外の店に飲みに行こう、と信一が誘いに来たのは、ちょうど洛軍がその日の仕事を終え、自室で人心地つこうとしていた時だった。
信一はハリのある清潔なシャツにネクタイを緩く結び、鮮やかな青色の革ジャンを羽織って完全によそ行きの服装だった。サングラスまでかけて。夜なのに。
無言で信一の姿をまじまじと眺めていると、洛軍が散財を躊躇っていると勘違いしたのか、信一は「おごるぜ?」と言って、洛軍の腕を引いた。
信一に連れられて夜の歓楽街を行く。
城砦に辿り着いてから、外に出るのは今日が初めてだった。あとから十二も合流するからな、と陽気に歩く信一の後ろで、洛軍と言えば警邏の警察官が視界に入るたびに緊張していた。
「大丈夫だって。ビクビクしてる方が怪しまれる」
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