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    かとうあんこ

    赤安だいすき

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    かとうあんこ

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    付き合ってない赤安がナイトプールに行くはなし。

    レンタル彼氏   降谷の恩返し

    「あなたに恩返しがしたい」
     降谷がそう言ってきたのは、例の組織が壊滅して一ヶ月が経った頃だった。
    倉庫内でジンたちに捕らえられていたバーボンを救出したことはあったが、赤井としては当然のことをしたまでだ。恩に感じることはないと言っても、降谷は納得できない様子だった。
    「あなたが逃がしてくれなかったら、今の僕はいなかったかもしれない」
    「だとしたら、組織壊滅も叶わなかっただろう」
     降谷の実力を赤井は認めている。そんな彼を赤井が助けたのは、長い目で見れば赤井自身のためでもあった。暗にそう伝えると、照れくさいのか、降谷は小さく唇を突き出した。
    「……僕に恩返しされたくないのか、FBI」
    「…………されたい」
     こうして、赤井は降谷に恩返しされることとなったのだった。

    「まずは身の回りのお世話をさせていただきます!」
     そう言って、降谷は赤井が居候している工藤邸に突然やってきた。ちょうど、工藤親子は出掛けていたからまあいいかと家に上げると、降谷は白いエプロンを身に着けだした。
    「変わった形のエプロンだな?」
    「割烹着っていうんですよ」
     降谷は腕まくりをすると、赤井が寝起きしている部屋の掃除を始めた。その手際のいいことと言ったら。ひと様の部屋を借りているのだから汚くしているつもりはなかったが、見る見るうちに部屋がピカピカになっていくのがわかる。降谷はマッチ棒みたいな名前の掃除用具で細かい汚れも落としていった。
    「どうですか!」
    「すごいな」
     正直な感想を漏らすと、降谷は自信ありげに胸を張った。
    「綺麗すぎてここに暮らすのが勿体ないぐらいだ」
    「そう言うと思いました!」
     降谷は一度外に出ると、真新しいキャリーケースを持って戻ってきた。そこにどんどん赤井の私物を詰めていくではないか。
    「ふ、降谷くん?」
     赤井ははっとした。恩返しという言葉を真に受けていたが、元々は降谷は赤井のことを殺したいほど憎んでいた。赤井が直接言われたわけではないが、日本から出て行けと言っていたと聞いたこともある。このまま自分は強制送還されるのかと身構えた赤井に、降谷はにっこりと笑顔を浮かべた。
    「さあ、僕の家に行きましょう!」
    「は?」
     赤井は自分の荷物を追いかけるように降谷の後を追い、気が付くと彼の車に乗り込んでいた。
    「どういうことだ?」
    「これからは僕の家で生活してください。そうしたら、あなたはもう洗濯も掃除も料理もしなくていいですから!」
    「い、いや、さすがにそこまでしてもらうわけには……」
     赤井がたじろぐと、降谷は最後のカードを配るカジノのディーラーのような顔をしてこう言った。
    「僕、犬飼ってるんです。すごくかわいくて賢い子です。見たくないですか?」
    「…………見たい」

     降谷の部屋に上がった赤井を見て、最初は警戒していたハロだったが、降谷がこの人は僕の大切なお客さんだよ、と教えると、少しずつ距離を縮めてきて、お気に入りのボールを赤井に触らせてくれるようになった。飼い主の欲目なしに、本当に賢い子だった。
    「いいな」
    「可愛いでしょう?」
    「ハロくんのことじゃなくて。いや、ハロくんはいい子だが。君が俺のことを大切なお客だと言ってくれたことがいいなと思ってな」
    「なんだ、そんなこと!」
     降谷はそう言うと、冷蔵庫の横に掛けてあったエプロン(今度は赤井もよく知っているタイプの)を身に着けた。
    「もっとお客さん気分になってもらいますからね!」
     降谷は台所で料理を始めた。赤井は手伝いを申し出たが、ハロと遊んでるように言われてしまった。
    「ご飯できたから手を洗ってきてください!」
     そんな風に言われたのは何歳の頃以来だろう。赤井はハロに先導されながら、降谷の部屋の洗面所に行って手を洗った。
     元の部屋に戻ると、さっきまで何もなかったローテーブルにいくつもの料理が並べられていた。
    「ホォ……すごいな……」
     メインはローストビーフだった。付け合わせがマッシュポテトではなく、チップスになっていたから、赤井の好みを誰かから聞き取りしたのかもしれない。薄い黄色の茶わん蒸しからはだしの香りのする湯気が立っている。サラダには色とりどりの野菜が使われていて、赤井の普段の食生活も降谷は把握しているようだ。
    「さあ、食べましょう!」
     食事の間、降谷はよく食べてよく話した。それにつられて、赤井も普段よりよく食べた。
    「こんなに食べたのは久しぶりだよ」
    「お口に合いましたか?」
    「あぁ。どれもおいしかったよ」
     ふふん、と降谷は機嫌よく鼻で笑うと、空になった皿を運び始めた。
    「皿洗いぐらいさせてくれ」
    「言ったでしょう?あなたはお客さんだって。お風呂入っちゃってください!今日は草津の湯ですよ~」
     赤井は再びハロに付き添われてバスルームへと向かった。服を脱いでシャワーを浴びてから、浴槽の蓋を開けると緑色の湯が張られているのが見えた。草津の湯とやらはこんな色をしているのだろうか?
     ちゃぽんと湯につかると何とも言えない気分になった。職業病の一種なのかもしれない。ここまで歓待されていると違和感を覚えてしまう。何か裏があるんじゃないかと思ってしまった自分を赤井は自嘲した。
    「恩返しと言っていたか」
     まるで日本昔話のようだ。たしか、機織りをしていたところを見られた鶴は姿を消してしまったと記憶しているが、それならば相手に気付かれるようなヘマをしなければいい話だ。
     赤井は湯から上がるとシャワーを捻った。そのままにして、手早く体を拭く。幸いなことに、赤井を見張るようについて歩いていたハロは脱衣所からいなくなっていた。気配を消して赤井は降谷の様子を伺った。
     シャッシャッシャ……
     聞こえてきたのは刃物を研ぐ音だった。
     暗がりで一心不乱に包丁を研いでいる降谷の背中は『鶴の恩返し』よりも『山姥』というタイトルが似合うように見えた。
     降谷は自分の寝首をかこうとしているのか。手と一緒に何やら口も動いている。赤井はじっと耳を澄ませた。
    「赤井が僕を好きになりますように……赤井が僕を好きになりますように……」
     まるで流れ星に願いを託すような声だった。
     赤井はハッとして、再び浴室に戻ると草津の湯に浸かった。彼が俺に好意を抱いてる……?俄には信じられずポカンとしていると、浴室の外から降谷の声がした。
    「赤井~~湯加減どうですか~~~?」
    「あ、あぁ……すごくいいよ」
     赤井がそう応えると、降谷は嬉しそうに「そうでしょう!」と言った。それを聞いた赤井の耳が急に熱くなる。
    「……君には本当に……かなわないよ」



       赤井の恩返し

     願いはついに叶わなかった。
     片思いの相手である赤井を自分の家に、ちょっと強引に住まわせたのは二週間前のこと。衣食住のほとんどの世話を焼いて、自分がいかに赤井の役に立つかをアピールした。そうして自分のことを好きにならせようという魂胆だったが、赤井の気持ちが変わる前に彼に帰国命令が出てしまったのだ。
     赤井から「大事な話がある」と言われたときは、ついに落ちたかと思ってしまったから、降谷の落胆は余計に大きかった。
    「そう……ですか……」
    「あぁ。今まで世話になったな」
    「いえ……僕が言い出したことですから……」
     短い間だったが、赤井との生活は楽しかった。降谷が何かすれば「すごいな」と褒めてくれたし、一緒にホラー映画を見たときは肩を抱いてくれた。朝、目覚めの悪い赤井をハロと一緒に起こしにいくのは、なんだか新婚のようでこそばゆくさえあった。
     そう、何も残らなかったわけではない。最後の思い出が作れたと思えばいいじゃないか……。
    「そこで、俺から提案なんだが」
    「提案?」
    「ああ。今度は俺に恩返しをさせてくれないか?」
    「えっ、いや、僕、あなたになにもしてませんよ!?」
    「俺がしたいんだ。わがままだと思って、受け入れてくれないか?」
     赤井は首を傾げて降谷を見つめた。コイツはプロだと降谷の直感が告げていた。相手のタイプによって頼み方を変える頼みごとのプロだと。
    「そ、そこまで言うなら……まあ、いいですけど?」
    「ありがとう」
     一体何をしてくれるのだろう。夕飯を作ってくれるというなら、メニューを聞いて買い出しは自分が行きたい。前に赤井はレタスを食べながら「日本のキャベツはうまいな」と言っていたからちょっと任せられない。それともハロの散歩だろうか。前にも行ってくれたことがあったが、降谷のランニングに慣れているハロは赤井にも十キロランを要求したらしく、かなり驚かせてしまった。
     降谷が赤井の恩返しの内容を想像しながら、洗面台で歯を磨いていると赤井がやってきた。好きな人に葉を磨いてるところを見られると恥ずかしくなってしまうのはなぜだろう。別に赤井とはキスをする間柄というわけじゃないのに。
    「これを」
    「ふへ?」
     赤井から渡されたのは降谷のスマホだった。見ると赤井からメールが届いている。開けということだろう。
     歯ブラシ片手にメールを開いた降谷は危うく泡を吹きだしそうになってしまった。
    『レンタル彼氏のご指名、ありがとうございます。赤井です。』
     一行目からぶっ飛んでいる。指名?してないしてない。できたならしたけど、FBIにそういうシステムはなかったはずだ。ていうか、レンタル彼氏って?落ち着いて続きを読むために降谷はうがいをして歯ブラシを置いた。
    『降谷さまのご希望に添えるデートをできればと思っております。つきましては、以下のチェックリストにご回答いただけますよう、宜しくお願い致します。』
     やけに手慣れた文面だ。思わずジロりと睨むと赤井は肩をすくめた。
    「君の日本で副業はしてないよ」
    「本当かなぁ」
    「本当だよ、零……」
     赤井は長い腕で降谷を抱きよせた。
    「ちょ、ちょっと……!」
     顔が近い!赤井から顔を反らすために横を向くと、洗面所の鏡の中には真赤な顔をした自分が赤井に抱かれていた。な、なんて、破廉恥な!!
     赤井を引きはがして、台所に行った降谷はコップに麦茶を入れて一気飲みした。
     赤井からのメールはかなり長く詳細だった。ボディタッチの蘭だけでも、ハグは、キスは、手を繋いで歩くのは、とかなり細かく指定できるようになっている。デートの行き先はいくつかの候補の他に降谷が希望を書き込むことができる欄もあった。面白かったのは、金銭の欄だ。金を払いたいと、払わせたいが選べるのだ。これには思わず降谷は噴き出してしまった。
    「ふはっ」
    「何か気に入ったところがあったか?」
    「いや、あなた僕のことよくわかってるなって思って」
    「ん?あぁ、その欄か。できれば俺が全部支払いたいが、君、借りを作るのは嫌いだろ?」
    「はい。特に、すぐにいなくなってしまう男にはね」
     そう、赤井はいなくなってしまうのだ。こんなチャンス二度とないだろう。
     降谷は頭をフル回転させて『レンタル彼氏・赤井』のオーダー票を完成させたのだった。

     デートの待ち合わせは、夜の9時。ホテルの屋上にあるナイトプールは、平日だということもあり、大人のカップルの姿がチラホラある程度だった。
    「お待たせ」
     赤井は黒いハーフパンツタイプの水着に青いシャツを羽織って現れた。いつものニット帽はない。
    「ふふっ」
    「どこか変かな?」
    「ううん、ニット帽被ってきたらどうしようかと思ってたから、ちょっとホッとしただけです」
    「TPOはわきまえてるつもりだよ」
     赤井はそう言うと、降谷の頬にチュッとキスをした。オーダー票に唇以外のキスはありと入力したのだ。
    「さすがですね。仕事が早い」
    「仕事なんて言わないでくれ。今夜のデートを楽しもう」
     セリフも完璧じゃないか。これは本当にレンタル彼氏と思って接した方がよさそうだと降谷は思った。もちろん、恋人をレンタルしたのなんてこれが初めてだが、どの道にもプロはいるものだ。そして、プロに任せておいて間違いはない。
    「何を飲んでる?」
    「暑かったからモヒートを。あなたもこれで好きなもの頼んで」
     降谷は赤井にカードキーを渡した。今日宿泊する部屋の鍵だ。これをかざせば、ホテル内のどんなものでも決済することができる。
    「俺に渡していいのか?」
    「ええ。だって、あなた、払いたいタイプでしょう?」
     降谷がそう言うと、赤井は薄く微笑んでキーを受け取った。
    「ありがとう。最高の夜にするよ」
     赤井の唇は、今度は降谷の額を撫でていった。
     きっと赤井は自分の想いに気が付いているのだろう。しかし応えられないから、こんな形で思い出をプレゼントしてくれようとしてる。そのやさしさに応じるには名一杯楽しむしかない。
     プールサイドで酒を飲み、イチャイチャし、プールでひと泳ぎしてはイチャイチャした。赤井の態度は紳士よりちょっと悪で、降谷のオーダー通りだった。特にプールの中で太ももをツーっと撫でられたのは堪らなかった。
    「ハァ……」
    「疲れたか?」
    「ううん、楽しいなって思って。……赤井、ありがとう」
    「礼を言われるのはまだ早いよ」
     赤井は降谷の手を引いた。
    「えっ?」
    「次は部屋で遊ぼうか」
     シャツからカードキーを見せて赤井がウィンクする。降谷の金で遊ぶ赤井は最高にクールだった。
     予約したのは最上階の部屋だったから、プールからすぐだった。
     部屋に入ってまず、一緒にシャワーを浴びた。ちょっと恥ずかしかったけど、浴槽に浸かりながら赤井に頭を洗ってもらうのは最高の気分だった。
    「ねえ、赤井?」
    「ん?」
    「そういえば、あなたのレンタル期限って何時までなんですか?」
    「……考えてなかったな」
    「あはは、そこはおおざっぱなんですね」
    「あぁ、君が考えてくれ」
    「ふうん」
     プールで二時間近く遊んでしまったから、あと一時間弱で日付変更線を真鯛でしまう。そこで夢の時間が終わってしまうわけではないと知って、降谷は安堵した。それならまだ枕投げができそうだ。もちろん、隣の部屋の迷惑にならない程度の。
     風呂を上がると、赤井が体を拭いてバスローブを着せてくれた。ドライヤーで髪を乾かしてもらいながら、降谷はいくら払えばこの時間を買えるのだろう考えてしまった。赤井ほどの男を独占するのだから、相当の額になるだろう。元々あまり使い道がなかったから、金ならある。でも赤井とはもう会えない可能性のほうが高かった。
    「赤井……」
    「ん?」
    「……髪、もういいからぎゅってして?」
    「いいよ。おいで」
     赤井の腕に飛び込むと、まだ何も纏ってない上質な筋肉が降谷を迎えてくれた。
    「あ~~癒される~~」
    「お褒めに預かり光栄だ」
     赤井はそう言うと、降谷を尻から持ち上げた。降谷も調子に乗って赤井の、自分より一回り太い胴に足を回した。
    「ベッドまで連れて行っても?」
    「ひゃ、ひゃい」
     こんなサービスいいのだろうか?条例に触れないか少し不安になってしまう。それもこれも赤井がとんでもなくセクシーだからだ。
     赤井はベッドに降谷を乗せると、その上に覆いかぶさった。残っていた水滴が降谷の顔に降ってくる。それでも降谷は魅入られたように目を閉じることができなかった。
    「楽しんでもらえてるかな?」
    「もちろん。……でも、あなたは?」
    「俺?君とこうしていられるんだ。楽しくないわけがないだろ?」
     完璧だ。完璧すぎるぞ、このレンタル彼氏!
    「ずっとこうしていられたらいいのにな……」
     思わず出た降谷の本音に赤井が眉を顰めた。しまったと思ったと思ったときにはもう遅かった。
    「すまない」
    「謝らないでください。ちゃんと……わかってますから」
    「零……」
    「僕の気持ちわかってるんでしょう……?」
    「……あぁ」
    「やっぱり……。ありがとうございます。距離を取ることもできたのに、こうして最後に思い出をくれて……」
    「なぜ、距離を取る必要があるんだ?」
    「えっ?だって……」
    「言っただろう?君が期限を決めてくれって」
     赤井の言葉の意味が分からず見つめ返すと、赤井は思慮深いグリーンの瞳を細めた。
    「一年後でもいいんですか……?」
    「おや、俺はそんなにすぐに飽きられてしまうのかな?」
    「そ、そうじゃないけど!だって……!」
    「まあいいか。そうしたら、今度は俺が君をレンタルすればいい」
    「えっ」
    「君の世話になるのって癖になるんだ。知らなかっただろう?」
     降谷は頷くことしかできなかった。
    「俺以外の誰にも教えてくれるなよ」
     赤井の顔が近づいてくる。唇と唇がくっつきそうになって降谷はぎゅっと目を閉じた。
     しかし、いつまでたってもキスされないので、降谷はうっすらと目を開けた。赤井は寸でのところで顔をとめて降谷を見つめていた。
    「オーダー票の変更は?」
    「へ?」
    「唇にキスがしたいんだが」
    「~~~~~好きにしてくださいっ」
     降谷がそう言い終わる前に赤井の唇が降谷の口をふさいだ。角度を変えて何度も唇を触れ合わせてくるのに、降谷は付いていくだけで精いっぱいだった。息継ぎをしようと口をあけると、そこから赤井の舌が入ってきた。降谷の歯列をなぞったかと思えば上あごを擽り始める。とんでもなくエロいキスだった。
    「ちょ、ちょっと待って!」
    「ん?」
    「ディープキスは……オーダーしてませんっ」
    「好きにしていいと言われたはずだが?」
    「そ、そうだけど!」
    「いいよ。今は君に譲ろう。だが、一年後は……わかってるな?」
    「へ?」
    「君をめちゃくちゃに抱くってことだ」
     獰猛な目だった。ライオンに狙われたウサギのごとく、降谷はベッドの端へと逃げた。
    「どうした?ほら、おいで」
    「……」
    「確か、今夜は添い寝のオーダーが入っていたはずだが?」
    「……なにも、しない?」
    「君が嫌がることはしないよ」
     降谷は恐る恐ると赤井のほうへとにじり寄り、再びその胸に収まった。でも、さっきまでの安堵感はもうない。思いが通じ合ってからのほうがドキドキするなんて!降谷は眠れぬ夜を覚悟して目を閉じたのだった。
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    かとうあんこ

    DOODLE一度別れた赤安がバディを組んで幽霊退治(?)をする話、第三話。
    「その日のことはよく覚えてます。パパと姉貴とわたしの三人でママの誕生日プレゼントを買うために出掛けていたんです。姉貴は小学生、私は保育園に通っている頃で、パパが贔屓にしているアンティークショップに……え?名前?なんだったかなあ。随分前に倒産しちゃったから、もうありませんよ。……いえ、ママはドールハウスには全然興味なくて。アンティークショップのガラスの戸棚に飾られていたワイングラスをプレゼントすることにしたんです。それをお店のひとがラッピングしている間に、オーナーさんが『お嬢様たちにこちらはいかがですか?』と言って見せてくれたのが、そのドールハウスでした。本物の西洋のお屋敷を小さくしたみたいですごく素敵だったから、私も姉貴もすぐに気に入りました。ふたりでパパにおねだりして、買ってもらえることになったんですけど……パパがお会計している間、奥さんが、あ、オーナーの奥さんです、がこんなことを言ってたんです。『このドールハウスに人形は絶対に入れないで』って。私たちは不思議に思いましたが、奥さんがあまりに真剣な表情だったから「うん」と答えました。でも家に帰ってドールハウスを広げて、別に梱包してもらった家具を並べているうちに……人形を入れて遊びたくなったんです。ほら、子どもってダメって言われるとやりたくなるところあるじゃないですか。それに……人形がないほうが変な感じがしたんです。とても精巧にできていたから……ううん、そうじゃないな……人がいる気配がするのに誰もいない……そんな感じでした。でも、うちにあるのは着せ替え人形ばかりで、そのドールハウスのサイズにちょうどいい人形がなかったんです。そしたら姉貴が「紙のお人形を作ってドールハウスに入れよう」と言ったんです。「紙の人形なら約束を破ったことにはならないだろうから」って。私はすぐに部屋にあった画用紙に黒いマジックで女の子の絵を描いてソファに座らせました。その隣に姉貴が書いた猫の絵を置いたところで夕飯の時間になって、私たちはドールハウスをそのままにして部屋を出たんです。……あはは、大丈夫よ、真さん。子どもの頃の話だから。それに、もし何かあっても真さんが守ってくれるでしょう?……はい。そうなんです。夕飯を終えてドールハウスがある部屋に戻ってきたら、紙の人形が切られていたんです。バラバラに……。「やっぱり人形を入れたのがいけなかったのかし
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    かとうあんこ

    DONE一度別れた赤安がバディを組んで幽霊退治(?)をする第二話
    烏丸怪談②友人の話「え?僕には怪談はないのかって?う~ん、そうだなあ……僕の友人の話でもよければ。はは、そういうことが多いね。まあ、どちらでもいいじゃないか。これは友人が保育園に通っていた頃の話だ。彼はいつもお迎えが一番最後でね。母親の仕事が忙しかったんだ。彼は保育園では周りの子どもたちとうまくいってなかったから、園児が少なくない遅い時間のほうが遊びやすかった。だから、母親の迎えが遅くても気にならなかった。嬉々として居残っている彼を見て羨ましかったのか、園児のひとりが意地悪を言ったんだ。『あいつはいらない子だからお迎えが遅いんだ』って。気丈な友人もこれにはショックを受けた。いつもは独り占めできて嬉しい積み木も全然楽しくない。今すぐに母親に抱っこしてほしかった……。そんなことを考えてると、友人の前に見知らぬ男の子が現れた。『キミ、いらない子なの?』友人は当然ムッとして無視をした。ちょっとだけ泣いてたかもしれない。その寂しさを見抜いたように男の子は『じゃあ、一緒に遊ぼうよ』と言った。友人は少し悩んでから『ウン』と言った。それから二時間、彼は行方不明になった。保育園の先生はもちろん彼を探したし、お迎えに来た母親も一緒に探した。家に帰ったんじゃないか、散歩で行った公園にいるんじゃないか。いろんな場所を探したが、見つからない。いよいよ警察に連絡しようとなった時、子ども用トイレから友人が現れた。『やっと帰ってこれた』と言いながらね。二時間だけの神隠しだ。……どう?名探偵の君には物足りなかったかな」
    8690

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    1993