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    猫耳の生えたショタにゃーぐる君と少年ジェオの冒頭です。にゃーぐる君であってイーグルくんとは無関係です(?)…。残りは手直しした後アップします。

    雨ざらしのにゃーぐる 学校の帰り道、濡れた舗道を急ぎ足で歩いていたジェオは、ふと視界の端に違和感を覚えて立ち止まった。道端に、今朝はなかったはずの箱がぽつんと置かれているのが目に入ったのだ。何気なく通り過ぎようとした足が、自然とその箱へと向かっていた。
     それは茶色の段ボール箱で、ひと目で長く雨に晒されていたことがわかるほどにくたびれ、あちこちが湿気でふやけ、角は崩れかけていた。小さな子どもなら、ぎりぎり中に入れるほどの大きさで、側面にはかつて鮮やかだったであろう果物の絵が印刷されていたが、今では毒性を含む雨に色を奪われ、どれが何の果物だったかすら判別できないほどに滲んでいた。
     ジェオは、引き寄せられるような感覚を抱えて箱へと歩み寄った。ただの廃棄物とは思えない、何かが「いる」という気配が、その場の空気をわずかに震わせていた。
    「これは……」
     小さくつぶやいた声は、自分でも気づかないうちに出ていた。箱の中に、誰か、あるいは何かが潜んでいる。そんな直感がジェオの胸に冷たく根を下ろした。
     蓋はしっかりと閉じられていたが、中からかすかな動きのようなものが感じられた。ジェオはためらいながらも、自分のマントの裾を手にとり、雨水を通さないよう布越しにそっと箱の蓋を押し上げた。濡れた段ボールが軋む音とともに、湿り気を帯びた重たい空気が流れ出す。箱の中には、驚くほど色素の薄い茶色の髪を持ち、白い布にくるまれて小さく震える子どもの姿があった。まるで世界のどこにも居場所がなく、ひっそりと息を潜めて隠れていたかのように、その子は静かに丸まり、ジェオを見上げることもなく、布に身を寄せていた。
    「おい、大丈夫か!」
     思わず声が上がった。ジェオはしゃがみ込み、箱の中の子どもに顔を近づけた。その子の頭には、髪と同じ淡い色をした猫のような耳がぴょこんと生えており、布の裾からは同じ色合いの細い尻尾が伸びていた。どちらも小刻みに震えていて、冷気と恐怖にさらされていることが一目でわかった。
    「生きてる……よな。まずい、このままだと、凍えきっちまう」
     ジェオは焦りながらも、冷静さを失わないよう深く息を吸った。子どもの体にかけられていた白いマントは、かろうじて濡れずに済んでいるようだったが、それも時間の問題だった。この毒混じりの雨に、もう少し晒されていたら、命の火は簡単に消えてしまう。
     迷う暇はなかった。家族にどんな顔をされるか、どんな言い訳をすればいいか、そんなことを考える前に、ジェオの腕は自然とその小さな体を抱き上げていた。驚くほど軽い。その手応えは、まるで中身が抜け落ちてしまった人形のようで、思わず「ちゃんと食べてるのか」と心の中で問いかけた。
     彼は丁寧に、震える体をマントで包み直しながら、体温が伝わるように自分の胸に引き寄せた。こんなにも冷たくなっているのに、まだ生きている。その事実だけが、小さな希望のように感じられた。
    「……みゃ……」
     どこかで小さな生き物が鳴いたような、そんなかすかな声が聞こえた。しかしその音は、雨の音に紛れ、ジェオの耳にさえはっきりと届くことはなかった。

     メトロ家は、決して貧しい家ではなかった。だが同時に、特別に名の通った一族というわけでもない。権威や地位を求めて競い合う上層の貴族たちとは一線を画していたが、かといって庶民とは比べ物にならないだけの立派な屋敷と、それなりの数の使用人たちを抱えていた。世間から見れば、「中流」と呼ぶにはあまりに恵まれすぎていたが、「上流」と呼ぶには物足りない、そんな微妙な位置にある家だった。
     玄関をくぐったジェオは、雨に濡れないよう、子どもをしっかりと抱えたまま、扉を開けた従者に向かって声を張った。
    「人が捨てられてたんだ。すぐに温かいスープを作ってくれ。それからタオルと、毛布も頼む」
     突拍子もない言葉に、年配の従者は一瞬まばたきをし、それからやや困惑した声で返す。
    「坊っちゃん、迷い人なら、警察へ届けるべきでは?」
     ごく当然の提案だったが、ジェオは首を振り、腕の中の子どもを少し抱き直しながら、真剣な声で言い返した。
    「こいつ、人として登録されてねえ。降雨シールドが発動しなかったんだ」
     その言葉に、従者の顔色がわずかに変わった。降雨シールド、それはこの国に生きる人々にとって最低限の保護機能のひとつであり、正式に登録された国民であれば誰にでも付与されるべきものだった。だが、この子には、それがなかった。
    「それは……」
     従者は言葉を濁す。そこから先は、誰もが考えたくない方向へ話が進んでいくと知っていたからだ。
     ただの迷い人ではない、もっと厄介な存在。それは、社会の隙間からこぼれ落ち、何の保障も保護もなくこの世に生まれてきた者――つまり、産み捨てられた私生児という可能性だった。しかも、よく見ればその子には、猫のような耳と尻尾がある。普通の人間ではない。獣の特徴をもつ、いわゆる“混血”の子供。
     この組み合わせが意味するものは、あまりにもはっきりしている。道徳的にも社会的にも、最悪のパターンが頭をよぎった。関わるだけで面倒を背負い込む、それでもジェオは、目の前のこの小さな命を見捨てることができなかった。
    「お前たちが今、何を考えてるかくらい、俺にも分かる。でもな、生き物は生き物だ。どんな姿でも、俺たちと同じ命を持ってる。それを見捨てるなんて、俺にはできねえ」
     ジェオの言葉には、迷いの色はなかった。はっきりとした声でそう言い切ると、周囲にいた使用人たちは一瞬だけ顔を見合わせ、そして何も言わずにうなずいた。主の性分をよく知っている彼らにとって、それはもはや驚くべきことではなく、ただ受け入れるべき命令だった。
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