ぼうしさん「ひまの温泉旅行」ちゃぷん、と湯に足をつける。大して疲れてる訳でもないのに、お湯に触れた場所からどんどん解けるような気がした。肩まで浸かると、自然と「はーっ!!」と声が出る。
見上げると満点の夜空で、ちょっと眩しいくらいだった。陽が沈んだせいで、春なのに気温は涼しいよりも少し冷えていて、おかげでさっき洗った頭はもう冷たかった。まとめて頭の上でお団子にしたせいで、頭頂部は氷が乗っかってるみたい。天然温泉の湯は熱めで、頭との対比が気持ちいい。自然と笑顔になってしまって、1人だから顔にお湯をかけて誤魔化しながら、頭の羽根をぷるぷると振った。
「これだから露天風呂はやめられないやー。」
両手を組んで伸びをする。お風呂から上がったら、旅館でご飯を食べながら地酒が飲めることを思い出して、またにこにこしてしまった。顔にぱしゃんとお湯をかけてほっぺをぱしぱしと叩く。
「ふふふふ」
それでもまだ自然と笑ってしまう。まぁいっか、誰もいないしー。この天然温泉に満足した頃には、きっと頭からも湯気が出て、体の芯までほかほかだろうなぁ。そうなるまではまだ時間がかかりそう。足を伸ばして少しだけばちゃばちゃとバタ足をする。泳げるくらい広い湯船に、また、ほーっと息をつく。
「やっぱり、温泉ってさいこーう…。」