白い鷺は黒に染る「俺、番が出来たんだ」
そう言って笑った彼に、「おめでとう、良かったな」なんてありふれた言葉だけしか伝えられなかった当時の私を、今は殴ってやりたい。あの時、「あいつはやめておけ」そう言えたのならどんなに良かっただろうか。それでもきっとあの時の彼は「そんなことない、運命だ」と怒るのだろうか?
…と言っても、全ては過去で、既に終わった出来事で。なら、“捨てられた”のも、過去になるのだろうか?
「―勘右衛門」
そよそよと揺れる木々の葉を、ただぼぅっと見つめる彼に声をかけた。しかし、反応は無い。
「今日もいい天気だな。どうだ?たまには外に散歩でも行こうか?」
「……」
「散歩よりもそうだな、甘味もあるし本もあるが……」
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