酔っぱらい その日、半助が自室に戻ったのは晩になってからのことだった。
「たらいまもどりまひたぁ〜〜」
「おやおや、こりゃまた良い具合で」
忍術学園教員長屋の相部屋では先輩教師の山田伝蔵が、まだ帳面に何やら書きつけているところであった。夜の帷に油火の灯しが淡く円く山田の輪郭に陰影を与えている。障子の手前から思っていた通り、その影は半助を迎えて振り向いた。
とある集落からの依頼を受けた学園長の命により、半助は一人忍務に出ていた。その忍務先で聞き取りの一環から会合に参加するまではいいものの、たらふく飲まされた後は絵に描いた千鳥足で、今は床の上の青虫になっている。
「尻なんか突き出してないでちゃんと支度して寝たらどうですか、土井先生。報告書まだなんでしょ? それじゃあ生徒に示しがつきませんよ」
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