銀高ss銀時の所の活発な娘は、最近手相というものに興味津々らしい。会う人の手を見ては占ってあげると満面の笑みだ。それは俺も対象外ではないらしく。銀時の忘れ物を届けに(仕方なく)万事屋を訪れ、さっさと帰ろうとした所でしっかり捕まってしまったのだった。
渋々差し出した手のひらを白い指がするするとなぞっていく。ここはナントカ線だからどうのと丁寧に教えてくれるが、生憎占いを信じるかと言われれば否だ。それに手相なんて、こんなあちこち傷のある手でははっきりと分かるまい。だがしかし、にっこりと太陽の様に笑う少女を無下にすることもできず、そうかいとただ返事をしたのだった。
*
「お前、神楽に手相見てもらったんだって?」
「ああ」
夕飯時。銀時と向かい合って座り、さくさくとエビフライを齧りながら返事をした。
「どうだったよ」
「さあ。あんま聞いてなかった」
「ふうん」
そんなに興味なさそうな返事。銀時も占いを真剣に信じるタチではないのだろう。まあ擦れた大人なんてこんなもんだと思った時。ふと、あの少女に言われた言葉を思い出した。
「……結婚線がどうとか言ってたな」
「ぶっ」
「オイ何してんだ汚ねえ」
突如銀時が吹き出した。口から飛んだ水が机を濡らして、そのままは嫌なので近くにあった布巾でさっと拭う。
「ゲホッ、いやなに急に結婚しようなんて言い出して」
「言ってねェよ。結婚線が一本で濃いからどうのって言ってたんだよ」
「肝心なとこ聞いてねえじゃねか」
「信じてねえからな」
じと、と銀時の目がこちらを見る。何か言いたそうだ。そんな目で見られても、覚えてないものは覚えていないのだ。
「見して」
「何を」
「手」
「なんでだよ」
「俺も、手相占えんだよ。神楽に教えてもらった」
なんでお前にまでと手を出し渋る俺に焦れたのか、いいからと半ば無理矢理手を引かれてしまう。手のひらを、銀時の指がなぞっていく。
「おい、くすぐったい」
「傷だらけな手」
お前だってそうだろ、と言おうとして、言えなかった。銀時の瞳が随分と優しそうに細められている。皺を、傷を一つ一つ辿るその指の動きも、まるでその理由を知ろうとするかの様に穏やかだ。
「俺の知らない、お前が沢山だ」
銀時の指が、手のひらから指間へと至り、最後にきゅっと絡められる。もう離さないとつよく言われた気がして、上等だと返す様に握り返した。
「手相、どうだったよ」
「運命の人とウルトラハッピーエンドだとよ」
「んだそれ」