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    推しの顔だけ描いていたい〜

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    ブラ晶♀
    いい兄貴!いい兄貴!!を目指しました😄
    食ってばかりだなー、って内容です🍗

    #まほやく_SS
    mahoyaku_ss
    #まほやく男女CP
    Mahoyaku BG CP
    #ブラ晶

    ボスとメイドとカツカレー日増しに暖かくなり、早春の息吹が感じられる此の頃。
    「――私、真木晶は、今日一日ブラッドリー様の専属メイドになりました」
    「賢者さん」
     悲痛を帯びた叫びがネロの腹から発せられ、談話室に響いた。

     それは、小腹がすいたから食い物寄こせとブラッドリーに呼ばれたネロが、スイートポテトの余り材料で作った即席の芋クリーム乗せパンケーキを片手に、しぶしぶ談話室に入ったのだった。
     いつもどおりのブラッドリーがおり、ふと視線をずらすと見慣れない姿の女が目に飛び込んできた。
     髪を一つにまとめて、カナリアが着ている使用人の衣装に似た(それよりも上等な仕立ての)メイドがいる。化粧をしているのか心当たりのある人物と雰囲気が少し変わっていて、ネロは一瞬確信が持てなかったが。
    「え……っと。賢者さん、だよな?」
    「……」
     メイドがこくん、と頷く。
    「東の飯屋に自己紹介してやれよ、今日のお前が何者かを」
     ニヤリと口角をつり上げたブラッドリーが、メイドに指図した。そして冒頭の晶の言葉である。

     ダンッ!とスイーツの皿を叩き付けるようにブラッドリーの前に置いたネロは、額に青筋を立てて咬みついた。
    「おい、ブラッド! どーいうことだよ」
     ソファーに深く座り足を組んでいる男を、剣を帯びた黄金色の双眸がぎろりと睨めつける。
    「そうおっかねえ顔すんなって」
     ネロの剣幕にじりっとたじろいだブラッドリーだが、多少崩れたパンケーキにナイフをざくざくと入れ、たっぷり蜂蜜をからめた大きな一切れを豪快に口の中へ突っ込んだ。
    「……んーうめぇ!
    どうもこうもねえよ。勝ったほうは負けたやつを1日好きに従えるってゲームをして、こいつは俺に負けた。だから今日は俺の言いなりさ。
     なあ賢者?」
    「はい」
     もぐもぐと咀嚼しながら喋るブラッドリーの後ろに控えるように立つ、シックなメイド姿の賢者――晶は静かに返事をした。
     ネロはその様子に頭を抱えた。
    「賢者さん……、なんでそんな賭けしちまったんだ?」
     問われた晶は口を開きかけて――すぐさま噤んだ。そして横でふんぞり返っている男に視線を移し、
    「……ブラッドリー様、話しても?」
     と尋ねて。
    「おう、こいつなら構わねえぜ」
     そのやり取りを見たネロの眉間がさらに寄った。
    「明日、ヴィンセント殿下の視察団が西の国へ向かう話がありまして。
     道中の護衛と魔法についての意見出しもふくめて、各国からの魔法使いの同行を命じられてるんです。それで北の国からはブラッドリー様にお願いしたんですが、断られてしまって」
    「あー、他の国は先生役が行くんだっけ。うちの先生もいないからって、宿題どっさり用意してたな……」
     ネロはファウストのことを思い出したらしく、何かを諦めた様子で苦笑いした。
    「はい。若い者たちで留守はさせられないから、スノウとホワイトが魔法舎に残ることになってて。オズがいるとはいえ、ミスラやオーエンは途中で離脱する懸念があるから……」
    「困り果てたこいつは、再三にわたり頼み込んできてな。ゲームに勝てたら従ってやるって言ったら、乗ってきたわけだ」
    「おいおい……」
     楽しそうに話すブラッドリーとは対照的に、ネロは憐みの表情で晶を見やる。口に出さなくても、無謀だったと晶の顔が言っている。
    「んで負けがかさんでも、『できるだけのことはするからどうしても』って引かなくてよ。優しい俺様は、敗者復活のチャンスをあげたのさ」
    「敗者復活……まさか賢者さんから?」
    「誠意を見せてみろと。そうしたら引き受けると言ってもらえたので、いくつか提案した中でブラッドリー様が選んだのが…コレです」
    「なかなかおもしれえ趣向だろ?」
     ネロは深いため息を吐き、目頭を押さえた。
    「賢者さんの立場も考えてやれよな」
     ブラッドリーが勝負を持ち掛ける時にする愉快そうな顔を思い浮かべると……簡単に口車に乗せられたであろう賢者に同情の念を禁じ得なかった。
    「……なあ、興味本位で聞いてもいいかな? メイドの他にあんたが提案したのって、どんなのがあったんだ?」
     真面目な彼女がどんな献身をするつもりだったのか、ネロの気になるところだった。
    「盗賊団の一日舎弟体験レッスンと――」
    「賢者さんが舎弟……」
    「中央のバーでの接待と――」
    「破産不可避、な……」
    「5ヶ国のフライドチキンの味比べツアーして、気に入ったのをネロと再現する」
    「さりげなく俺巻き込んでねえ?」
    「この俺の機嫌をとりたけりゃ、美味い肉はかかせねえからな。そうなったらてめえが必要だろ、料理人」
    「その胸焼けツアーに連れまわされるのは謹んで辞退します……」
     ネロは丁重におことわりした。だが、「そうなったら賢者の胃袋と調理の負担が増えることになってたな」とブラッドリーは獲物を追い詰めるように嗤う。
    「くっそ……逃げ場なしかよ……」
     忌々しそうにこぼした。
    「で、メイドなら西の仕立て屋がすぐ用意できるっつーから、手っ取り早くそれにした」
    「クロエ、心なしか張り切ってメイクもしてくれました」
    「まあ、賢者さんが普段とは違う格好に変身したいって言ったら喜びそうだよな。
     今のあんた、いいとこのお嬢さんって感じで結構似合ってると思うぞ」
     晶の頬がほんのり色づいた。
    「ありがとうございます、ネロ」
    「でもブラッドリー”様”ってのは……」
    「今は俺がご主人様だからな」
     ネロの瞳がひどく冷めきっているのを、ブラッドリーはまったく気にしていない。
    「そういやあ、なんでさっきはブラッドに話していいか聞いてたんだ?」
    「ブラッドリー様以外の男の人とは一斉喋るなって……」
    「なっ……なんだそりゃ いくらなんでも無茶苦茶だろブラッド!」
    「晶がそれでいいって了承したんだぜ? 今日のこいつは賢者じゃねえ。俺の使用人だ。周りのやつらにもそう言っといてくれ」
     ネロは不満げに舌打ちをすると、無茶な要求は突っぱねていいからな、と晶に助言した。
    「もしあんたに変なことしそうだったら、すぐ呼んでくれよ」
    「こんなお子様に変な気を起こすかよ」
     ブラッドリーがせせら笑って一蹴する。晶はきょとんとしたあと、少し思案して頷いた。
     ――とりあえずは妙なことにならなそうでよかった、とネロは密かに胸をなで下ろし、談話室から退席した。
    「いや、よくはねえけど……」
     廊下に出たネロは誰にも聞こえない独り言を呟き、晩飯は賢者さんの好物にしよう、と献立を練りながら厨房へ向かった。

    ♢♢♢

     綺麗にパンケーキを平らげたブラッドリーは高く昇った陽を見て、中央の繁華街へ晶を連れ出した。
    魔法舎を出る途中、朝から鍛錬をしていたらしいカインたち数人の魔法使いに会った。皆、当然のように賢者たる晶に声をかけるが、彼女はわたわたと顔を振ったりお辞儀をしたりと、声を発さずにブラッドリーに付き従っている様の晶の事情を何やら察したらしく、
    「あんたも大変だな……。ブラッドリー、あまり賢者様を困らせるなよ」
    「賢者様。手が欲しい時は自分もお手伝いしますから、あまり無理はしないでください」
    「なあ賢者、次に誰かの従者になるならヒースのところに来るといい。ヒースならそいつより待遇よくしてくれる。あの綺麗な顔がずっと見れるしな」
     カイン、レノックス、シノ――それぞれに心配され労わられ、一様にブラッドリーへは釘を刺していった。

    上等な生地のメイド服は宮廷か貴族階級の使用人に見えるのだろうか。ちらちらと二人に視線が集まり、あちこちの露店や客引きから声がかけられる。
    「そちらのご主人! 銘品珍品、いいもの取り揃えてありますよ。見てってくださいよ!」「おう、また今度な」「こっちも質のいいものあるから寄ってってよ、そこの色男!」「悪ぃな、先約があるから近いうちに寄らせてもらうぜ」、通る度にこんな感じである。
    上手にあしらうブラッドリーに感心しながら、晶は彼の背中を付いて行く。二つの店で香辛料やハーブ、毛糸を買い、ブラッドリーはそれらを晶に持ち運ばせた。
     賑わう大通りから細い路地に入り、奥まった所にある一軒家の前でブラッドリーは足を止めた。その家のドアベルを鳴らすと玄関扉が開き、身なりを整えた恰幅の良い白髪交じりの男性が現れた。
    「ブラッドリーさん、そろそろ来る頃かと思ってお待ちしておりましたよ」
    「よう。足りねえ分を持ってきたから作ってくれ」
    「ええ、喜んで」
     ブラッドリーは遠慮するそぶりもなく入っていく。晶は状況が分からないまま、おずおずと後に続いた。
    玄関の先の部屋に入ると、いくつかのテーブルとカウンターが置かれた、こじんまりとした喫茶店のような内装だった。慣れたようにカウンターチェアに座るブラッドリー。家の中に迎え入れた男性は先ほど買った荷を晶から受け取り、奥の部屋へと消えていった。
     自分のとなりのチェアを引き「ここに座れ」と本日の主に言われ、晶は並んで座った。
    「ブラッドリー様、ここは喫茶店ですか?」
    「ああ。通りから離れた普通の民家だろ。看板もねえし、知る人ぞ知る穴場スポットってやつさ」
    「よく知ってましたね。私だったら気付かないですよ、こういうの」
     誰かしらの口コミでなければ知ることのない店はある。西の国にあるシャイロックのバーも、その知る人ぞ知るという穴場なのだ。
    ただ、ブラッドリーもこういう庶民的な喫茶店を使うのはちょっと意外だなと、晶は思っていた。
    「俺様の顔の広さを舐めるなよ。人脈づくりも情報網を張るのに必須だからな」
    「勉強になります、ボス!」
    「お前、使用人より舎弟の方が見込みあるんじゃねえか? 今からでも舎弟に変えてもいいけどよ」
    「使用人で大丈夫です」
    「ま、賢者を盗賊団の舎弟にしたら、あいつがまた怒りそうだしな」
     街の一角の落ち着いた店内で、使用人姿の娘がワイルドな風貌の男と他愛のない雑談を交わしている。それが異世界から来た賢者と、かつて世間を恐れさせた北の盗賊団の頭などとは、誰も思わないだろう。平和で平凡な日常を送っている男女としか見えない。
    「お待たせしました」
     さきほどの男性がドリンクを持ってカウンターに現れた。コーヒーをブラッドリーの前に置き、晶の前には赤いジュースの注がれたグラスを置いた。
    「これは?」
    「果実水です。ミックスベリーを入れてみました」
    ブラッドリーはコーヒーカップを手に取り、一口こくりと飲んだ。晶もグラスに刺したストローに口をつける。
    「……美味しい! 甘酸っぱくてすごく飲みやすいです!」
     晶の表情がぱああっと明るくなって、ブラッドリーはふっと笑った。
    「それはよかったです。ブラッドリー様がそのうち連れてくると仰って、お会いするのを楽しみにしておりました、賢者様」
    「そうなんですか、ブラッドリー?」
    「まあな。たまたま今日は俺とお前の都合が付いたから、ちょうどいいと思ったんだよ。このマスターは前の賢者と交流があったのさ」
    「前の賢者様は時々お越しになって、よくこのカレーライスを召し上がっていかれました。パフェもお好きでしたね」
     そう言ってマスターと呼ばれた男性は、晶の目の前にカレーライスを置いた。ホカホカの白米、ルーには大ぶりの具材がごろごろと入っている。そしてその上には揚げ衣の肉がカットされて乗っていた。
    「わあ、カツカレーだ!」
    「はい。うちにはコートレットという肉料理があるのですが、前の賢者さまはカツレツと呼んでいましたね。ある時、豚肉を厚切りにして、パンくずの衣で揚げてくれと言うので、試してみたらこれが美味しくて。
    賢者様がカレーライスに乗せて食べていたのを、そのまま裏メニューとして使わせて頂きました」
    「まさかカツカレーが出てくるなんて思いもしませんでした。私の世界の定番料理でしたから。
    ネロに作ってもらっても良さそうですね」
    「申し訳ありませんが、それはご勘弁頂きたく。賢者様がうちに食べに来てくれなくなるでしょう?」
    「ああ……それは……そうかもしれません」
     同じカツカレーをぱくぱくと口に運んでいたブラッドリーも頷く。
    「このメニューを知ってるやつは少ない。俺もマスターも口止めしてるからだ。ネロがこれを作っちまったら、この店のウリが一つ減るだろ。前の賢者は、この店で食べるから良いんだって言ってやがったな」
    「なるほど。なんか分かります、それ」
     馴染みの店のメニューがいつでも自宅で食べられるのはいいけれど、特別感は薄れる。『このお店で食べるこの料理の味』が一つの愛着ある思い出になる。そういうものが、自分へのちょっと奮発したご褒美だったり、リフレッシュになるものだ。前の賢者も、きっとそういうものを必要としたんだろう。
    異世界で誰にも気を遣わず心安らぐ場所を見つけるのは、なかなかハードルが高い。
    「今お前は、ただの使用人の晶だからな」
     ブラッドリーが何気なく放った言葉に、晶はハッとした。
    「もしかして……私のために連れて来てくれたんですか?」
    「四六時中『みんなの賢者』でいるのはしんどいだろ。魔法舎じゃ意識してなくたってそれが普通になっちまうが。ネロもそういうのを気にするやつだからな。
     少しの間でも肩の荷をおろせる場所を見つけておくってのは、デキるやつの必要な逃げ場だ」
    賢者としてではなく、一人の庶民出の人間として、この秘密の喫茶店へブラッドリーは晶を連れてきた。
    「前の賢者はちょくちょくここに来てたようだぜ。俺はまた賢者を連れて来るなんて思わなかったがな」
    「そうなんですか?」
    「ああ、一度だけ付き合ってやったっきりだ」
     ブラッドリーのカレーを頬張る横顔を見ながら晶は思った。ブラッドリーにとっても前の賢者との思い出がある場所なのだ。
    「お前も、一人になりたいときここに来るといい。このマスターはサービスがいいんだ」
    「恐縮です」
     マスターはブラッドリーに頭を下げた。そして晶へ向き直り、
    「賢者様の世界は、料理がお得意なのですか?」
    「?」
    「ブラッドリー様は、前の賢者様に作ってもらった料理と同じものを賢者様が作ったとおっしゃっていましたので」
    ああ、なるほどと晶は思った。
    こちらの世界の食材や調味料にはだいぶ慣れたし、ネロの丁寧な指導のおかげで調理器具の使い方も覚えた。おかげで、簡単なものは日本で食べていたものを再現することができる。さすがに醤油は作れないので、醤油味が恋しい。
    「前の賢者様と偶然にも同郷なので、作るものも被ったり味覚が近いんだと思います。
    色んな国と交易してるので、食も発展してますね」
    「では、もし作ってほしいものがあればリクエストを。私も新しいメニューが増えるのは助かりますので」
     晶はカツカレーをじっと見つめ、
    「なら……早速、お願いしたいものがあります」
     と、マスターにあるものを注文した。

    「ご来店、ありがとうございました。またお越しください。事前にご予約頂ければ、カツカレーをご用意しておきます」
     ゆっくりと礼をするマスターに、晶もぺこりとお辞儀をした。
    「ごちそうさまでした。ぜひまた食べに来ます」
     大通りに戻り、いくつかの店をウインドウショッピングして夕方に魔法舎に戻った。
    結局メイドらしいことは軽い荷物持ちくらいしかしていない。ひとつ変わったのは、もう普段通りに「ブラッドリー」と呼んでいいと言われただけだった。

    ♢♢♢

    難しいことを要求されるでもなく、ブラッドリーに言われるまま、晶は彼の部屋に招かれた。
     上着をハンガーにかけて、指定された赤ワインをグラスに注ぐ。その間に部屋の主は店から持ち帰ったものの箱を開けて、もぐもぐとかじっていた。
    「へえ、これもいいな。ほら、てめえのリクエストしたもんだろ、食えよ」
    「はい」
     その箱に入っているものに、晶も手を伸ばして齧りつく。
    「――うん、やっぱり美味しいですね! ソースと千切り菜っ葉たっぷりのカツサンド」
    「気に入ったぜ。しばらく通うか」
     晶がリクエストしたのは、ぶ厚いとんかつをソースに絡ませシャキシャキの菜っ葉をパンに挟んだ、ボリューム満点のカツサンドだった。ピリッとくるマスタードやからしマヨネーズが無い代わりに、辛みのある香辛料をソースに混ぜ込んでくれた。
    王道のキャベツ入りはもちろん美味しいが、シンプルなま○泉のカツサンド風もいいな、次は菜っ葉なしも絶対頼もう、と晶は密かに決意した。
    「お願いして良かったです。
     ブラッドリー、ありがとうございました。いいお店を教えてくれて」
    「賢者じゃねえ日を満喫できたか?」
    「おかげさまで、気分転換になった気がします。やっぱりそのためにメイドを選んだんですか?」
    「別に深い意味があったわけじゃねえよ。
    それにまだ今日は終わってねえんだ。俺の世話は夜中まであるぜ?
    ただ、たまには一人で特製メシを楽しむのもいいもんだろ。もう場所は分かったな」
     ワインを飲みながらカツサンドを食べているブラッドリーは、よほどこれを気に入ってくれたようだ。もう二切れめを手に取っている。コ○ダ珈琲店のように大きなバンズのサンドイッチが、その引き締まった身体にするすると飲み込まれていく。
    (カレーは飲み物っていいそうだな、ブラッドリー)
     いい食いっぷりに見とれていた晶も、負けじと肉を飲み込む。甘くジューシーな肉汁が、味の濃いソースとほろ苦い菜っ葉に絡んで得も言われぬ旨さだ。
    「それなんですけど、あの店に行くときはブラッドリーも付き合ってくれませんか?」
    「なんだ、ひとりじゃ心細いのかよ?」
    「あの店を紹介してくれたのはあなたですよ。私は一度きりの思い出にしたくないんです。
     ただの一般人の真木晶が、ブラッドリーとあの店でカツカレーを食べる。未来の私が賢者の役目の大きさに歩けなくなったとき、きっと大事な支えになると思うから」
     何者でもない晶個人としての拠り所に、寄り添ってくれる者がいるなら。
    「――次はてめえの奢りだ、晶」
    「っ、はい! これも頼むのはどうでしょう。ツウな常連客っぽくないですか?」
    「このカツサンドってやつを手土産にするってか。いいねえ」
     一つ秘密を共有した二人は、夕飯にネロの用意した賢者の好物が並ぶ食卓を見て、夜食としてとっておいたカツサンドをネロにおすそ分けしたのだった。
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