薔薇黒_君の心の隣に居たい『……むにゃ…』
『お、起きたか』
ざあざあと外で雨が降り頻る音がする。
どうせ外に出られやしない、それならと思って、俺は教室に残ってた。
案の定、隣の席の──有栖川千紘の瞼が開く。
寝起きだからか薔薇色の瞳は何処かまだ眠たげで、目を擦りながら上半身を起こして辺りを見渡した。
『……ふわくん…?あれ…いま…』
『給食と掃除終わって、五時間目が近ぇかな。…なあ、最近ずっとそんなだけど大丈夫か?』
『ふえ…?……うん、だいじょぶ…たぶん、ね…』
『お前の大丈夫はあんまアテになんねーっつぅの』
『んへへ…』
千紘はへにゃ、と緩い笑みを浮かべて、ゆるゆると五時間目の支度を始めた。
──この時はまだアイツが過眠症を患った事を知らなかったけど、俺がその話を知ったのは、学年が上がってクラスが離れた後だった。
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