Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    nicola731

    @nicola731

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 80

    nicola731

    ☆quiet follow

    ドキドキ! 地獄の結婚生活!

    一次創作の書かない部分です。
    『大人気連載!「あの人は今【第十八回】」~消えた天才俳優~』
    https://note.com/nicola731/n/n35617ae3936d

    二人の前世的な
    『悼む色は赤「明くる朝には皆死体【後編】」』
    https://note.com/nicola731/n/n2be8702043d6

    #小説
    novel
    #一次創作
    Original Creation

    願わくは、落雷か隕石がこの男の頭を撃ち抜き死に至らしめますように。私は毎日そう思っている。

     人間の皮を被ったクソが結婚指輪を買ってきた。嵌めたくなかったので彼奴が仕事へ行っている間に左手の薬指を包丁で四苦八苦しながらどうにか切り落とし、ついでに両手首を切った。血行の流れを良くするために熱い風呂を湧かして浸かる。これで死ねると思った。
     目が覚めたら生きていた。見慣れてしまった寝室の天井が見えた。点滴を繋がれていて、口に薬剤兼栄養剤を流し込むカテーテルを突っ込まれていて、傍らに男が座っていた。男は私を見下ろしている。慈愛に満ちた優しいばかりの眼差しを向けてくる。頭がぼんやりしていても私は彼を睨みつけるのを忘れない。
     男はいつものように私の激情をさらりと流す。
    「結婚指輪って、別に右手でも良いんじゃなかったかな。馬鹿だねお前。だからって其処までしなくても良かったのに。本当に馬鹿で愚かで可愛い」
     含み笑いが聞こえて、男の両手が無遠慮に私の顔を撫でた。輪郭を確かめ、カテーテルの調子を確かめて、口の中に指を突っ込んできた。体がきちんと動かないせいで抵抗出来ない。ぐにぐにと好き勝手に舌を弄り回される。くぐもった呻きしか出せなかった。
    「お前の何一つが欠けても僕は惜しむ。随分と乱雑に切り落としたな。とうとうお前の指は繋がらなかった」
     眉を八の字にして男が憂う。私はざまあみろ、とその面を見てやった。彼は私の口から自分の指を漸く引き抜いた。
    「だからね、お前の指は大事に飾るよ。もし勝手に処分したらお前の嫌がることを沢山しようね」
     男がべろりと私の唾液に塗れた指を舐める。気持ち悪いからやめろ死ね。
    「仕事辞めようかな。辞めても全然平気だし、奥さんから目を離したら何をするか分かったもんじゃない」
     私の左手を取って、手当された薬指の跡地に顔を寄せる。生暖かい息が肌に当たって気持ち悪い。指で眼球を抉ってやりたかった。男は笑っている。ずっと。
     彼が寝台に上がる。私の隣に寝て、私の体にベタベタと触る。獣のような呻き声しか出せない私に構わず。むずがる子供に言い聞かせるように男は言う。
    「大丈夫だよ。何もしない、触るだけだから。触るだけ」
     触るのをやめろカス。
    「傷が治ったら外へご飯を食べに行こうね。『du Anaye』ならちょっとラリってても入店拒否されないから」
     死ね。
    「あと、暫くは夕飯を一緒に食べよう。食べさせてあげるから」
     マジで死ね。







     此奴との夕飯は苦痛でしかない。
    「今日は和食にしてみたよ。まあ、消化に良いお粥だけど」
     彼がいる間は基本薬漬けにされている。頭がクラクラするのでされるがまま、椅子に座らされる。食欲は此奴の顔を見た瞬間に失せる。
     匙で掬われた粥が目の前に差し出される。口を開く気にもならない。
    「はいあーん」
     そう言われても口を開けるわけがない。自分が投与した鎮静剤の量を覚えていないのか此奴は。
    「はい、あーん」
     男の手が私の顎を掴む。私の顔を上へと向かせ、関節をぐりぐりと押して口を開かせる。無理矢理開けられた口の中に粥を入れられる。
    「はい、美味しいー」
     味など分からない。男が無理矢理咀嚼させる。口の端から粥が垂れると指で押し込まれた。最低な夕食は皿が空になるまで続く。
    「ご飯食べたら一緒にお風呂入ろうね」
     死ねクソ。





     皿が空になって、服を脱がされて、風呂に入れられた。ホルモン剤も投与されているせいか日に日に自分の体が柔らかくなっていくのを感じる。広い浴槽は二人も入れば狭くなる。私を抱えるようにして湯に浸かる男は機嫌良さそうに私に触れる。
    「シリコン入れようかなって思ったけど、あんまり見た目変わるのも嫌なんだよね。似合う服が大体細身のやつだし」
     頭の後ろでクソが喋ってるのが煩わしかった。
    「うるさい・・・・・・」
    「ちょっと醒めてきたね。寝る前にまた点滴しよう」
     「ねぇ?」と同意を求められても反応しなかった。男はまだ喋っている。
    「出来る限り原型を残しておきたかったんだけどなぁ。お前が舞台に立ってる時と同じままにしたかった。こうでもしないと結婚出来ないから仕方ないんだけど。なんで同性で結婚出来ないんだろうね。不便だよね」
     男がするすると内股を撫でる。造り変えられた肉を撫でる。「子供欲しいなぁ」と不穏な呟きが聞こえてくる。項に温い息が掛かる。猛烈に気絶したかった。なぜ此奴はこうも私に執着するのだろうか。私には皆目見当が付かない。
     逃げたくて緩慢に身動ぎする。男が喉を鳴らすように笑っているのが分かった。
    「駄目だ。例えお前が指の骨を折るほど祈ろうと、お前を手放しはしない」

     願わくは、次に目を醒ました時に見知らぬ新生児がいませんように。私は真剣に願った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works