無題余程赤色がお好きなんだな、と。
インナーカラーの青は光を透かし鮮やかに揺れ、その眼は弧を描いて瞳に反射するミフネを歪ませた。
「やはり、見てしまった私を殺しますか?ミフネ課長」
「ほおじゃのぅ」
「それも私の夢でしたから、嬉しいです」
静かに目を伏せる女の背後に周り、ミフネは刀を抜く。
「……ーー動くなよ」
刹那、風切り音が女の首を撫でる。束になった青が地面に落ちた。
「……殺してくれないんですか」
「髪は女の子の命じゃろ。じゃったら、べちゃんはこれで一回死んだ事になる」
「まだ、庶務課に居ても良いんですか。貴方を……慕っても?」
「もちろんじゃ」
涼しくなった首元に触れながら笑う女にミフネは僅かに目を細めながら手を伸ばし、耳に髪をかけてやる。
「次のインナーカラーは赤紫にせんか」
「わお、課長独占欲バリバリ!ミフネさんの為なら喜んでインナーどころか全身赤紫になりますよ」
「それは気味が悪いからやめてくれぇ」
並んで帰路につけた事は大変喜ばしく、またその際の道端に落ちた課長の影がとても可愛く、出来る事ならば持ち帰りたかった、と後に女は語った。
赤の好きな上司のために塗った赤いネイルで、赤紫のインナーカラーを払いながら。