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    nicola731

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    nicola731

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    「罪深き墓前まで」
    思いつきの時代物パロ晴道。多分この後二人で共謀して旦那を始末します。

    #晴道
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     晴明の兄が妻を娶ったのは彼が十五の時だった。付き合いのある旧家の長子で、美しいことで評判だった。まだ十八になったばかりだった。晴明の幼馴染だった。
     晴明は義姉になる前まで兄の結婚相手を「道満」と呼んでいた。義姉になるまで兄の結婚相手を抱いていた。去年の盆に宴会があり、その裏で二人は体を繋げた。お互い初めての相手だった。晴明にとっては初恋だった。
     道満は自分の妻になるものだと信じ切っていた彼は、夏の盛りを過ぎた頃に兄から婚姻のことを聞かされて、がらがらと全てが崩れていくような心地になった。美しい上に賢い道満は詩経さえ誦じてみせる。対して夫となる晴明の兄は凡庸で家柄ばかりが取り柄の役人だった。幼少のみぎりから才覚を発揮していた晴明とは大違いだった。
     晴明は兄が何処か勝ち誇ったような顔をして自分を見ていることに気付いた。兄が自分を打ち負かしたいがためだけに、道満を妻に迎えたのだとすぐに理解した。殺してやろうかと思った。
     道満は家庭に入ると頗る良妻で、よく躾けられた奥様になった。夫の父母に気に入られ、夫の床屋政談にも美しい笑みを浮かべたまま付き合った。晴明が「義姉さん」と呼んでも笑みは分からなかった。夜中に自室に引き摺り込んで押し倒せばやっとその笑みは崩れた。
     道満は夫との結婚生活を幸福とは思っていなかった。退屈で窮屈で、つまらないしがらみばかりで書を読むことさえままならない。夫との夜は最低なものだった。馬鹿の一つ覚えのように腰を振るものだからほとが擦れて傷んだ。
     縁談は両親の同意によって決められた。道満には拒むことなどできなかった。義弟となった晴明とはずるずると関係を保っている。好い加減にしなくては、と思いながらも道満は彼に焦がれる。舌を巻く程の才智を道満は愛していた。


     道満がどれだけ夫婦生活を厭うても、晴明が兄に殺意を抱いていても、新妻の腹が膨らむのを止めることはできなかった。
     子供が出来たことを義両親は大変喜び、夫は出来の良い弟に自慢した。晴明は彫像のように美しい笑顔で兄夫妻を祝福した。そして冗談のように言った。
    「その子が産まれたら私に下さい。私の妻にしますから」
     「冗談ではない」と道満は思った。夫とも晴明とも褥を共にしているのだ。腹の子がどちらの子なのか分からない。義弟が本心から腹の子を自分の代わりとして欲していることは分かっていた。だから道満は、どうにかして夫と別れなくてはいけないと思った。
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    DOODLE「罪深き墓前まで」
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     晴明は義姉になる前まで兄の結婚相手を「道満」と呼んでいた。義姉になるまで兄の結婚相手を抱いていた。去年の盆に宴会があり、その裏で二人は体を繋げた。お互い初めての相手だった。晴明にとっては初恋だった。
     道満は自分の妻になるものだと信じ切っていた彼は、夏の盛りを過ぎた頃に兄から婚姻のことを聞かされて、がらがらと全てが崩れていくような心地になった。美しい上に賢い道満は詩経さえ誦じてみせる。対して夫となる晴明の兄は凡庸で家柄ばかりが取り柄の役人だった。幼少のみぎりから才覚を発揮していた晴明とは大違いだった。
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     道満は家庭に入ると頗る良妻で、よく躾けられた奥様になった。夫の父母に気に入られ、夫の床屋政談にも美しい笑みを浮かべたまま付き合った。晴明が「義姉さん」と呼んでも笑み 1027

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