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    うまちゃん

    馬のチラ裏置場

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    うまちゃん

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    一個前の続きの断片

    月光蓄音都市ウィーン«4.5節「ある男の手記」
    深い眠りのなかで、あなたは私の■■■過去を見る。

    ある夜のこと、男の前に神が降臨しました。
    神は音楽そのものの姿をとって男の部屋の窓から入りました。
    神は男にこう語りかけました。
    「ルートヴィッヒ、ルートヴィッヒ。私の元へ貴方を招きます。私のために音楽をしなさい」
    男は神の申し出をまこと誇らしく思いましたが、首を横に振りました。
    「私は音楽によって神の愛を地に知らしめる使命があります」
    神は男の信仰に深く感じ入り、男の耳に息を吹き込みました。
    すると、男の中には全ての「音」が在りました。
    男の耳には世俗の音が何一つ入らぬ代わり、世界にもたらすべき「音」が鳴り響くようになりました。

    私は誓いました。
    神が与えたもうた「音」を永遠に世界に響かそう。
    そのためならば、神を■■することすら厭わないと──

    「貴方は私の尊き使命を理解してくださるでしょう?」

    「その妄言を信じるか?」
    漆黒の雷鳴がリツカの意識に飛び込んできた。この深い眠りの底でさえ煌々と爆ぜる雷を、リツカはひとつしか知らない。
    「巌窟王!」
    「随分とまた、厄介なモノと縁を結んだものだ」
    巌窟王は呆れたようにリツカを見た。
    「誰のこと?」
    「フン、アレは"フェデリオ"気取りの道化だが、お前はどうかな?"ロッコ"か、はたまた"マルツェリーネ"か?」
    「私は君の共犯者だ」
    リツカは真っ直ぐに巌窟王を見返した。巌窟王は一瞬、虚をつかれたような顔をして、それからいつものように大笑した。リツカもしてやったり、と笑う。
    「フ、ハハハハ!クハハハハ!面白い!ではフェデリオは俺というわけか?しかし、用心しておくことだ。お前を陥れようとする刑吏が、一人とは限らぬのだから」
    「わかった」
    「ならば、はやく行け。それともこの地下牢で恒久の時を無為に過ごしてみるか?」
    「ありがとう、巌窟王」
    巌窟王はハットを深く被って闇の底へ消えていった。
    リツカの意識が浮上する。
    深い眠りが終わる。

    «??節
    (オーダー開始から5日目、ベートーヴェン(?)が謎の失踪をとげる。さらに魔楽器奏者を襲う死神がなぜかウィーン地下にできた冥府から来ていると判明した。カルデア一行は冥府へと踏み込む。そこに現れたのは何故かカルデアのシェイクスピアであった。ベートーヴェン(?)が記録を改竄し、サーヴァントに成り済ましていたのだ。一行はさらに冥府の奥へと向かう。)
    ……
    「ところでマスター殿、我輩ひとつ告白せねばならぬことがあるのです」
    「告白?」
    「ええ!実は私、さる御人から執筆依頼を受けまして。そう、あれは七日前の夜更けのこと!彼らは闇に紛れて我輩の書斎を訪れました。」
    「それで、何をかいたの」
    「コンマひとつも書いておりません。≪闇夜に秘された彼らの暗躍みたいな文≫は大変興味をそそられましたが……。おお、そんな恐ろしい真似を一体誰ができましょうや!英霊の物語に手を加えるなど!」
    「あの、シェイクスピアさんは以前から英霊の皆さんに取材した作品をお書きになっていたように思いますが…」
    「それは当然でしょう!だって面白いではないですか!顔を合わせるはずのない古今東西あらゆる英雄英傑・悪漢無頼が勢揃い!なんて節操のないクロスオーバー企画、それも期間限定公演というのであればもう筆もノリに乗るというもの!!しかしですね…」
    「しかし、英霊が拠り所とする物語の"改竄"はそれとは全く違います。それらは既に完結したもの。二次創作ならば喜んで書きますが、原典を弄くりまわして作者に恨まれでもしたら堪ったものではありません!モチロン我輩ならばもっと面白い喜劇に仕上げられるでしょうが、それはそれ、暗殺を企てることと実際にナイフを突き立てることは天と地ほど差があります。インク濡れの手を洗いながら懺悔し続けるなんて真っ平御免だ!≪マクベスの妻の台詞≫」
    「それは──」
    「というわけで依頼は丁重にお断りしました。しかし我輩の手を借りずとも霊基の"改竄"には成功したようですぞ。≪怪物がくるぞ的な文≫」

    「──アントニオ・サリエリ、だね」
    「視認しました!前方で待ち構えているのはサリエリさんです!ですが、この霊基パターンは…!」
    「信じられない!神性を無理やり継ぎはぎしたの?」
    「我は、死だ」

    «??節
    それは魔神が身を偽って、ある老人の「弟子」に成り済ましていたころの話。
    演奏会の帰り道、魔神は先を歩く老人を引き留めた。
    「アントニオ。貴方に告白しなければならないことが、」
    いつになく堅い声を聴いて、老人は静かに魔神を振り返った。
    「それは
    ──きみがアマデウスを取り殺した魔物だ、という話ですか?」
    魔神は小さく息を飲んだ。
    「承知していたのですね」
    「ふふ、私は音楽家です。一度聴いた音は忘れません」
    「何故、私を見逃していたのですか?私は貴方の同胞を殺害しました。恨みがあるでしょう。怒りがあるでしょう。何故それらを遂行しない?」
    魔神には目の前の人間が全く理解できなかった。この老人が己の首を締め上げるのは当然だと、そうするべきだとすら考えた。それなのに、老人はいつも通り優しく微笑むだけ。
    「私の復讐はもう完成していますよ」
    「意味が、不明瞭です」
    「アムドゥシアス、お前ははもう、人間を殺せないはずだ。日々の希望と喜びを知ってしまったお前は、人間の汚濁をも愛したお前は、もう悪魔には戻れまい」
    俺はお前という悪魔を"とりころして"やったぞ。
    魔神はそれでようやく、己がもはや「絶対尊厳」から遠く離れてしまったことを理解した。その証拠に己はたった一人の犠牲を指して「復讐に値する」などと、高次存在にあるまじき思考をしているではないか。
    なんということだろう、もう魔神は人間に見切りをつけた獣ではなくなってしまった。
    「アントニオあなたという人は、」
    魔神は、己の不可逆変化を喜んだ。
    だから喜んで老人と共に希望を守ると決めたのだ。
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