夜「……」
こんなことを言うとナルシストだなんだとバカにされそうだが、こうやって眠って落ち着いている顔を見ると、同じ顔だとしても、綺麗だなと思う。
(寝てんのに眉間にシワよってら)
ふっと吐息をもらして、愛しい弟の眉間を親指で優しくさする。ゆるりと眉間の力が弱まり、穏やかな寝顔に変わる。すうすうと寝息を立てる様はまるで赤子のようで可愛らしい。いつもの冷静で変化の少ない表情を見慣れているからこそ、新鮮さを感じる。
(こうやって無防備に、2人で一緒に眠ったのは久しぶりだな……)
戦いと訓練ばかりの毎日だった。あの頃とは違い、魔物の脅威に怯えることもない、同族たちの諍いを目にし、疲れと切なさを覚えることもないこの天星郷で、弟と子どものようにはしゃいで、疲れて、同じベッドで泥のように眠った。それなりに体躯の良い男2人で寝転がっているからベッドが狭い。けれど、弟と穏やかに2人きりで居られていると思うとそんな不快感はどうでも良かった。
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