神山高校isホラー
ーーーーオトガミ様オトガミ様お答えください。
私の疑問にお答えください。
オトガミ様オトガミ様
あの人は誰が好きなのですか、あの子が最近付き合いが悪いのは何故ですか、次の小テストはいつ行われますか、どうすればあの人を振り向かせられますか、どうすればあいつを呪えるのですか
お帰りくださいオトガミ様、お帰りくださいオトガミ様
どうして帰ってくれないのですか、どうしていいえと動くのですか、オトガミ様オトガミ様お帰りくださいオトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様オトガミ様ーーーー
「ねーねー、オトガミ様って知ってる?」
神山高校の1ーAの教室で集まる女子生徒が昼休みに始めた話題にクラスに残っていた生徒たちが集まった。
「聞いたことある、コックリさんみたいなやつでしょ?」
「え、何それ知らない〜!」
「コックリさんは知ってるけど、それってヤバいんじゃない?」
「コックリさんは低級霊だって言われてるけど、オトガミ様はいい神様だからちゃんと手順を踏めば大丈夫なんだって」
「そういや、C組の子がやったって言ってた」
「先輩もしたって言ってたなぁ」
「私誘われたけど聞きたいこととかなかったし断っちゃった」
ヤダ怖い、やってみたい。クラスがオトガミ様の話で盛り上がっている中で1人だけ両耳をさりげなく抑えて会話を聞かないようにしている人物が居た。そして教室に入ってきた人物がそれを見て、何か面白そうなことになっているなと肩を叩く。
「杏」
「わっ!……み、瑞希!?」
「どーしたの?会話に入っていかなくていいの?」
びくりと肩を震わせる白石杏に、暁山瑞希が問いかけると、眉間にシワを寄せながらも杏は口を開いた。
「オトガミ様」
「オトガミ様?」
「聞いたことない?オトガミ様を呼ぶとお悩み相談してくれるって話」
「うーん、ボクは聞いたことないなぁ」
「この学校でしか聞いたことがないから、あんまり広まってないのかも」
「へー。ちょっと気になるかも。杏は呼び出し方って」
「知ってる訳ないでしょ」
「杏は怖いの苦手だもんね〜。うーん、類なら知ってるかな」
「瑞希は呼ぶつもりなの?オトガミ様」
「杏が気になってることも質問しといてあげようか?」
「要らない。何かあっても知らないからね」
「あはは、冗談だって。でも…」
セカイなんてものもあるんだから幽霊とかが居たとしても可笑しくないよね。と続く瑞希の言葉は教師が入ってきたことにより中断される。
騒いでいた生徒たちが大人しく自分たちの席に着くと、先日の宿題の答え合わせが始まった。
……………………………………
「…っ」
その日、青柳冬弥は頭痛に悩まされていた。家にいる時は健康だったことを覚えている。それが教室の門をくぐった際にほんの少し体が重くなったような気がして、一瞬だけ立ち止まってから気のせいだろうと歩き出した。それから時間を増す毎に疲労感が増えていく。熱がある訳でもなく、鼻や喉に異常を来たす訳でもなく
ささやかで普通に学業をこなすことは出来る、けれど不快感のある疲労。それは冬弥が久しく感じていなかった、けれど覚えのある感覚に、しばらく考えて、3限目と4限目の間の10分の休憩時間の際に携帯のメッセージ機能を使い文章を送る。
『突然すみません、昼休みに少しだけでいいので会えませんか?』
すぐに既読のマークが付き、1分と待たず返事か返ってきた。
『お前から連絡とは珍しいな。ならば共にランチにしようではないか!昼休憩になったら教室へ迎えに行くから待っていてくれ』
こちらから向かうので大丈夫です、と送ろうとして、先の相手が忙しなく動いていて、自ら向かったところですれ違う可能性があるかもしれないと思い至り、ありがとうございますの言葉と一緒にスタンプだけを送って携帯を閉じる。
つきりと痛んだこめかみを抑える冬弥の姿を、教室の中で草薙寧々だけが不安げに見つめていた。
………………………………………………
4限目終了のチャイムと共に弁当箱を取り出した天馬司が立ち上がる。休憩中に弟のように可愛がっている後輩から来た会いたいという申し出を断る理由が司には思いつかなかった。もちろん用事があれば断ることも躊躇いはしないのだが、もしかすると何か悩みがあって他の誰でもない、この『天満司』を頼りにしてくれているのかもしれない。
そう思えば一刻も早く会いに行って話を聞いてやるべきだろうと、機敏に動き、芝居がかった調子で爽やかに教室を出ていく司の姿を、クラスメイト達はまた変なことやってんな…と生暖かい目線や胡乱な視線で見つめていた。
1ーBの教室にたどり着き、さあ扉を開けようとしたところで先に開いた扉から生徒が現れた。
「げ」
司を見て目の前で嫌そうに顔を顰めたのは寧々だった。既知の人物がそこに居たことで司は変わらずのテンションで話しかける。
「寧々!そういえばお前も1-Bだったな」
「…えっと…?」
「なんだその知らない人に話しかけられたみたいな反応は!」
「……はぁ、司うるさい。声、頭に響く。………何か用事?」
そういえばという言葉から司は寧々に会いに来た訳じゃないだろう。会いに来られても迷惑だし、神高で1位2位を争う変人に話しかけられているということも外聞が悪いと無視して教室に通そうとして、ふと司の知り合いが教室に居ることを思い出し、問いかける。
「と、そうだったな。冬弥は居るか?」
「ええと…」
「ああ、青柳冬弥のことだ」
「………いるけど…」
やはりかと納得しながらも歯切れの悪い返事を返す寧々に司が首を傾げる。
「どうした?」
「………。……まあ、あんたなら大丈夫か」
1人で納得した寧々がドアの前から退いて、入るように促してくる。それに合わせるように司が教室に入って辺りを見渡すと、席に突っ伏して寝ている冬弥の姿が目に入った。
「待たせたな冬弥!」
気にせずに歩み寄り声をかけると、ぴくりと肩を揺らした冬弥が顔をあげて司を見る。元々白い肌色がまるで紙のように白くなっていて、息も少しだけ荒い。どう考えても体調が悪いことがありありとわかる状況に、保健室に行くぞと言おうとして、縋るような助けを求めるような冬弥の瞳に、司の頭に幼い頃の記憶が浮上すした。昔は頻繁に似たような表情を見ていたはずだ。確かその時は。
声をかける為に上げていた手を勢いよく振り下ろしてばしんと冬弥の背中を力いっぱい叩く。後ろで見ていた寧々や遠巻きに眺めていたクラスメイトがその突飛な行動を理解できないと驚愕の表情で見つめていた。
「けぷっ」
幼い子供がするように胃に溜まっていた息を吐き出した冬弥の顔に血色が戻ってくる。
「嘘でしょ…」
たった今起きた現象を唯一正しく理解していた寧々が小さく口端を引き攣らせる。