ルメラに卑猥な絵巻が見つかる話「あっ」
「あ…」
ルメラの手には数冊の本と……秘密裏に買って隠しておいた筈の、私と王の情事が詳らかに描かれた卑猥な絵巻。慌てて彼女の手から絵巻を取り返すと、書斎にはとんでもなく気不味い空気が流れ始めた。
ルメラは耳元まで紅潮させ、目を大きく見開きながら
私を見てくる。しくじった。誰よりも読書好きで純粋な彼女だからこそ、この絵巻は見せたくなかったのに。私が王を抱いている絵なんてこの子は見たくなかっただろう。
「ご…ご主人様…….!これは…」
「ち、違うんだ…!!話すと長くなるが事情はあって……中身は読んだか?」
「……いえ、読んでません」
「…読んだんだな?」
「申し訳ございません。読みました」
お手本のように綺麗な土下座で謝罪してくる。
「いや…頭を上げてくれ。謝罪するべきなのはこちらだ」
「いえ…本棚の中に随分と薄い本があるのが気に掛かってしまい…つい…これは一体何なのでしょうか?」
「君が知るにはまだ早いことだ」
「私にとって知識を得ることは最大の幸福です」
「知らなくていいこともあるんだぞ」
…とは言ったものの、私はあくまでも調査のために購入したこと、そしてこれは婦人達によるただの遊びであり、実際の私達とは関係がないことも説明した。
ルメラ自身も物語を執筆することもあってか、意外とすぐに理解してくれた。
ただ内容が卑猥だっただけに申し訳ないので、私はルメラに金貨一枚を握らせた。
「お詫びにと言ってはなんだが、これで好きな本を買ってくれ」
「そう気を遣っていただかなくても…。ですが、よかった。本を読みに行かせていただいてありがとうございます。早速今から行ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、好きにしなさい」
「はい」
ルメラは一礼した後、目を輝かせながら部屋を出ていった。これで少しでも今の事は忘れてくれたら助かるのだが…。そう願わずにはいられないのだった。
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「いらっしゃい。今日も買いに来たの?」
「はい。…あの、書物の作り方が記されている本は入荷していますか?」
完