気付けば君はすぐそこに藍忘機は真っ暗な世界で夢を見る。
その男は座学時代、私の心を掻き乱し、固く閉ざされた心にずけずけと入り何度もその扉を叩いてきた。家規は守らず、穏やかだった日常を悉く騒がしくして来る男だった。だが、その心の根源にあるものは確かに真っ直ぐなモノだった。
魏無羨は何もない世界で夢を見る。
その男に初めて出逢った時のことを、今でもよく覚えている。美しいものを人の形で体現したら、きっとこういう風になるのだろうというくらい、絶世の麗人だった。だが、その中身は融通の効かない石...いや、岩のように硬く頑丈なもので、規律を重んじ模範解答しか許さない、そんな頑固な男だった。だけど、その心の根源にあるものは、純粋で無垢なモノだった。
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