きっと槍が降る(付き合っているガマケー)
どんよりと曇った空。吹き抜ける生ぬるい風。いつにも増して元気に跳ねる寝癖——梅雨の最盛期である。大ガマの邸宅の居間から眺める庭には、ざあざあと音を立てて雨が降り続いている。居間に集まる妖怪たちの談笑すらかき消すほどの降り方だ。ケータは恨めしさを募らせた。「そんなに睨んだって止まねえよ」と隣に座る大ガマが揶揄うように言った。
「……せっかくのデートだったのに」
「オレもたしかに残念だけどよ、また今度行けばいいだろ? 来週ぐらいには梅雨も明けるだろうからよ、ふたりでプールに行こう。揃いの水着にしてさ。きっと楽しいぜ」
唇を尖らせる恋人を元気付けるように大ガマが言葉を重ねる。それでも尚ケータの気分が晴れることはなかった。
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