ご褒美をあげるから座って「デーさん、周回頑張ってるね」
彼女の指示通り、いつものメンバーで素材を集め、列車に帰還。
何やら自分の性能がいいという理由でとりあえず編成に組み込まれ、少し疲労が溜まっていた。
「列車の皆さんの……アナタのお役に立てているなら光栄です」
「うんうん、あんたには大分世話になってるよ。だから『ご褒美』をあげようかと思って」
「……ご褒美、など。ワタシのしてきた行いを考えると、当然の償いです」
「いいから。ほら、座って」
座れ、と指示されたのは……列車のソファではなく、床。
床だ。パムさんの手伝いも兼ねて綺麗に掃除されているとはいえ、床。
……彼女は何か怒ってるのではないだろうか。
「なにか……してしまいましたか、ワタシは」
「?」
しかし彼女の表情を見ると、本当にワタシを貶めようとする悪意は見えない。
つまり『いつもの』だ。彼女は何か突拍子もない奇行をする癖がある。ゴミ箱を漁ったり、凍った柵を舐めたり。
……何を企んでいるんだ。自分の中で、別の警戒心が膨れた。
「……ええ。わかりました」
当然、今のワタシに拒否する権利は無い。
列車の皆さんの要望なら全て受け入れよう、と覚悟し床に座る。
「あは、正座なんだ」
「別の座り方がいいのでしょうか」
「いや、デーさんらしいなって」
何故か笑われてしまったが……少なくとも胡座をかくよりはいいだろう。
彼女は正座するワタシの前に立ち、ワタシを見下す。
自分の眼前には……白い太ももがある。片方には、特徴的な水色のベルト。
それを見ていると、……なんだか……。
「……ワタシは何をすればいいのでしょうか」
「ご褒美って言ってるじゃん?ちゃんと見ててね」
───目を逸らしちゃダメだよ。
それが彼女の命令なら、従うべきなのだろう。
ワタシは彼女の太ももを注視することにした。
やがて彼女は組んでいた腕を下ろし、指先が白い太ももに触れる。
言いようのない焦燥感が自分を襲う。見るべきでは無い。絶対にロクでもないことをしようとしている。
しかし、彼女は命令した。目を逸らすなと。
彼女の指先がスカートの裾に触れる。割と短い上に、深くスリットの入ったデザインのスカート。
「……星さん、何をしようとしていますか?」
「デーさんに『ご褒美』をあげる」
「いりません……」
「失礼な。見ときなよ減るもんじゃないし」
ワタシの『減ります』を言う前に、彼女は行動した。
ピラッ、と容赦なく捲られるスカート。
世間一般的に、普段目にすることはない領域の先。
彼女の───『ご褒美』がそこにあった。
「…………………」
理解し、次第に脳まで駆け上がる熱。彼女の……本来、見てはいけない部分。
「どう?美少女のスカートの中身は」
「いけません!!!!」
即座に立ち上がり、脇目も振らず逃走する。
途中他の列車のメンバーに奇異の目を向けられながら、列車の果てにたどり着く。
ああ、彼女は、本当に、何を考えて。
そう思いつつ彼女の純白が脳裏に過ぎり、また項垂れる。
今度顔を合わせたら、どんなことになっているか。
……『ご褒美』、とはよく言ったものだ……。
「星さん……」
列車の隅。1人純白の『呪い』に侵された自分は、項垂れることしかできなかった。