三船栞子さんの手紙歩夢さんへ
ご卒業おめでとうございます。長い間、私が胸に秘めてきた想いを、今こうして手紙に綴ります。
ずっと心の中で迷っていました。この秘密をあなたに伝えるべきか、それともこのまま黙っていようかと。でも、かつて「素直でもっといたい」とみなさんの前で歌った自分を思い出した時、気付きました。自分の気持ちを偽ることは、自分自身に嘘をつくことなのだと。だから話します。嘘偽りのない、私の本当の気持ちを。
歩夢さん、ずっとあなたのことが大好きでした
あなたの肩が触れるだけでその目を見つめられなくなり、指が触れるだけで何もできなくなってしまうほどに、あなたの一言に思いを巡らせ、浮き足立つ自分がいました。
優しいあなたが大好きでした。
あなたの優しさに触れるたび、心が温かくなるのを感じました。周囲の人々に対して細やかな気配りができるあなたの姿に、私は何度も助けられ、そして救われました。
一生懸命なあなたが大好きでした。
スクールアイドルとして、何事にも一生懸命に取り組む歩夢さんの姿は、私にとって憧れであり、目標そのものでした。練習中のあなたの真剣な眼差しを見るたびに、私も頑張ろうと思えました。
芯の強いあなたが大好きでした。
歩夢さんの明るさと前向きな姿勢は、私にとっての光でした。どんな困難にも立ち向かい、周囲に元気を与えるあなたの魅力に何度も引き寄せられました。あなたの笑顔を見るだけで、いつも勇気をもらえました。
歩夢さんと一緒に過ごす時間は、どれも私にとってかけがえのないものでした。お互いを認め合い高めていく、同好会の皆さんとの関わり方や、その大切さを教えてくれたのは、あなたです。あなたに出会えたことで、私は変わることができました。本当に感謝しています。
歩夢さん、あなたの目に映る私はどのように映っていましたか?
侑さんがいる手前こんなことを言うと、あなたを困らせるかもしれないと分かっています。最後まで身勝手な人間でごめんなさい。でも、ほんの僅かでいいのです。あなたと共に過ごした時間が、私にとってかけがえのないものであったことを認めてほしかった。言葉にして伝えたかった。あなたという人を想い続けていた人間がいたことを、ただ、知ってほしかった。それだけなんです。だから、それ以上は何も望みません。
愛しさを手放すことは、ただ見送るよりも苦しいものなのだと、この手紙を書いていて初めて気づきました。ですが、あなたの目に映る最後の私が幸せに笑う私なら、これほど嬉しいことはありません。
侑さんとお幸せに。あなたの幸せを心から願っています。
三船栞子