【WT】てんごくとじごく 諏訪には以前から気になっていたことがある。ただし内容が内容なだけにうまく質問できる気がしなくて、結局訊きそびれたまま月日だけがいつの間にか経っていた。そのチャンスが巡ってきたのは、本当に偶然。たまたま通りがかった自販機の前に影浦が立っていて、たまたま周囲に彼を刺激するようなひと気が全くなくて。そして最近出たコミカライズに触発されて原作を再読したことで、かつて抱いた疑問をたまたま思い出したばかりだったのだ。
何を買うか迷っているのか、自販機を眺めていた影浦がスッと視線を此方に寄越す。声をかけずとも気づく彼に今更驚くこともない。まだだいぶ離れた場所から諏訪は「よう」と片手を上げて挨拶をした。
影浦は一見不良のような少年だが、実家が客商売をやっているためかこれで意外と礼儀正しい。今も「ども」と軽く会釈を返してきた。
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