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    hese_5442

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    POIPOI 28

    hese_5442

    MEMO中学時代ますとど。
    轟大愚は真澄にとって降って湧いた災難だった。
    第一印象は、生理的に無理な人種。手塩にかけて育てられたのが一目でわかる洗練された身なり。中学生とは思えない恵体に、豪勢でバランスのいい顔だち。なのに、何がそんなにつまらないのかツンとした澄まし面を崩そうとしない。典型的な、育ちに胡坐をかいた傲慢なお坊ちゃん。隣に座ってあいさつでもされたらと思ったらぞっとしたが、幸い彼の席は声掛けしなくても不自然でないくらいには離れていた。そういうわけで、しばらくは真澄にとって平穏な日々が続いた。
    真っ黒な学ランの中ひと際映えるネクタイと色の薄いスラックス。轟はどこにいても目立って、耳を塞いでいても噂が入ってくるくらい注目の的だった。無責任な噂の九割はデタラメだろう、と真澄は思う。もし噂がすべて本当なら、奴は中一で水泳で全国優勝を果たし、中二でテニスと体操とフィギュアスケートを渡り歩き、中三の春には柔道枠で高校から推薦が来ていたことになる。実に下らない。転入生にファンタジーはつきものだろうが、あいにくそんなものに浮ついていられるほど自分は暇ではない。今にして思えばそんな風に言い聞かせている時点で自分は轟に興味津々だったのだろう。むしろ眼中に入れてないのは轟の方で、一年足らずでお別れするモブのうちの一人、きっとその程度にしか認識されていなかった。
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