Stand Aloneウィズダムへの出勤前、俺はあるオフィスビルの裏にある庭へと向かう。
いつもなら道すがら頼んでいた食材など受け取りながら来るのだが、それをしない分今日は早い時間に家を出た。
向かっている場所にはベンチなども整備されており誰でも入ることが出来るようになっていた。
建物の角を曲がると揺れるピンク色が目に入る。
ここには一本の立派な桜が植えられていた。
桜は春の柔らかいそよ風に五分咲きの花を静かに揺らしている。
本当は家から酒でも持ってきて桜を肴に花見と洒落込みたいところだが、ウィズダムが閉店する時間には入口が封鎖され入ることが出来ない。
だからここには出勤前に眺めに来ることしか出来なかった。
その木は見事な枝振りで桜としてはかなり大きい部類に入る一本だった。
1989