Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    3rdHonests

    @3rdHonests
    ツイッターにあげにくいやつとか すぐ消える

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 61

    3rdHonests

    ☆quiet follow

    引き金に指を添えて、構えて、よく狙って、引く。弾が発射されて目標に当た──らない。急いでハンドガンを確認する。弾詰まりを起こしているらしく、スライドを引いて弾丸を取り除こうとするが震える指先はどうもうまく動かない。耳の奥であの人が僕の名前を何度も呼ぶ声が反響する。航弥、航弥、痛みに耐えながら、振り絞るような声で僕のことを呼ぶ。鋭い牙がさらに深く突き立てられて、僕を呼ぶ声は噛み殺すような呻き声に変わる。肉が裂け、血管が破れて、溢れでる血液はインナーが吸収できる限界を超えてぼたぼたと地面に落ちた。早くあの人の右腕に食らいつく獣を仕留めなければいけないのに、ようやくリロードを終えた銃を握る手は震えてまともに狙いもつけられない。航弥!あの人の声が頭の中をぐるぐる回る。視界がぐにゃぐにゃに歪んで回る。
    航弥、お前のせいだ!ひどい出血で真っ青な顔をしたあの人が、僕のことを睨みつけた。


    汗でぐしょぐしょに濡れたTシャツが張り付く嫌な感触と一緒に目を覚ます。手元のスマートフォンの表示は6時5分前で、何度目かもわからない悪夢はアラームより少し早く僕を起こしたらしい。もう少しマシな起こし方があったっていい、と思いながらガンガン痛む頭を引きずってベッドから起き上がった。

    (そもそも、)
    ダメになってしまっている頭は余計なことばかり考える。ダメになっているので一度考え出すと止まらなくなる。
    そもそも僕にはあの時の夢を悪夢だって言う資格なんてないんじゃないだろうか。何もできなかったくせに無事で帰ってきた僕があれを悪夢だって言ったら、あの人はどうなるんだ。
    いつもと同じ思考を一通りなぞって、洗顔を終えて顔をあげると鏡に映った自分と目があった。ひどい顔をしていて笑ってしまう。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works