「珍しいね、聖人が人混みに行きたいなんて」
普段は静かな暗闇にたゆたう海も、今日は浮かれた喧騒の光に煌々と照らし出されていた。どこからともなく聞こえてくる祭り囃子を不思議に懐かしく感じながら、シアターベルの三人で肩を並べて歩く。
「人混みに来たいんじゃなくて花火が見たかったんだ」
まあゆっくりする方が好きだけどさ、苦笑混じりにぼやきながらぼんに早く早くと手を引かれる聖人は随分と楽しそうだ。
列をなす出店をはしゃいだ様子で覗いていくぼんに、お腹空いてるの?と問えばこういうのは別腹じゃん!と元気の良い返事が返ってくる。
放課後三人でずっと踊っていて、その後食堂で空腹に飽かして十分腹くちくなるまで食べてきた筈なのだが、いやはや高校生の食欲とは恐ろしい。
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