まちちゃん「夢見」 「ねえそれまだあるってー。買わなくていいってば。」
「お前ストックって考え方はない訳??あった方が安心だろー。」
スーパーの調味料売り場で、ぶーっと不満気な顔をする私を無視して、彼は笑いながらマヨネーズをカゴの中に入れた。
「私の家のストック増やしてどうすんのよ、もー。」
カゴの中のマヨネーズを持って、棚に戻す。
――――
パチリと目を開いた。
自分の部屋の天井が見えて、あぁさっきのは夢だったんだ、と理解する。
夢の中でまで、軽くとは言え喧嘩するなんて。でももう彼に合わせてマヨネーズをストックすることもないし、彼のいたずらっぽい笑顔を見られることもない。
別れて半年、酒を飲む度に泣くから、最初は慰めてくれていた友人たちも、またはじまった、と呆れるようになっていた。元に戻れるよ、が、諦めも大事かもね、と言われ始めたのはいつからだろう。季節の移ろいと共に変わった慰めの言葉に、二度と恋人へ戻ることはないのだと思い知らされる。
今朝もまた、彼はもう私を好きではないんだと、自覚して、掛け布団ごと自分を抱きしめる。好かれていないことが悲しいのではなくて、自分自身を哀れんでいるだけなのかもしれないと思うと、腕の力がゆるまった。
はぁーっとため息をついて思考を無理矢理遮ると、ようやく布団から起き上がった。
今日もまた、憂鬱な一日が始まる。