銀高ss④あ、高杉。ちょ無視?なんで?あとその服どした?着物なんか持ってたっけ。
まあるい頭と自分より小柄な背丈。目の前にいるのは確かに自分の恋人の高杉のはずだ。なのに、呼びかけても俯くままで一向にこっちを見ようとしない。服装も見知った学ランじゃなくて、なんか派手目な柄の着物だし。よく知ってる人間のはずなのに、なんか、違和感。
しかし高杉くんの着物姿はまだ見たことがない。ほっそり締まった頸とかチラ見えする手首とか、ぜひ見たいなあ。恋人の事となるとどこまでも欲の尽きない自分にやや呆れつつ、ねえ、もっと見せてとと反応を示さない高杉に手を伸ばした。
「触るな。」
ようやく見えた瞳は、見たことのない色をしていた。
途端に、足元が崩れ落ちる感覚。
たかすぎ、と叫んだ声は届いただろうか。
「はっ!!」
ドッ、ドッと音を立てる心臓。勢いよく布団から飛び起きていた。俺、落っこちて、それで。
恐る恐る隣を見やれば、穏やかな高杉の横顔。よかった、さっきのは夢だ。
ほうと息をついてぼんやり自室を眺める。夢の中にいたのは、知らない高杉だった。憎しみと、あとなんだろう。悲しみ?全部がぐちゃぐちゃになったような顔をしていた気がする。
ん、と短く寝息を立てた高杉。この子は、あんな顔をするのだろうか。
ただの夢のこと考えても仕方ないな、と頭を振って、もう一度布団へ潜り込む。
「……ん…ぱち…」
高杉が小さな声で俺の名前を呼んだ。いつもは澄ましているのに寝顔は相応に幼くて、愛しさが込み上げる。ぜってー誰にも見せるもんか。
最初は同じ布団で寝ることに乗り気じゃなかったのに、今では先に布団に入って待っていてくれてたりもする。そういうとこ、すき。
ややぬるくなった布団に再び寝転び、大切な子を抱きしめた。
「……つぎ、パチンコで金溶かしたら、ビンタする…」
「どんな夢?」
夢の中でも俺は碌でもない奴らしいし、それに対する高杉の扱いも変わらないらしい。
あれ、俺、高杉と会ってからパチンコ行ったこと、あったっけ…?
浮かんだ疑問は、心地よい温度に包まれてぼんやりとした意識の中に溶けていった。