Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    真央りんか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 41

    真央りんか

    ☆quiet follow

    ノスクラ。髭なしノスとキス

    今日何度目になるかわからない、クラージィからのまじまじとした視線を受けて、「もういいだろう」とノースディンは軽く目を逸らした。だがクラージィは目を合わせていたわけではなく口元を見ていたので、ノースディンの反応を気にしていない。変わらぬ視線を感じる。
    「もしわたしが直毛で現れたら、お前はずっと気にするだろう。それと同じようなものだ」
    それを言われたらノースディンは相手の態度を拒絶できない。

    今日のノースディンには、口髭がなかった。

    稀に思い出したように、髭のない顔がどうなのかと雑談で出されてはいた。それをこちらもふと思い出した折、ほんの気まぐれで髭を落として来訪を迎えてみたのだが、当然というか、彼の視線はノースディンの顔にずっと釘付けだった。

    ずっと見られ続けているものの、最初の驚きは消えてきた。さすがにそろそろ落ち着いてきたかと思われた頃、クラージィがそれまでになくそわっとした様子を見せた。
    「…キスをしても?」
    丁重に許可を取ろうとしてくる。
    いつか、髭なしのキスを教えると言ったことは記憶にあっただろうか。
    「もちろん歓迎だ」
    ノースディンからは動かず待ち構えると、クラージィが身を寄せ、顔を寄せ、一拍ためらってから唇を重ねてきた。
    ただ重ねるだけのキス。
    数秒してから、クラージィがゆっくり離れてゆく。難しげな複雑な表情をしていた。
    「やはり、普段あるものがないと、妙な感じだ」
    妙と言われようと、ノースディンは急速に機嫌がよくなるのを感じていた。
    滅多にないクラージィからのキスには癖がある。
    初めのうちは、勢いのまま正面からきてうっかり髭を食むこともあった。それを避けるためだろう。僅かに下からきて、上にずれるように重ねてくる。
    今もだ。
    今日は髭がないから必要ないのに、無意識に動作が染みついている。ノースディンに合わせて身についた癖だ。
    ノースディンはクラージィの頬に手を伸ばし、そっと指の背で撫でる。

    もう一つ気付いたことがあった。
    髭が触れて伝えてくる感触がない分、欲張って深く求めたくなる。もしゃっと後頭部に手を回して促し、意図を悟ったクラージィが応える。
    今度はノースディンの欲のまま少し深めに貪ってから解放すれば、頬を紅潮させて、先程よりも迷いなく難しい顔をしたクラージィがいた。そして口元をもぞつかせてから、生真面目な口調で言う。
    「妙ではあるが、たまにならいいと思う」
    沈黙が漂った。顔に反応がやってくるのを自覚してノースディンはそっぽを向く。
    「…ノースディン?」
    「見ないでくれ」
    「顔が赤いな。大丈夫か」
    「言うな」
    またしても見られている気配のあと、クラージィの空気が緩んだ。
    「やはり、たまにならいいと思う」
    ノースディンは眉間にしわを寄せて目線だけ返す。
    「気に入ってもらえて何よりだ」
    そのまましばし見つめあい、互いに軽く笑っていつもとは違う三度目のキスを交わした。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🌠🌠😍😍💖🌠💖❤👏💖💘💘💘💘💘💘💯💯💯💯🌠🌠😊☺🌠
    Let's send reactions!
    Replies from the creator