銀高ss「銀時……今夜いいこと、したい」
「はえ……!?」
家に帰ったら、恋人からのかわいいお誘いが待っていました。
【夜のおたのしみ】
「た、高杉さん、イイコトって…」
「風呂上がり、したい」
夢?俺は疲れすぎて夢でも見ているのか。今日は大工仕事にペット探しにで街中奔走したからくたくただ。直前まで夕飯食べてバタンキューの気分だったのが、嫁(まだ)の一言でもう気が変わった。
頑張らせていただきます。
高杉から夜の事を誘ってくるのは珍しい。いつも誘えば流されてくれるから、それを嫌じゃないんだなのサインにしている。したくない日は顔面パンチが飛んでくるし。直前までツンの日なのかデレの日なのかは分からない博打を日々繰り広げているわけだ。
でもまさか、高杉も積極的にしたい日があったとは。
心臓を高鳴らせて、高杉が用意した夕飯を食べる。今日は牡蠣フライだって。もうこんなの搾り取る気満々じゃん。どうしちゃったの一体。
何かあったのだろうかと、日々の記憶を遡る。
一つ思い当たることがあるとすれば、ヒート。薬で大分穏やかではあるが、周期的にやってくる。俺からすればボーナスタイム。もうすぐだとは思うけど、今日はあのあまい匂いはしなかった。毎朝こっそり匂いチェックしてるし。変態?いやこれ健康管理だから。
薬を変えたとかそういう話もない。昔は新薬を試したら体に合わなくてもう色々と大爆発したこともあったが、そういう感じでもなさそうだ。
まあ高杉も人間だし、ムラつく日くらいあるかと納得して、張り切って夜の栄養源を摂取した。
食後の皿洗いを申し出てると、高杉は先に風呂へ行ってしまった。毎日ではないが、入浴は一緒のことが多い。したいなら洗いっこすればいいのになあ。なんだろ、ムラムラしてんのが恥ずかしいのかな。ヒートの時あんなに乱れてるんだから気にしなくていいのに。なんて都合のいい事を考えながら、手元を泡立てた。
しばらくして、ほんのり頬を赤くした風呂上がりの高杉がリビングへと戻ってきた。次、と促されたのでテレビを消して腰を上げる。
「待ってるからな」
すれ違い様に言った高杉の声はどこか上擦っていて。ノリノリじゃんと期待を更に膨らませながら、風呂場へと向かったのだった。
「で、何これ」
「だから、イイコトするって言っただろ」
シャワーで汗を流し、やる気満々になりそうな愚息を精神で宥めながらウッキウキで寝室へ飛び込んだ。そしたらなんと、ベッドはもぬけの空。大パニックに陥った俺はトイレやら押入れやら家中探して、漸くリビングで夜のイイコトに誘ってくれた高杉を発見。声にならない感情で震える俺を見て、当の本人は「何してんだ?」とハテナマークを浮かべていた。いや俺の台詞です。
「用意した。後は作るだけだ」
「あの、何を作るんですか…?俺たちはベッドで育もうとしてたんじゃあないんですか…?」
「お前さっきから何言ってんだ?早く作れ」
ほら、と手渡されたのは牛乳。牛乳?これで何をしろと。
「夜中の甘い物。お前が言ったんだろ」
「そうでしたっけ……」
そんな話したか?全く記憶がない。さっき慌てまくったし、余計に記憶が飛んでいるのかもしれない。
「この前行ったカフェでお前が飲んでたやつ。」
「あ、あー!」
なんか思い出してきた。この前デートで寄ったカフェ。高杉はコーヒーを頼んで、俺はココア。生クリームたっぷり乗ってて、チョコソースがかかってて。
「こういうの夜中に飲んだらもっとうまいよなあ。」
「太るぞ。」
「分かってねえな。夜中敢えてカロリー高いもん食うのがイイんだよ。満足感と背徳感。サイコーだぞ。」
「……」
なんて、会話した。確かにした。
「生クリーム買ってきた。チョコソースも。」
わくわく。なんて効果音が高杉から出ている。なんなら花もバックに飛んでいる。
「早く作れ」
「えっ俺が作んの」
さっさとしろと目で訴えられて、渋々牛乳をグラスへ注いだ。
なんでこんな事に。言い方が紛らわしすぎるだろ。イイコトなんて、イイコトに決まってるだろ、絶対。イジイジしながらココアを作って、生クリームを搾り、チョコソースをかけて。
「出来ました……」
「!」
目ェ輝かせちゃってまあ。
ベッドでイイコトは出来なかったけれど、一口目を飲んだ高杉の顔は、花が綻ぶようだったから。まあこれはこれでいいかと、自分の分に口をつけた。
翌日、目を覚ましたらそれはもう、あまい誘惑の香りが部屋に充満していた。腕の中の本人も怠く、苦しそうで。ようやく甘い時間が過ごせる。昨日の分もぶつけてやる気で、かわいい顔に口付けた。
そういえば昨日のアレ、よく考えたら前も似たような事あったな。夜中にアイス3個も食べまくってた。ヒートの前って、食欲増すのかも。
おしまい。