ノンアルコール・モヒート!(3) 客との距離は、付かず離れず。来る者拒まず去るもの追わず。決して踏み込ませないし、踏み込んではいけない。それが俺のモットーだった。店で美味しく楽しく過ごしてもらう事に粉骨砕身すれども、深入りをしてはいけない。
「何だ、溜息なんぞ吐いて」
江澄に言われて気付いた。溜息を吐いていた事に。
江澄とは幼少期からの付き合いだ。遠慮のない物言いは近年では『ツンデレ』と呼ばれるものを地で行ってるんじゃないかと、最近思ってる。
「わかんないんだよな、自分が」
俺の言葉が意外だったのか、江澄は片眉を上げる。グラスが空になっているので、彼の好きな年代物ウイスキーをロックで出してやる。
「なんていうかさ、もう来ないだろう客を待ってる自分がいるんだよな」
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