備をする。ドラルクが紅茶も淹れてくれて、ロナルドはほくほくだ。ドラウスとドラルクも一緒に席についてくれて、幸せだ。こんなに幸せでいいんだろうか、自分は二人に嘘をついている身なのに……。ロナルドのフォークが止まる。ドラウスはすべてを受容するような笑みを浮かべてこう言った。
    「よく食べて、よく眠って、幸せでいてくれ。ポール」
    ドラルクも横でうんうんと頷いている。ロナルドは少しほっとして、ケーキを食べ進めた。こんな幸せな毎日がつづいてくれればいい、いつしかそんな想いをいだくようになっていたのだった。

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