移ろう熱を分かつ「そんな、謝らないでください、大丈夫ですから」
手入れ部屋の中から審神者の慌てたような、困ったような声が廊下まで聞こえた。
五月雨江はその手入れ部屋の前で足を止めた。先程まで出陣していた部隊の誰かが中にいると思ったからだ。自分は手入れの必要は無く済んだが、数振りが待機していた刀に支えられて手入れ部屋へ入っていったところまでは見ていた。その中に主を困らせるような刀はいただろうか、といささか気になった。
「失礼します。頭、どうかなさいましたか」
部屋の外まで聞こえた声からそのまま困った様子の審神者と、その前には畳に額をめり込ませる勢いで、見慣れた桃色の頭が下げられている。
「雲さん?」
「ほっ、ほら! 五月雨さんが来ましたよ、だから頭を上げてください、ね?」
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