守茜男の名前は守という。駄菓子屋の店長を務めている。その駄菓子屋は、町の中心から少し外れた場所にあった。
店構えは古いが、店内は綺麗に掃除されてある。
商品のラインナップも、子供向けのお菓子が多く、客層も子供が多かった。
しかし今日は平日の昼間なので、客足は少ない。
守は店番をしながら、ぼんやりとしていた。
すると、店の前の道を、一人の少女が歩いているのが見えた。
少女の名前は茜。守に片思いしている学生だ。茜はセーラー服を着ている。そのスカート丈はかなり短く、黒タイツを穿いているとはいえ、健康的な太ももがかなり見えていた。
茜は恥ずかしそうにしながら歩いている。
すると、店の前で茜の足がぴたりと止まった。
そして彼女は、何かを探すように周囲を見渡し始めた。
どうやら何かを探しているようだ。
しかし、何を探しているのかまではわからない。
(どうしたんだ?)
守が不思議に思っていると、茜は意を決したように口を開いた。
彼女は大きく息を吸うと、大きな声で叫んだ。
守の名前を。
茜は顔を赤くしながら、再び周囲を見渡した。そして、誰もいないことを確認してから、ほっとした表情を浮かべた。
(俺の名前?)
なぜ自分の名前を叫んでいたのか、守にはわからなかった。しかし、茜のあの様子からして、何か理由があるのだろう。
(もしかして……俺に用か?)
そう考えた守は、店番を中断して外へ出た。
するとそこには茜がいた。
茜は驚いた様子で、目を丸くしている。
守が突然現れたことに驚いたようだ。
茜は顔を赤くしながら、何か言いたげな表情をしている。しかし、うまく言葉が出てこないのか、口をパクパクさせているだけだった。
守はそんな茜を安心させるように笑顔を浮かべながら言った。
彼は優しい口調で話しかけた。
「遊びに来たのか」
そんな守の言葉を聞いて安心したのか、茜の表情が柔らかくなった。彼女は小さくうなずくと、手に持っていた手紙を守に差し出した。
(受け取れってことか)
守は茜の手から手紙を受け取った。
その手紙には、丁寧な文字で、守の名前と住所が書かれていた。
茜の様子を見る限り、この手紙に何か重要な用事があるのだろう。
「とりあえず入って行けよ」
守は、彼女を店の中へ招き入れた。
店の中には駄菓子やおもちゃなどが置いてある棚があるだけで、他には何もない。
しかしそれでも、茜にとっては珍しいようで、興味津々といった様子で店内を見回していた。
そんな彼女の様子を微笑ましく思いながら、守はカウンターの横に置いてある長椅子に腰掛けた。
すると、茜も彼の隣に座る。
彼女の肩が触れる距離だ。守は少し緊張したが、平静を装う。茜は気にしていないようだ。
そのまましばらく沈黙が続いた。お互いに何を話していいのかわからないのだ。
(どうしたもんかな……)
守が困っていると、先に口を開いたのは茜の方だった。彼女は恥ずかしそうにしながらも、何かを伝えようとしている。
守は彼女の言葉を聞くために、耳を傾けた。
彼女は意を決したように話し始める。
それは彼女にとって精一杯の告白だった。
しかし、その内容はあまりにも予想外なもので……
守の顔が真っ赤になっていく……
まさか茜が自分に対して好意を持っているとは思わなかったのだ。しかもそれが恋愛感情だというのだ。
突然のことに守は動揺していた。どうすればいいのかわからない。ただ黙っていることしかできなかった。
そんな彼の態度に不安を感じたのか、茜の表情は暗くなった。泣きそうになっているようにも見える。
そんな様子に気づいた守は、慌ててフォローしようと試みた。
しかし何を言えばいいのかわからなかった。
ただ、このままではいけないと思った守は、自分の気持ちを正直に伝えることにした。
それはとてもシンプルな言葉だった……
だがその一言には様々な思いが込められていた……
そしてその言葉を聞いた瞬間、茜の表情は一変した。彼女の顔には笑みが溢れている。
彼女は嬉しそうに微笑むと、再び守の手を握った。そしてそのまま自分の胸に押し付けるような形で抱きしめたのだ……
(えっ?)
突然の行動に驚いた守だったが、すぐに冷静さを取り戻すことができた。
なぜなら、茜の行動があまりにも無邪気だったからである。彼女はただ単に自分の気持ちを素直に表現したかっただけなのだ。
(まったく……)
守は小さくため息をつくと、優しく微笑んだ。そして彼女の頭を撫でながら言うのだった……
茜は嬉しそうに微笑んでいる。そんな彼女を見ていると、守も自然と笑みがこぼれてきた。