おやすみなさい、それから 目の前の男が倒れた瞬間、咄嗟に動けたのはウルフウッドだけだった。重力に従って床に叩きつけられた身体。それを慌てて抱え起こす。布越しでも分かるほど体温が低く、呼吸も浅い。ぐったりとした身体からは生気が感じられず、今にも死にそうだ、というのが、正直な印象だった。
その後、ロベルトとメリルは医務室を探しに外へと出ていった。死体のように冷たい身体を抱きかかえたまま、ウルフウッドは小さく息を吐いた。無機質なプラントルームに、機械のモーター音と、呼吸の音が響いている。
――ここ数時間に起きたことを思い返すと、どうにかなりそうだった。
紙のように白くなってしまったヴァッシュの顔を見ながら、ウルフウッドは息を吐き、そして吸う。努めてゆっくりと呼吸を繰り返したが、殺気立つ自分を宥めようにも、思考がそれを許さなかった。目にした光景が頭の中を巡り続けている。
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